水稲冷害研究チーム

1999年編集長日誌


この日誌は早期警戒システムの舞台裏を記録するものです。


3月

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○3月1日(月) 
・ 行政監察の詳細聞き取り調査が行われ、研究内容、広域農業情報処理装置の利用状況、官民交流共同研究などについて監察官に説明する。
・ 4日に開催される松山町現地検討会の資料準備にかかる。


○3月2日(火) 
・ 携帯電話とノート型パソコンを組み合わせたインターネット環境が整備でき、今後は出張先から情報の更新が可能となる。また、実態調査中の気象変化の監視やパソコンのないところでも実演が可能となる。
・ 2月下旬の気象表をまとめる。平均気温は平年並みに推移し、降雪量は平年より多くなっている。中旬は欠測となっているため、補完を依頼する。
・ 2月中旬の気象表をまとめる。平均気温は平年並みからやや高く、降雪量は日本海側と太平洋側北部で平年より多くなっている。
・ 岩手県久慈のモニターからメールアドレスの変更の連絡がある。
・ 大阪の寿司屋さんから次のような質問が届く。育種家の意見も聞いてご返事することにしたい。
「お久しぶりです。弥生三月とはいえ、まだまだ寒いですね。少し、教えてください。
穀検のページを見ていると鳥取県日野郡で「ひとめぼれ」がAランクで載っていました。「ひとめぼれ」が寒冷地向きに開発され、東北地方で栽培される品種だとばかり思っていましたので、鳥取はかなり南にあり、コシヒカリは日本中でその地に合うように改良されているのは判りますが、「ひとめぼれ」は開発されてからまだ日が浅いので、なんだか不思議な気がします。私の疑問を解決してください。宜しくお願いします。」
・ 水田利用部稲育種研究室の友人から、上の質問に関する回答が来る。適切な回答に感謝する。
「コシヒカリやひとめぼれに限らず、東北や北陸で育成された品種の中には、基本栄養生長性や感光性等の、出穂に関する特性の関係で、温暖地での早期栽培や、関東以南の中山間地における栽培にも適応している品種がいくつもあります。過去には、フジミノリやトヨニシキ、アキヒカリなど東北地域で育成された品種が西南暖地で普及した例があります。
特にコシヒカリ及びその近縁品種(ひとめぼれ、あきたこまち等)は、高温で登熟しても玄米の外観品質や食味があまり低下しないので、例えば鳥取などでも、栽培法によっては食味の良い米が得られると思います。ちなみに、日本中で栽培されているコシヒカリが、
みな食味が良いとされるのは、コシヒカリが各地でその場所に合うように改良されたからではなく、もともと広い地域に適応できるような遺伝的性質を持っていたからです。ひとめぼれも、コシヒカリと同じような「広域適応性」を備えていると考えられます。」
・ 宮城県農業センターと4日松山町で開催される現地検討会の打ち合わせを行う。


○3月3日(水) 
・ NOAAエルニーニョホームページの海面水温(3月2日現在)は太平洋赤道付近の東半分、ペルー沖付近の海面水温はやや高く、西に半分は低くなっている。今までとはやや変化が起こり始めた可能性もある。
・ 松山町現地検討会資料が完成する。
・ 3か月予報と1か月予報を掲載する。いよいよ今シーズンが始まる。


○3月4日(木) 松山町現地推進会議開催
・ 宮城県松山町において現地推進会議が開かれた。協力農家、農協、役場、普及センター、宮城県農業センターが参集し、平成10年度研究成果と次年度の研究計画が検討された。
・ 松山町では雨が少なく、冬作作物の生育がやや心配されている。
・ 大阪の寿司屋さんから、次のようなメールが届く。
「さっそくの返事有り難うございます。コシヒカリのことは知らなかったとは言え、大きな誤解していました。今、私が米作りに興味を持つ、きっかけになったラジオ番組が「日本の農業を考える」という特集を3月12日に放送するので、リスナーに投稿を募集しています。私も投稿するのですが、鳥越さんの立場上制限や不利益を被らなければですが、専門家の立場から意見を投稿してくれませんか。鳥越水稲冷害研究チームの事などを是非知らせてください。
 番組名、朝日放送ラジオ「アベクジラ」日本の農業を考える係
 http://www.asahi.co.jp/radio/9jira/akmenu.html
 : radio@abc.asahi.co.jp 」


○3月7日(日) 
・ 地域総合研究平成10年度成績書の印刷原稿を準備する。

○3月8日(月) 
・ 携帯電話を用いてノートパソコンでインターネットに接続する環境ができる。
・ 1か月予報を更新する。
・ 田の雪が融け、草や麦類が緑を増す。啓蟄を過ぎ、稲作の準備が本格化する時節となる。


○3月9日(火) 
・ 1999年度東北基幹品種の生育・作柄診断試験圃場用の種籾を育成県にそれぞれ依頼する。
・ 各研究課題の重点研究問題を整理し、プロジェクト研究残り2年間で達成可能なものを抽出する作業を始める。
・ 気象庁から暖候期予報、すなわちこの夏の長期予報が明日午後2時に発表される予定だ。注目される予報のひとつである。


○3月10日(水) 暖候期予報発表
・ 本日から、European Center for Medium-Range Weather Forecasts (ECMWF: http://www.ecmwf.int/)のホームページで提供している北半球500hPa高度場予測図と、U. S. Department of Commerce, National Oceanic and Atmospheric Administration (NOAA: http:/www.elnino.noaa.gov/)のホームページが提供する海面水温平年偏差図を用いた監視態勢に入る。
・ 暖候期予報が発表される。予報では、この夏の平均気温は平年並みから高い確率が合わせて80%となっている。夏らしい夏になることを期待したい。
・ 宮城県松山町のモニターの一人から、今日から塩水選が始まったとのメールが届く。本年は是非とも豊作を期待したいとのことだ。
・ 韓国の農業気象関係の研究者から、早期警戒システムに興味を持って訪問したいとの次のようなメールが届く。
「Dear Dr. Torigoe
I am working in Agroclimatic Resources Lab. Agroecology Division, Agricultural Environment Department, National Institute of Agricultural Science and Technology. I found your research team on the internet web site of Tohoku Agricultural Experiment Station, and I am very much interested in your research works, especially the agroclimatic information system. So I want to meet your team and to learn on your climatic data acquisition and system management. And I hope we can discuss collaborative works for further research as soon as possible. I am looking forward to your answer.
Yours sincerely」


 
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○3月11日(木) 
・ 3月上旬の気象表をまとめる。平均気温は平年より1〜2.5度程度高く推移した。仙台の降水量が異常な値を示す。データ確認の問い合わせを行う。
・ 各県から水稲の種籾が届く。


○3月12日(金) 
・ 全球雲分布画像によると、チベット高原で雲が発生し、帯状に日本東海上まで続く。
・ 図説原稿「梅雨」を作成する。気象編は冷害監視の視点を重視し、監視情報がどこから入手可能か、またその情報をどのように解読するかを将来明示したい。
・ 地域の情報ネットワークとの連携を強化し、多様なニーズを掘り起こすためのリンク依頼を始める。
・ 来週はつくば市で開催される研究推進会議に出席するため、同僚の神田君がノートパソコンと携帯電話で情報更新ができる環境を整備してくれる。


○3月14日(日) つくば市へ移動
・ 全国の農業研究推進会議のため、つくば市へ移動する。
・ 新幹線の車窓からみると、宮城県から以南では水田の耕起や堆きゅう肥の施用が行われ、春耕が盛ん。栃木県あたりから、梅が開花し、麦が鮮やかな緑となる。田畑は雨が少ないためか、よく乾燥しているようだ。つくば市周辺は大麦が20cm程度になり、柳が芽吹き始める。


○3月15日(月) 稲作技術検討会
・ 総合農業「作物生産部会」稲作技術検討会に出席し、本年度の研究成果と技術検討事項「飼料用イネ開発の新たな研究展開方向」を検討する。
・ 飼料用イネについては、@飼養技術面から要望される飼料用イネの特性、A飼料用イネ品種の育成、B飼料用イネ栽培研究の課題、C専用品種「はまさり」(埼玉県)を用いた飼料用イネ生産・利用の事例が報告され、総合討議が行われた。
・ 携帯電話とノートパソコンを用いて出張先で情報更新を初めて行う。電話回線のため、やや時間はかかるが、順調に作業を終える。


○3月16日(火) 総合研究検討会
・ 総合農業総合研究検討会に出席し、本年度の研究成果、平成11年度開始地域総合研究、平成12年度地域総合研究(案)を検討する。
・ 来年のこの席では、われわれ総合研究第4チームの次期課題が検討されることになる。


○3月17日(水) 作物生産部会研究推進会議
・ 総合農業「作物生産部会」研究推進会議に出席し、新品種審査報告、主要研究成果、品種を取り巻く制度・情勢の変化に対応する作物開発研究のあり方等について検討する。


○3月18日(木) 総合研究推進会議(第1日目)
・ 総合農業「総合研究部会」研究推進会議に出席し、主要成果、重点検討事項等について検討する。
・ 事務次官講話があり、WTO次期農業交渉、食料・農業・農村基本法(案)、研究機関の独立法人化等の情勢について詳しく紹介された。

○3月19日(金) 総合研究推進会議(2日目)
・ 総合農業「総合研究部会」研究推進会議に出席し、今後の研究戦略等について検討する。
・ 長い長い会議日程が終わり、盛岡に帰る。


○3月20日(土) 
・ 連携して進めている県のプロジェクト関係者から、転勤等の連絡が入る。
・ ホームページをもつ青森県・岩手県のJAから、相互リンクの承諾が届く。


 
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○3月22日(月) 
・ 春の大雪、盛岡では一晩で積雪が30cm程度となる。ビニールハウス等の被害が心配される。アメダス受信が午前6時以降止まる。衛星受信のアンテナに雪が付着していたためか、除雪して様子をみる。午前10時に復旧する。データの補完を配信先に依頼する。
・ チベット高原で雲が発生し、日本付近に次々と流れ込んでいる状態が続く。
・ 明日、行政監察の補足調査があるため、資料準備と部長との打ち合わせを行う。


○3月23日(火) 行政監察補足調査
・ 行政監察の補足調査は国と県の研究仕分けについて行われ、私たちのチームは短時間で終わる。
・ 国際事業団から稲作コースの講義の公文依頼が届く。講義は水管理に関するもの。
・ 岩手県から、病害虫発生予察情報第1号が届く。早速入力する。会議等で別世界にいたが、突然の稲作シーズンの知らせに驚かされる。
・ 県から分譲いただいた生育・作柄診断試験区の種籾を塩水選に回す。また、現場担当者から本年度の移植日の予定を聞かれ、5月17日を予定する。
・ 宮城県松山町のモニターから、人と環境にやさしい稲作を本年度の目標にするとのメールが届く。
・ 大阪の寿司屋さんから、桜の花の塩漬けが郵送で届く。次のような便りとともに。「桜前線が春の手を引いてやってきました。草花も待ちかねたように芽吹いています。少し、春をお贈りいたします。桜湯にしていただくのが一番ですが、私は薄いだし汁を入れて(味付け不要)、この季節だけのお吸いものにしてお店で出しています。私は紅葉前線より桜前線のほうが好きです。今後も宜しくお願いします。」
・ 広辞苑によると、「桜湯は塩漬にした桜の花に熱湯を注いだ飲物。“茶を濁す”意から茶を忌む婚礼の席などで用いる」とある。

大阪から春の便り(桜湯)

○3月24日(水) 
・ 第4チームの同僚鮫島さんが4月1日付けで北海道農業試験場に栄転する。4月からは神田君と2人になる。
・ 県が実施している地域基幹研究関係者の人事異動の情報が次々に入る。
・ 現場関係者と移植時期や種籾準備について打ち合わせる。移植日は5月18,19日を予定する。それに合わせて苗の準備を行うこととする。
・ 3か月予報を更新する。6月にオホーツク海高気圧が張り出す予想となっている。例年通りの梅雨時期の気圧配置であることを示す。
・ 福島県農業試験場と、航空機実験の現地と同県の地域基幹研究の実証現地への本年度研究成果と次年度の計画打合会の日程調整を行う。穂いもち発生状況の航空機多波長域走査センサによる計測実験の結果をまとめる。金曜日に現地関係者に報告する予定。
・ 松山町のモニターから、新しいモニター候補(施設園芸と水稲の複合的経営)があるとの連絡が入る。


○3月25日(木) 
・ 監視地点の日別アメダス気象表示の一部にトラブルが発生、検討を依頼する。
・ 福島県に移動。岩手県花巻市以南の水田は雪が融け、仙台から南では梅が満開。春が急いで北上している。


○3月26日(金) 
・ 福島県農業試験場関係者とともに、航空機多波長域走査センサによる穂いもち発生・被害状況の画像を現地農協・生産者に報告する。関係者は発生状況を如実に示す画像に驚く。

○3月28日(日) 
・ 1か月予報を更新する。
・ 韓国の研究者から4月4日に盛岡に到着するとのメールが届く。


○3月29日(月) 福島県農試地域基幹研究現地検討会
・ 連携して進めている福島県農業試験場の地域基幹研究現地検討会に参加する。町、JA、生産農家等が集まり、今までの研究成果と今後の研究計画について検討が行われた。今後の課題としては、いもち病の予察情報をどのように提供し、それに基づく防除対策とその効果を評価する必要がある。また、情報ネットワークをどのような形で構築するか。
・ 福島県南部ではなたねの花が咲き始め、桜のつぼみもふくらむ。
・ 宮城県栗駒高原周辺では露地で水稲育苗の準備が始まる。


○3月30日(火) 
・ 岩手県から技術情報が届く。
・ 農業関連出版社から、早期警戒システムのホームページに関する原稿依頼が来る。宣伝にもなるので、お引き受けする。


○3月31日(水) 
・ 山形県の予察情報が届く。
・ 図説用の品種解説「おきにいり」「朝紫」「ゆめむすび」を作成する。



 
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