閑話休題

岩手日報論説より2題


コメづくりに活力を

中原祥皓(岩手日報)

 登熟がやや遅れぎみの地域もあり、平年並みとはいかないが、県内の水稲は内陸部を中心にまずまずの出来をみせているようである。台風17号の影響が心配されたが、目立った被害もなく、無事に乗り越えたことを喜びたい。
 東北農政局岩手統計情報事務所がまとめた九月十五日現在の県内水稲作柄概況によると、作況指数(平年値100)は県平均で九七の「やや不良」となり、前回八月十五日現在の九九の「平年並み」より二ポイント下回った。
 今年の県全体の作柄は、七月上旬の低温、日照不足、さらには八月下旬以降の低温などで一時生育が抑制されたが、ともかく九七でとどまることができた。「やや不良」とはいえ、粒が大きく、実入りはいいという。コメ作りの労苦にあらためて感謝したい。
 既に始まっている地域もあるが、県内はこれから稲刈りの最盛期に入る。県農政部は「適期の刈り取りが品質向上のかぎを握る」として、登熟状況に合わせた適期判断と作業の徹底を呼びかけている。今後の好天を願うとともに、岩手のコメの評価を高める品質の確保に期待したい。

より一層のPR望む


 自主流通米価格形成センターが二十日、東京取引所で八年産米自主流通米の第一回入札を行った。県産米は今年初めての入札だったが、ひとめぼれ、あきたこまち、ササニシキの三銘柄とも基準価格より二−三%下回る価格の落札だった。
 基準価格を上回ったのは、上場された全国三十八銘柄のうち新潟と福島のコシヒカリ五銘柄だけである。このことは品質はもちろん、“岩手米”のアピールになお一層の取り組み強化が必要なことを物語るものだろう。県産米のPRを狙って人気上昇中の県職員、こめ次郎、こめ之介の「お米ブラザーズ」には、御苦労ではあるが、これからも大いに頑張ってほしいと思う。
 四兆円といわれるコメビジネスが今年六月から大きく変わり、新食糧法施行によって、卸、小売りの自由度が増し、新規参入が容易になり、コメ業界は消費者の受けを狙ったブランド名を付け、コメの容器にも工夫を凝らすなどアイデアを絞った販売合戦を演じている。流通・販売が規制された食糧管理制度時代には考えられなかったことだ。今の消費者は少々高くても安全なコメ、おいしいコメを求めている。県産米もこうした動向に敏感にこたえていくことが、ますます大事になってくる。

 食料を守る論議期待

 日本の農業、農政は今、大きな転換期にある。外にあってはウルグアイ・ラウンド農業合意で国際化時代を迎え、内にあっては新食糧法の施行でコメをめぐる世界も変わった。
 制定後約三十五年を経過した農業基本法の見直し作業が、農水省の「農業基本法に関する研究会」で進められているが、農業、農村、農政の環境変化に合わせ、時代にマッチした新しい基本法ができて当然である。
 農業団体の全国農業協同組合中央会(全中)も時代の変化を踏まえ、新しい基本法の制定を求めている。今月五日に仙台市で開かれた北海道・東北農業対策協議会主催の「みちのく・北の国から大地のメッセージ」フォーラムin仙台でも、食料、農業、農村地域に関する新たな基本法の制定について論議、「共生」を理念に掲げたアピールを決議した。
 全中は「共生」について、農業生産者と消費者、農村と都市、農業と他の産業、農村地域社会におけるさまざまな住民、大規模な農業者と兼業・自給などの多様な農業者が共に生きていく社会をめざすという意味を込めているという。農業団体がこうした理念を提唱しているのも、国民全体で食料、農業、農村を考えようという意思表示であろう。
 食料の安定供給は国民の願いである。活力あるコメづくりのためにも、生産者と共に消費者県民も食料・農業を守り発展させる論議を深めていきたい。

(1996年9月26日論説)

 
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