図説:東北の稲作と冷害
耐冷性品種の障害不稔軽減効果
障害型冷害を回避するには、耐冷性品種の選択が最も効果的である。
耐冷性品種の障害不稔軽減効果
1)冷害の種類と耐冷性
冷害の回避には、耐冷性品種を用いることが最も有効な手段である。
水稲の冷害は障害型冷害と遅延型冷害に分けられ、両者が併発した場合は混合型、複合型冷害と呼ばれる。
障害型冷害は主として減数分裂期、ときには出穂・開花期の冷温により不稔が多発して減収するものである。遅延型冷害は生育の初期から登熟期までの、さまざまな生育時期に冷温や日照不足によって生育が遅延し、結局秋冷によって登熟が不良となり、大きく減収する冷害である。
昭和年代前半までは遅延型冷害が深刻な被害をもたらすことが多かったが、第2次大戦後に早熟多収品種が開発されたことと、育苗資材の発達によって健苗の育成と早植えが普及したため、遅延型冷害は著しく軽減された。代わって作期が早まったことから、減数分裂期に冷温に遭遇する機会が増大し、障害型耐冷性の重要度が高まった。
品種に要求される減数分裂期耐冷性の程度は、それが栽培される地域およびどの熟期に属するかで異なる。気温が低く変動が大きい時期に冷害危険期を経過する極早生や早生は、高温で安定した時期に危険期となる中・晩生種よりも強い耐冷性を必要とする。
2)障害型耐冷性の機構
冷温に対する感受性が最も高い時期は、厳密には減数分裂期よりも1〜1.5日遅い小胞子初期(四分子期および小胞子前期を含む時期)である。また冷温による不受精の原因はほとんど雄しべ側にあり、冷温が花粉の形成と発育を阻害して充実不良をもたらし、 葯の裂開不良の原因となって不稔になる。
また受精率に関係が深い4つの要素、すなわち分化小胞子数、発育花粉歩合(分化小胞子数に対する充実花粉数の割合、受粉歩合(穎花当たり充実花粉数に対する雌しべ柱頭上の花粉数の割合)および花粉発芽歩合が耐冷性に関係すると考え、北海道・東北の多数品種の耐冷性と各要素との関係が調べられた。その結果、発育花粉歩合と受粉歩合が耐冷性と関係が深いことが明らかにされている。(佐竹 1989)
3)耐冷性品種の障害不稔軽減効果
さて、耐冷性品種の障害不稔軽減の効果はどの程度あるのか。
ここで一つの実験結果を紹介する。これは東北農業試験場の冷害研究施設「グラディオトロン」の冷水灌漑水田(冷水を掛け流すことで水温の勾配をつくる)で耐冷性の異なる24品種を供試して行ったものである。処理は水深約20cmで早生品種の幼穂形成期から始め、低温区でほとんどの品種が止葉抽出した時期まで行った。
幼穂形成期から出穂期までの平均水温と不稔率の関係を、耐冷性ランク(図説:主要品種の耐冷性参照)毎にまとめたのが図である。この図は品種の障害型耐冷性の強弱を明瞭に示す。耐冷性の検定で使用される恒温深水法の基準温度19度でみると、不稔率は次の通りである。
耐冷性1:20%以下(東北の品種にはなく、育種材料として使用されている系統)
耐冷性2(極強):約25%
耐冷性3(強):約40%
耐冷性4〜5(やや強〜中):約60%
耐冷性6(やや弱):約80%
この結果は、一つの実験例であるが、耐冷性品種の障害型冷害を回避する効果が著しいことを如実に示すもので、品種選択の重要性がわかる。
参考資料
1) 櫛渕欽也監修(1992)「日本の稲育種−スパーライスへの挑戦」農業技術協会。
2) 佐竹徹夫(1989)「イネ障害型耐冷性品種間差異の機構。作物におけるストレス回避の遺伝学」(昭和61〜63年科学研究費研究成果報告書).
図説参照
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