−豊凶を占う「たろし」、平成8年水稲作柄は如何に−


たろし滝とは 今年のたろし 豊作を願って

 去る2月14日,岩手県石鳥谷町の「たろし滝」で伝統行事である豊凶占いがあると聞き,本年の冷害の早期警戒の仕事初めと思って見学してきた.
 たろし滝は石鳥谷町の中心部から西に山間を8キロ程入った葛丸川上流の景勝「三ツ鞍」,「一ノ滝」の近くにある.トゲシ森から葛丸川に注ぐ沢水が山の中腹で凍りついてできる大氷柱が,この「たろし滝」である.「たろし」とは垂氷(たるひ)が訛ったもので「つらら」のことで,その形が滝に似ていることから「たろし滝」の呼び名がついたといわれている.
 地元の農家の人たちは,昔から毎年2月中旬頃(旧正月の4日と日を定めている)になると,できた氷柱の太さを測り,その年の豊凶を占う伝統行事を行ってきた.氷柱の高さは,13mにも及び,太さは記録として残っているものでは,大豊作となった昭和53年の8mが最高である.この太さで託宣が下される.
 当日,午前10時に託宣が下されると聞き,2月としては気温が異常に高いのを気にしつつ雪道に足を取られながら早めに現場に行く.既に保存会の関係者と宮司さんが神事の準備に取りかかっていた.しかし,氷柱はなく,滝の下に崩落した氷が散乱していた.期待していた「たろし」は幻となってしまった.関係者に聞くと,2月11日までは昨年並みの太さであったが,12,13日の気温の緩みと雨で崩落し,本年は測定不能となったとのこと.10時が近づくについて,地元民やマスコミ関係者がぞくぞくと集まってきた.
 10時に神事が始まり,いよいよ保存会会長で託宣者の農業板垣寛さんが川柳で次の占い結果を発表した.

       「並作に夢を託せというたろし」
      「減反を憂いてたろし身をとかし」

 含蓄のある内容に”不安と感動”の複雑な気持ちになった.その後,参集者に御神酒が配られ,行事は無事終了した.
 
 2月19日,青森県農業試験場の玉川部長から津軽での同様な行事の新聞記事をファクシミリでいただいた.西目屋の乳穂ヶ滝の豊凶占いの結果(2月18日)は「今年は平年作だが,台風に気をつけたほうがよい」というものであった.

 この行事から約2ヶ月が経過した.この冬は寒くて雪も多かったので豊作になるのではという話も風聞されるが,この間の天候の変動の大きさと長期予報の内容からは本年の稲作が楽観できるものではないように感じる.
 平成5年の大冷害を教訓として始められた水稲冷害の早期警戒の仕事は本年で3年目を迎える.平成5年の大冷害,6年の異常高温による品質の劣化,昨年7年の日本海側多収地帯での不作,この3年間は異常続きであったといえる.5月から早期警戒の監視体制に入る.今,その準備に追われている.

 
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