図説:東北の稲作と冷害
登熟に及ぼす温度の影響
登熟に対する温度の影響は、光合成と呼吸だけを通して起こるのではなく、光合成によってつくられた糖質や根から吸収された無機養分の転流も関係することを概説する。
登熟に及ぼす温度の影響
登熟の進行が温度に強く影響されることは古くから知られていました。低温による登熟遅延や高温による登熟促進をそれぞれ経験していると思います。図1は登熟期間の平均気温と千粒重の関係を日本品種と外国(熱帯)品種で比較したものです。日本品種では千粒重は低温域ではほとんど変化しませんが、高温(おおよそ23度以上)域になると急激に減少します。一方、熱帯で作付けされる品種では絶対量は異なりますが、千粒重は低温域になると大きく減少し、高温域では日本品種に比べて減少し始める温度限界が高く、またその減少程度も小さいことが分かります。このように品種間差はあり、高温で登熟すると玄米の粒が小さくなることが知られています。
また、水稲の登熟期間においては昼夜温の較差が大きいほど、登熟が良く最終的な収量が多いということが生産現場でよく言われます。これも上のことと関係します。登熟期間中の光合成にとっては25〜30度程度の高温が適しているのですが、このような高温域では夜間の呼吸による消耗が大きくなります。したがって、夜間は玄米への物質の転流を阻害しない程度の低い温度の方が呼吸ロスが少なくて、炭水化物の蓄積効率が高まるといえます。
高温登熟に関係する問題構造を大まかに描くと図2のようになります。このように登熟期には根の活力を維持し、必要な窒素を吸収して下位の葉や上位の葉の光合成活性を高く維持し、同化された炭水化物を玄米の生長に効率よく振り向けることが登熟を良好にするポイントといえます。
登熟に対する温度の影響は、光合成と呼吸だけを通して起こるのではなく、光合成によってつくられた糖質や根から吸収された無機養分の転流も関係します。同様に登熟期間の日照不足も当然ながら影響を及ぼします。
さらに重要なことは、上の図で良好な登熟をもたらす稲体は出穂までの生育経過によって獲得されるものであり、さらに登熟期間中の水管理などで稲体を健全に保つことが重要となります。
参考文献
・松尾孝嶺ら編集(1990) 稲学大成第2巻生理編。農文協。
reigai@ml.affrc.go.jp