図説:東北の稲作と冷害
冷害危険度地帯区分とその特徴

1972年から1994年までの23年間の市町村別収量に基づいて、冷害危険度地帯区分を作成した(図1)。また、表1に冷害危険度地帯別安全作期、図2に地域的な複合形態を示した。各地帯はこれらを基づくと次のような特徴をもつ。
地帯1:太平洋側の岩手県南、宮城県中南部、福島県浜通り・中通りに主として分布する。平均収量は450kg、変動係数16.6%。田植え可能日は5月上旬、出穂の好適日は8月22日、晩限日は8月26日、安全成熟晩限日は10月6日。この地帯は多様な複合形態をもつのが特徴である。
地帯2:日本海側の青森県津軽地域と太平洋側の岩手県盛岡市周辺に分布する。平均収量は580kg、変動係数14.6%。田植え可能日は5月中旬、出穂の好適日は8月18日、晩限日は8月22日、安全成熟晩限日は10月3日。この地帯は稲作準主体であり、果樹との複合が多い。
地帯3:日本海側に主として分布する。平均収量は545kg、変動係数6.8%。日本海側に分布する地帯5よりは収量は約50kg低い。田植え可能日は5月上旬、出穂の好適日は8月21日、晩限日は8月25日、安全成熟晩限日は10月5日。この地帯は稲作主体と準主体が約80%を占める。
地帯4:青森県の太平洋側、岩手県の北上川上流部に主として分布する。平均収量は488kg、変動係数28.1%。田植え可能日は5月中旬〜下旬、出穂の好適日は8月15日、晩限日は8月18日、安全成熟晩限日は9月29日。この地帯は野菜や果樹との複合が多い。
地帯5:日本海側の秋田県横手盆地、山形県庄内と内陸部、福島県会津盆地周辺に主として分布する。平均収量は596kg、変動係数4.8%で、東北で最も安定多収な地帯である。田植え可能日は5月上旬、出穂の好適日は8月22日、晩限日は8月25日、安全成熟晩限日は10月5日。この地帯は稲作主体と準主体が約80%を占める。
地帯6:青森県北端、岩手県北部・沿岸部、宮城県と福島県の山間部に主として分布する。平均収量は383kg、変動係数29.6%、冷害の危険性が高い地帯である。田植え可能日は5月下旬、出穂の好適日は8月13日、晩限日は8月16日、安全成熟晩限日は9月27日。この地帯は牛飼養、果樹、野菜との複合が多い。
地帯7:太平洋側の岩手県南部、宮城県北部、福島県郡山周辺に主として分布する。平均収量は495kg、変動係数15.2%で、太平洋側では多収地帯である。田植え可能日は5月中旬、出穂の好適日は8月21日、晩限日は8月24日、安全成熟晩限日は10月5日。この地帯は稲作主体と準主体の割合が高い。
地帯8:青森県太平洋側と岩手県沿岸北部の冷害多発地帯に分布する。平均収量は394kg、変動係数38.1%。田植え可能日は5月下旬、出穂の好適日は8月17日、晩限日は8月21日、安全成熟晩限日は10月3日。この地帯は牛飼養、野菜、その他(漁業等)との複合が多い。
表1 冷害危険度地帯別安全作期
| 危険度地帯区分 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
| 田植え可能日 | 稚苗 | 5月6日 | 5月10日 5月17日 | 5月8日 | 5月10日 5月18日 | 5月6日 | 5月19日 | 5月7日 | 5月27日 |
| 中苗 | 5月9日 | 5月20日 | 5月12日 | 5月20日 | 5月10日 | 5月28日 | 5月10日 5月18日 | 6月4日 |
| 出穂 | 早限日 | 8月2日 | 8月5日 | 8月1日 | 8月11日 | 7月29日 | *** | 8月3日 | *** |
| 好適日 | 8月22日 | 8月18日 | 8月21日 | 8月15日 | 8月22日 | 8月13日 | 8月21日 | 8月17日 |
| 晩限日 | 8月26日 | 8月22日 | 8月25日 | 8月18日 | 8月25日 | 8月16日 | 8月24日 | 8月21日 |
| 安全成熟晩限日 | 10月6日 | 10月3日 | 10月5日 | 9月29日 | 10月5日 | 9月27日 | 10月5日 | 10月3日 |
| 積算平均気温 | 早限日 | 1,620 | 1,490 | 1,605 | 1,575 | 1,600 | - | 1,630 | - |
| 好適日 | 2,090 | 1,795 | 2,090 | 1,670 | 2,190 | 1,555 | 2,050 | 1,450 |
| 晩限日 | 2,185 | 1,890 | 2,185 | 1,740 | 2,260 | 1,625 | 2,120 | 1,535 |
| 積算日照時間 | 早限日 | 185 | 216 | 233 | 180 | 241 | - | 184 | - |
| 好適日 | 159 | 201 | 186 | 183 | 183 | 172 | 160 | 180 |
| 晩限日 | 153 | 192 | 176 | 179 | 174 | 169 | 158 | 177 |
注)・策定手法は内島立郎(1983)北海道、東北地方における水稲の安全作季に関する農業気象学的研究。農業技術研究所研究報告 A31,23-113.に準拠。
・積算平均気温は稚苗田植え可能日の翌日から出穂の早限日、好適日、晩限日までの積算値。
・積算日照時間は早限日、好適日、晩限日から安全成熟晩限期までの積算値。