図説:東北の稲作と冷害
登熟期の高温と背白米・基白米の発生
出穂後の30日間を対象にして、その期間を10日間ずつと全期30日間の温度を23度と30度に処理した収穫時玄米の観察から得られた事実。特に高温登熟を特徴づける背白米と基白米について概説する。
登熟期の高温と背白米・基白米の発生
1.背白米
背白米は、玄米の背側維管束に沿った数層の澱粉細胞が澱粉の蓄積不良のため、白色不透明で止まり外観上玄米の背側稜線に沿って白色の筋があるものをいいます(上図参照)。著しい場合は白色部が玄米の基部から頂部に達し、かつ白色筋部分の幅が広く、軽微な場合は白色の筋は細く玄米の下部にとどまり、頂部にまで達しません。この背白米は全期間高温処理した場合に最も発生が多く、出穂後10日間とその後10日間に高温処理した場合にも多く、出穂後20〜30日までの処理では少なくなります。また背白米は1穂のなかでも弱勢穎果に発生しやすい傾向があります。一方、低温ではほとんど発生しません。したがって、登熟期間が高温で経過したことを特徴づけるものといえます。
背白米は登熟期の比較的初期の高温により玄米の初期生長が旺盛になり、後期の発育ならびに玄米への養分集積が抑えられた場合に発生すると考えられています。すなわち、初期に生長する腹側の発育や養分集積は良好となるが、比較的後期まで生長する背側部の発育と養分集積が衰退して、養分集積が不十分となり外観的に背白となるものといわれています。
2.基白米
玄米の基部にわずかに白色不透明部のあるものをいいます(上図参照)。この不透明部分は実りの最後の段階で透明になる部分であるため、登熟の最後の充実がわずかに不十分となり、澱粉集積が停止した粒といえます。この基白米は、全期間高温処理した場合に著しく発生が多く、出穂後10日間とその後10日間に高温処理した場合にも多く、出穂後20〜30日までの処理では少なくなります。品種間で比較すると、背白米の発生の多い品種で多発し、温度処理と発生率との関係は背白米のものとよく似ていますが、出穂後10〜20日の高温で比較的多く発生する傾向があります。1穂中では弱勢穎果に発生しやすい傾向があります。また低温でも発生することがあります。
基白米は秋落ちや低温その他の原因で玄米の稔りが充分完了しなかった場合にも発生しますが、この場合は白色透明部分が不鮮明であり、高温で発生する場合は不透明部分が鮮明で透明部との境界も明確になります。
3.乳白米の発生
乳白米は玄米の成熟途中で一時的に養分集積が抑えられた場合に、その時充実すべき部位が白色不透明で残り外見上乳白色に見えるものです(上図参照)。これは一時的な低温・倒伏その他の原因でも発生しますが、全期間高温処理した場合に著しく、次いで出穂後10日間とその後10日間に高温処理した場合にも多く、1穂のなかでは弱勢穎果に多く発生します。
高温による乳白米の発生機構は、次のように考えられています。急激な成熟に伴い1穂中の各穎果の間に養分転流の競合が起こり、強勢穎果の粒重増加の最盛期には一時的に弱勢穎果への養分転流が不足し、著しいものはそのまま発育を停止して死米となり、他のものは強勢穎果への養分転流が緩慢になるにつれて再び養分が集積して乳白米となるものといわれています。すなわち1穂の穎果のうち養分が順調に転流した穎花は普通米となり、抑制の著しいものは死米として発育を停止します。乳白米になるか、ならないかは穂への養分の多少、1穂内の競合の程度など比較的複雑で微妙な関係によることから、気温と乳白米の発生の関係は背白米ほど明確ではないのです。
以上のように、高温障害程度の指標としては、著しい場合は高温以外の他の条件では発生しにくい背白米歩合が最も適当とみられるが、背白米の発生をみないような軽微な場合は基白米の発生歩合が適当と考えられます。しかし、基白米は乳白米とともに高温以外の条件でも発生するので、高温で発生したものか否かを詳細に検討する必要があります。
参考文献
・長戸一雄・江幡守衛(1965):登熟期の高温が穎果の発育ならびに米質に及ぼす影響。日作紀34:59-66.
reigai@ml.affrc.go.jp