確率予報の利用法

水稲と気象


    紹介にあたり
  1. はじめに<PDF版>
  2. 水稲と気象・<PDF版>
  3. 冷害危険度を考慮した1か月予報の利用法<PDF版>
  4. 3か月平均気温の確率予報を用いた作付品種の栽培管理への利用法<PDF版>
  5. まとめと課題<PDF版>
2 水稲と気象
2.1 水稲の収穫量と気象の関係
 宮城県における農作物の作況と気象の影響について調査した竹谷(1999)によると、水稲の収穫量に及ぼす要因は数多くあるが、温量指数が高ければ収穫量が増えるというように、気温と水稲の収穫量の間には高い正の相関関係が見られる(図3-1)。
水稲の収穫量と温量指数の関係
図3-1 水稲の収穫量と温量指数の関係(竹谷,1999による)
 縦軸は宮城県における10a当たりの水稲の収穫量、横軸は仙台の温量指数、●印右横の数字は西暦年下2桁で、散布図のデータは1951年以降のものである。図中に、回帰直線及び回帰式、相関係数(R)を示す。
 

 また、宮城県における水稲の作況指数と仙台の半旬別の気象要素(気温、降水量、日照時間)から水稲の生育ステージにおける気象の影響度を見てみると(図3-2)、気温と水稲の作況との関係は、幼穂形成期の一時期に正の相関関係が見られる。その後、減数分裂期から出穂・開花期にかけてと登熟開始期までは有意な正の相関関係が見られ、特に、減数分裂期から出穂・開花期の気温の影響度が大きい。また、登熟から成熟期にかけては気温との相関関係が見られなくなることが特徴的である。
水稲の生育ステージにおける気象要素と作況指数の相関係数
図3-2 水稲の生育ステージにおける気象要素と作況指数の相関係数(竹谷,1999による)
 縦軸は宮城県の作況指数と仙台の半旬別気象要素との相関係数、横軸は半旬番号。矢印は水稲の生育ステージのおおよその期間を、横線は5%の危険率で有意な相関係数(r=±0.285)を示す。
 
 降水量との関係は、出穂・開花前や登熟期に一時期、負の相関関係が見られる他は有意な相関関係は認められない。
 日照時間との関係は、分けつ期に一時期有意な正の相関関係があり、減数分裂期から登熟期にかけては大半の時期に正の相関関係が見られる。
 特に、水稲にとっては気温との相関が高く、幼穂形成期、減数分裂期、出穂・開花期の3時期に低温に遭遇すると、各時期で障害の発生機構は異なるが、不稔が多発し冷害を引き起こす。幼穂形成期と減数分裂期の低温は深水管理によって水温を高く維持して、不稔発生をある程度防ぐことができるが、開花期の低温については今のところ防ぐ技術を持っていない。
 これらの冷害危険期は、東北地方では7月中旬から8月中旬までの約1か月間である。冷害危険期の適切な気象情報を提供することにより、適切な低温対策を講じれば、冷害を軽減・回避することが期待できる。

2.2 冷害危険度地帯区分
 東北地方は本州の東北部に位置し、南北に細長くのびており、その長さは約510km、東西の幅は約210kmで、中央には奥羽脊梁山脈、東側は北上・阿武隈の両高地、西側は出羽山地、越後山脈が南北に走る。なお、西は鳥海火山帯、中央は那須火山帯が走って、これに属する火山が多くそびえる。また、東北地方の東は親潮寒流と黒潮暖流が相接する太平洋に直に望み、西は対馬暖流の北上する日本海に対している。これらの山系が障壁となることや海流の影響で、東北地方は地域により気候が大きく異なる。
 図3-3は、東北農業試験場により1972年から1994年までの23年間の水稲の市町村別収穫量に基づいて作成された冷害危険度地帯区分で、各地帯は以下のような特徴をもつ。ただし、各地帯における平均収量及び変動係数は1972年から1998年までの27年間の値を用いて再計算した。ここで、平均収量は10a当たりの収穫量、変動係数は収穫量の標準偏差を平均収量で割って100を掛けたもので、収穫量の変動の程度を相対的に比較するものである。また、稲作主体とは祖生産額が農業所得の60%以上、稲作準主体は同40〜60%をいう(1990年の生産農業所得統計より)。

地帯1:太平洋側の岩手県南、宮城県中南部、福島県浜通り・中通りに主として分布する。平均収量は453kg、変動係数16.3%。この地帯は多様な複合形態をもつのが特徴である。
地帯2:日本海側の青森県津軽地域と太平洋側の岩手県盛岡市周辺に分布する。平均収量は588kg、変動係数13.4%。この地帯は稲作準主体であり、果樹との複合が多い。
地帯3:日本海側に主として分布する。平均収量は542kg、変動係数7.6%。日本海側に分布する地帯5よりは収量は約50kg低い。この地帯は稲作主体と準主体が約80%を占める。
地帯4:青森県の太平洋側、岩手県の北上川上流部に主として分布する。平均収量は494kg、変動係数26.8%。この地帯は野菜や果樹との複合が多い。
地帯5:日本海側の秋田県横手盆地、山形県庄内と内陸部、福島県会津盆地周辺に主として分布する。平均収量は594kg、変動係数5.7%で、東北で最も安定多収な地帯である。この地帯は稲作主体と準主体が約80%を占める。
地帯6:青森県北端、岩手県北部・沿岸部、宮城県と福島県の山間部に主として分布する。平均収量は377kg、変動係数30.0%、冷害の常襲地帯の一つである。この地帯は牛飼養、果樹、野菜との複合が多い。
地帯7:太平洋側の岩手県南部、宮城県北部、福島県郡山周辺に主として分布する。平均収量は500kg、変動係数14.6%で、太平洋側では多収地帯である。この地帯は稲作主体と準主体の割合が高い。
地帯8:青森県太平洋側と岩手県沿岸北部の冷害常襲地帯に分布する。平均収量は398kg、変動係数35.4%。この地帯は牛飼養、野菜、その他(漁業等)との複合が多い。
水稲の平均収量と変動係数からみた冷害危険度地帯区分
図3-3 水稲の平均収量と変動係数からみた冷害危険度地帯区分(東北農業試験場による)
図中の数字は、冷害危険度地帯区分の地帯番号を示す。
 

 
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