水稲冷害研究チーム
1996年秋田県技術情報
詳しい問い合わせは秋田県農業試験場稲作部(電話 0188−39−2121)へお願いいたします。
作況ニュース第6号(7月10日)
●当面の技術対策
7月5日現在の生育は、6月中旬以降の天候不順により2〜3日の遅れ(前回6月25日は1〜2日の遅れ)となっている。
草丈は平年並に回復したが、茎数は平年を下回っており、一部で葉色のムラが見られるようになったものの依然として葉色が濃い目で、稲体も軟弱傾向にある。 葉いもちの発生が全県的に見られることや、昨年同様に中干しに入ってからの多雨と日照不足等により中干しの実施も不十分であることから、今後の技術対策については、適切な生育・栄養・倒伏診断の実施と気象予報及び病害虫の発生情報を参考にしながら、よりきめ細かな肥培管理の徹底に努める。
(1)幼穂形成期の追肥は慎重に
本年の場合、これまでの生育が平年に比べ2〜3日の遅れとなっているが、今後気温が平年並に推移すれば、あきたこまちの幼穂形成期(幼穂長2mm)は、秋田でほぼ平年並の7月14日頃、大館で7月18日頃、平鹿で7月16日頃と予想される。
幼穂形成期は、二次枝梗が形成されるとともに幼穂の発育と下位節間の伸長が始まる時期である。
あきたこまちは、幼穂形成期に窒素が不足すると、穂数、籾数の減少により減収する。
また、窒素過剰では倒伏や品質、食味の低下を招くので、生育・栄養診断に基づいた適切な対応が必要である。
特に本年の場合、生育が遅れているほ場では葉色が濃く推移していることから、幼穂形成期追肥の実施には十分留意する。
ただし、幼穂形成期前に極端な葉色の低下が見られた場合は、窒素成分で10a当り1kgを限度として追肥(つなぎ肥)を行う。
(2)減数分裂期追肥は適期に
本年の気象及び生育状況から減数分裂期(葉耳間長±0cm)を推定すると、あきたこまちで7月25日頃(秋田市)、ササニシキでは7月28日頃と思われる。
この時期の追肥は、枝梗や籾の退化を防ぐ効果があるので、生育・栄養診断等の実施により、葉耳間長の確認と適正な施肥量を把握し、10a当たり窒素分で1.5〜2.0kg程度の追肥を行う。
なお、出穂期以降の追肥は、品質や食味を落とすので行わないようにする。
(3)中干し後の水管理に注意
中干し実施後のほ場の表層は酸化状態になるため、終了直後に湛水状態を継続すると、急激に還元が進み酸素不足となり根を傷めるので、中干し後の水管理は、溝を利用した走り水などを繰り返しながら、徐々に湛水状態に入るようにする。 ただし、この時期が幼穂形成期に入っていて、低温注意報が出た場合等は深水管理とする。
(4)冷害常習地では、前歴深水かんがいを
前歴深水かんがいは、冷害危険期(減数分裂期)において、低温に遭遇する危険度の高い県北や山間高冷地で実施する。
幼穂形成期からの前歴深水かんがいは充実花粉数(分化小胞子)の増加により、障害不稔による被害や茎数不足による籾数の減少を軽減し、さらに危険期の深水かんがいと組み合せることにより、高い効果が期待できる。
また、前歴深水かんがいにより危険期にはより少ない水で対応できることが特色である。
具体的実施方法としては、幼穂形成期に入ったら水深5cmを目安に湛水し、その後は幼穂が隠れるよう生育に応じて水位を上げる。
なお、危険期の深水管理は、12cm以上の水深とする。したがって、この技術を導入するにあたっては、畦畔の整備、補強に十分配慮する。
(5)危険期(減数分裂期)の深水管理の適正化
減数分裂期は低温に最も弱い時期であるので、平均気温20℃以下や最低気温17℃以下の気温が予想される場合は12cm以上の深水管理により幼穂の保護に努める。
ただし、かんがい水温が気温より低い場合は冷水かんがいとなり、より被害を助長するので、これらの場合は水温対策を実施してから、深水かんがいを行う。 特に、稲体の窒素濃度が高い場合は、被害をさらに助長するので十分な対応が必要である。
(6)気象変動に対応した水管理の徹底を
幼穂形成期から出穂期にかけては、水を最も必要とする時期であると同時に、気象変動に敏感な時期である。
この時期は気象情報に十分に注意し、高温時(最高気温30℃以上)のかけ流しや低温時(最低気温17℃以下)の深水など、気象変動に即した水管理の徹底により、幼穂の保護と稲体の活力維持に努める。
特に本年の場合は根ぐされによる生育不良もかなり見られるので、これらの圃場では晴天時に一時落水する等のガス抜きが必要である。
(7)倒伏診断による適切な対策の実施を
本年の場合、6月後半以降の天候不順や中干しが不十分なほ場が多いことから、稲体が軟弱に経過しているため、倒伏が懸念されるほ場では早めに倒伏診断を行い適切な対策を実施する。
特に、緩効性肥料の施用ほ場や中干しの不適切なほ場、及び昨年倒伏したほ場等では、倒伏の診断と対策には十分に留意する。
なお、倒伏軽減剤の使用については、倒伏診断結果や気象及び土壌条件などを勘案のうえ、どうしても倒伏は避けられないと判断した場合に限り使用する。
(8)水害対策は速やかに
梅雨の期間中は集中的な豪雨により、浸水、冠水等の水害が発生することが多くなる。
被害は水温が高かったり、水が汚濁している場合には増大し、水温が低かったり、清水の場合は比較的軽くなる。
災害に見舞われた場合はできるだけ早く排水し、被害の軽減に努める。
退水後は体内水分を失い易いので、水田は急激に乾かさないで浅水管理を主体にした水管理を行う。
また、浸・冠水ほ場においては、退水後いもち病や白葉枯れ病などの病害が発生することがあるので注意する。
(9)いもち病防除の徹底を(注意報参照)
本年のいもち病の全般発生は、県中央部以南が6月29日、県北部が7月1日で、平年より7〜5日早く開始した。
その後、感染に好適な気象が継続的に訪れていることから、本年は早期多発の様相となっている。
さらに、稲が軟弱で葉色も濃く推移していることから、抵抗力が弱い状態にあると考えられ、今後、厳重な警戒が必要である。
なお、当面の防除対策については7月4日付け注意報第2号(病害虫防除所発表)を参照し適切な防除対策を講ずる。
(10)稲こうじ病の防除対策
本病は穂ばらみ期から出穂期にかけて降雨が多い年に多発する。
本年もこの時期に雨の日が多いと予報されており、昨年に続いての多発が懸念されるので、昨年多発したほ場では特に注意が必要である。
本病に対する薬剤散布は出穂10日前が最も効果が高いので、適期散布に心掛ける。
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