図説:東北の稲作と冷害
最低気温(夜温)と登熟の関係
登熟期における最低気温の高低が玄米の生長に及ぼす諸現象を概説する。
最低気温(夜温)と登熟の関係
ポットに栽培した水稲を出穂前10日〜出穂後28日までの間、7日毎また出穂後28日間に夜間20度と30度の温度設定したところに持ち込んで、昼間は屋外で生育させた実験から観察された事実を紹介します。
1.成熟速度
夜温の高低は玄米の発育に次のような顕著な影響を及ぼします。登熟初期の高夜温では発育速度が非常に早くなり、低夜温では遅くなります。前者の場合には、登熟後期の玄米の肥大が緩慢となり、成熟期の千粒重はむしろ小さく、玄米の厚さが小さく後期の充実不良を示します。後者の場合は初期の登熟速度は抑えられますが、その後比較的長期にわたって玄米の肥大が続き、最終的には登熟初期高夜温であったものよりも千粒重は大きくなり、後期の登熟が良好であることを示します。
玄米の成熟過程を示す澱粉組織の透明化、果皮の葉緑素の分解なども同様に影響されます。夜温の高い場合には、透明化の時期も葉緑素の分解する時期も早く、短期間で成熟に達します。このような温度による成熟速度の促進や遅延は穂のみを処理した実験でも同じであるため、種子の酵素活性などに影響されているものと考えられています。
2.玄米の品質(上図参照)
死米・半死米:出穂後10日頃を中心とする時期に夜温の高い場合に発生が著しく多くなります。これは高夜温による炭水化物の消耗の他に、玄米の急激な成熟に伴う強い養分要求があるため、需給の不均衡が起こり、弱勢穎花への養分不足が生じ、その発育を停止させて死米となると考えられています。半死米も同様な需給の不均衡と穂への養分集積の早期衰退または停止が関係すると言われています。
乳白米:出穂後5〜15日頃の高低とともに夜温の変化が大きい場合に弱勢穎花に発生が多くなります。すなわち、穂の養分要求の最も旺盛な時期に高温または低温のため養分需給の不均衡が生じ、弱勢穎花への養分集積が一時的に抑制されて乳白米となると考えられています。障害の程度が大きい場合に回復することなく死米となることもあります。登熟初期に発生する乳白米には、心白状乳白米が多い特徴がみられ、これは酒造好適米の横断面でみられる線上の不透明部をもついわゆる心白粒とは異なり、不透明部は紡錘状をなしており、やや腹側によってできるという特徴があります。
このように、夜間の高温は登熟を急速にし、特に開花後5〜15日頃には粒内における養分需給の不均衡をおこして死米、乳白米、半死米の発生を助長します。さらには成熟後期における玄米の外層の充実を不良にします。一方、夜間の低温では成熟は遅れますが、成熟は後期まで順調に行われ、死米、乳白米、半死米の発生は少なくなります。
参考文献
・長戸一雄・江幡守衛(1960):登熟期の気温が水稲の稔実に及ぼす影響。日作紀28:275-277.
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