水稲冷害研究チーム
1996年秋田県技術情報
詳しい問い合わせは秋田県農業試験場稲作部(電話 0188−39−2121)へお願いいたします。
1.本田の生育〔7月15日現在 地域農業改良普及センター定点調査結果〕
草丈は平年に比べやや短く、茎数は回復傾向にあるが平年を下回っている。また、葉緑素計値は平年より低くなっており、葉色も急激に淡くなってきているが、葉いもちの発生が県南部および日和地方を中心に目立っている。
7月15日の普及センター定点調査では、あきたこまち(県内85地点)は、草丈55.6cm(平年比95%)、平方メーター当たり茎数531本(同91%)、葉数10.4葉(同‐0.3葉)となっている。
また、葉緑素計値は41.0で平年比96%となっており、中には35前後まで落ちているほ場も見られ、ほ場間差が大きい。
ササニシキでは、草丈54.9cm(平年比95%)、平方メーター茎数当たり614本(同90%)、葉数10.8葉(同‐0.2葉)となっている。
葉数から見た生育は、平年に比べ2〜4日程度の遅れとなっている。
豊凶考照試験における土壌残存窒素の消長(標準値:7月15日現在)
大館:土壌残存窒素量は1.14mgでほぼ平年並に消失した。
秋田:土壌残存窒素量は0.59mgで平年並に消失した。
平鹿:土壌残存窒素量は0.60mgで消失した。
2.病害虫の発生予察
当面の病害虫の発生予察については、平成8年7月1日発表の発生予察情報第4号(秋田県病害虫防除所発表)を参照のこと。
・葉いもちについては県南部および由利地方では多めの発生となっているため、7月19日付けで注意報を発令している。
3.当面の技術対策
現在(7月15日)の生育状況は、草丈はほぼ平年並になっているものの、茎数は少なめであり、稲体も軟弱傾向となっている。
特に、特徴的なのは7月5日以降の葉色の急激な低下である。
本年の場合は茎数不足であることから、葉色の推移には十分留意し適切な対策を実施する。
また、生育ステージから見た稲体は、最も気象災害に弱い危険期に入っていると同時に、7月下旬以降も引き続き低温・日照不足の不順天候で経過する気象予報であることから、今後の技術対策については、適切な生育・栄養・倒伏診断の実施と気象予報や病害虫の発生情報等を参考にしながら、きめ細かな肥培管理の徹底に努める。
(1)幼穂形成期の追肥は早目に
本年の場合、これまでの生育が平年に比べ2〜4日の遅れとなっており、あきたこまちの幼穂形成期(幼穂長2mm)は、秋田で7月16日頃、大館で7月16日頃、平鹿で7月17日頃となっている。
幼穂形成期は、二次枝梗が形成されるとともに幼穂の発育と下位節間の伸長が始まる時期である。
あきたこまちは、幼穂形成期に窒素が不足すると、穂数、籾数の減少により減収する。
また、窒素過剰では倒状や品質、食味の低下を招くので、生育・栄養診断に基づいた適切な対応が必要である。
特に本年の場合、生育が遅れているほ場では葉色が濃く推移していることから、幼穂形成期追肥の実施には十分留意する。
ただし幼穂形成期に葉色の低下が見られた場合は、窒素成分で10a当り1〜2kgの追肥を行う。
(2)減数分裂期追肥は適切に
本年の生育状況から減数分裂期(葉耳間長±0cm)を予測すると、あきたこまちで7月28日頃(秋田市)、ササニシキでは7月30日頃と思われる。
この時期の肥料不足は、枝梗や籾の退化だけでなく、千粒重の低下にもつながるので、葉耳間長を確認のうえ、窒素成分で10a当たり1.5kg〜2.0kg程度追肥する。
特に、本年の場合は、7月5日以降の葉色の低下が大きいので、時期別理想生育量の下限を下回ることが懸念される場合は減数分裂期追肥を早めることも必要である。
ただし、上位葉に葉いもちの発生が目立つ場合や幼穂形成期の追肥等で、葉色の濃い場合は追肥は控える。
なお、出穂期以降の追肥は、品質の低下や食味を落とすので行わない。
(3)根の活力を維持する水管理を
本年の場合、中干しに入ってからの雨量が多いことと日照不足等により適正な中干しの実施は困難な状況下にあった。
これらのことから、今後幼穂形成期までの水管理については、根の伸長を促進し、稲体(根)の活力を高めるため、間断かん水に努める。
ただし、減数分裂期から穂ぞろい期にかけては、葉面からの蒸散量が最大になるとともに、開花、受精と水分の循環も活発に行われる時期なので、常時湛水状態を維持する。
特に幼穂形成期に入ってからの落水は極力避けるようにする。
(4)気象変動に対応した水管理の徹底を
幼穂形成期から出穂期にかけては、水を最も必要とする時期であると同時に、気象変動にも敏感な時期である。
この時期は気象情報には十分に注意し、高温時(最高気温30℃以上)のかけ流しや低温時(最低気温17℃以下)の深水など、気象変動に即した水管理の徹底により、幼穂の保護と稲体の活力維持に努める。
特に本年の場合は、稲体が軟弱傾向であると同時に、根の生育量も不十分(T/R率が高い)であり、このような状態で高温、過乾条件に遭遇すると、稲体が急激に凋落することがあるので、水管理には十分に注意する。
(5)倒伏診断による適切な対策を
本年の場合、これまでの生育遅延と日照不足等により、稲体が軟弱に経過していることと、7月に入ってから草丈の急伸長で、倒伏が懸念される場合は、早めに倒伏診断を行い適切な対策を講ずる。
特に、緩効性肥料の施用圃場や排水不良田及び中干しの不適切な圃場等では、倒伏の診断と対策には十分に留意する。
なお、倒伏軽減剤の使用については、倒伏診断結果や気象及び土壌条件などを勘案のうえ、どうしても、倒伏が避けられないと判断した場合に限り使用する。
(6)危険期(減数分裂期)の深水管理
減数分裂期は低温に最も弱い時期であるので、平均気温20℃以下や最低気温17℃以下の気温が予想される場合は、12cm以上の深水管理により幼穂の保護に努める。
特に本年の場合は、穂数不足は避けられないため、一穂着粒数に依存する収量構成になることから低温条件時の深水管理には、全県的に万全の対策を講じていただきたい。
ただし、かんがい水温が気温より低い場合は、かえってかん水により被害を助長するので、これらの場合は水温上昇対策を実施してから、深水かんがいを行う。
(7)水害対策
梅雨末期は集中的な豪雨により、浸水、冠水等の水害が発生することが多く、被害は水温が高かったり、水が汚濁している場合に増大し、ゆるやかな流速の時や清水の場合は軽減される。
被害は冠水より浸水日の方が軽いので、災害を受けた場合は、できるだけ早期排水に努める。浸水後は体内水分を失いやすいので、水田は急激に乾かさないで浅水管理を主体にした水管理を行う。
また、浸・冠水圃場においては、退水後いもち病や白葉枯れ病などの病害が発生することがあるので注意する。
(8)いもち病防除の徹底を(7月19日付け注意報第3号参照)
本年のいもち病の全般発生は、県中央部以南が6月29日、県北部が7月1日で、平年より5〜7日早く開始した。
その後、感染に好適な気象が継続的に訪れており、現在、県南部及び日和地方では葉いもちの発生が多めとなっている。
なお、オリゼメート粒剤を施用したほ場でも止め葉抽出期以降の防除を徹底する。
防除対策については7月19日付け注意報第3号(病害虫防除所発表)を参照し適切な防除対策を講ずる。
(9)稲こうじ病の防除対策
本病は穂ばらみ期から出穂期にかけて降雨が多い年に多発する。
本年もこの時期に雨の日が多いと予報されており、昨年に続いての多発が懸念されるので、昨年多発したほ場では特に注意が必要である。
本病に対する薬剤散布は出穂10日前が最も効果が高いので、適期散布に心掛ける。
(10)カメムシ類防除の徹底を
常発地では出穂期以降に薬剤散布するが、畦畔の草刈り(出穂前10〜15日)と併用しなければ効果が不十分である。
薬剤防除は畦畔および畦畔から2〜3mを重点的に防除する。
(11)畦畔の草刈りの実施を
畦畔雑草は、管理しないで放置しておくと、病害虫の発生源になるだけでなく、稲体の健全な生育をも阻害するので、随時刈り払いを行い、採光、通風を図り、衛生的にしておくことが大切である。
特に、カメムシ類の被害防止のためには、出穂の10〜15日前までに畦畔等の草刈りを実施する。
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