2000年仙台管区気象台発表予報

10月10日発表寒候期予報


 本情報は仙台管区気象台発表の寒候期予報内容をお知らせします.


○10月10日発表 東北地方寒候期予報(11〜3月)

1.予想される天候の特徴
冬(12〜2月)平均気温の各階級の確率
 冬(12〜2月)平均気温は、「高い」の可能性が50%と最も大きく、「平年並」の可能性も40%と大きい。「低い」の可能性は10%と小さい。
(2) 天候の特徴
○11月:天気は数日の周期で変わり、東北日本海側では平年に比べ曇りや雨の日が少なく、東北太平洋側では平年に比べ晴れの日が少ないでしょう。
この期間の平均気温は高く、降水量は平年並の見込みです。
○12〜3月:冬型の気圧配置は長続きせず、東北日本海側では平年に比べ曇りや雪または雨の日が少なく、東北太平洋側では平年と同様に晴れの日が多いでしょう。
冬(12〜2月)の平均気温は高く、東北日本海側の冬(12〜2月)の降雪量は平年並です。

2.長期的な傾向
 東北地方の冬(12〜2月)平均気温は、5年移動平均で見ると1980年代までは高・低温の時期が交互に現われており、60年代前半、70年代前半、80年代始めは高温傾向で、60年代後半、70年代後半、80年代半ばは低温傾向だった。しかし、1980年代終わりから90年代前半にかけては顕著な高温となり、その後も高温傾向は続いている。こうした変化を10年〜数10年スケールの変動によると見た場合には、90年代前半に高温のピークは過ぎたと考えられるが、その後も低温は現れていない。これは、10年〜数10年スケールの変動に加えて、温室効果ガスの増加に伴う長期的な気温上昇や都市化の影響が重なったことによると見られるが、それぞれの要因の定量的な評価はされていない。
東北地方の冬(12〜2月)平均気温平年差の推移
東北地方の冬(12〜2月)平均気温平年差の推移
(棒グラフ:平均気温平年差 太線:5年移動平均値 点線:-0.6℃<平年並の範囲≦0.4℃)

 東北日本海側における冬(12〜2月)の降雪量は、5年移動平均で見ると1970年代前半は少ない傾向だったが、70年代後半から80年代半ばにかけては多い傾向が続き、80年代終わりから90年代前半にかけて平年を大きく下回った。しかし、最近は平年に戻る傾向が見られる。
東北日本海側の冬(12〜2月)の降雪量平年比の推移
東北日本海側の冬(12〜2月)の降雪量平年比の推移
(棒グラフ:降雪量平年比 太線:5年移動平均値 点線:83%<平年並の範囲≦112%)

 東北日本海側における年最深積雪は、5年移動平均で見ると1980年代終わりから少ない傾向にあり、この期間の高温傾向と対応している。しかし、最近は冬(12〜2月)の降雪量と同様に平年に戻る傾向が見られる。
東北日本海側の年最深積雪平年比の推移
東北日本海側の年最深積雪平年比の推移
(棒グラフ:年最深積雪平年比 太線:5年移動平均値)

 最近10年間の東北地方の冬(12〜2月)の天候を年別に見ると、冬平均気温は1995/96年に平年並となった他は高温が続いており、低温の年は現れていない。また、90/91年や92/93年は極端な高温となったが、その他の年は高温傾向で、北海道では97/98年から並冬が続いている。
 最近10年間の東北日本海側の冬(12〜2月)の降雪量は平年並かやや少ない傾向で、多い年はない。

最近10年間の東北地方の冬(12〜2月)の天候
冬平均気温平年差(℃)冬降雪量平年比(%) 東北地方の冬(12〜2月)の天候の特徴
1990/911.6(++)87( 0) 暖冬 12月記録的高温 2月寒暖の変動大
91/921.3( +) 68( -) 暖冬 1月記録的高温 1月少雪 2月後半冬型
92/931.6(++) 62( -) 暖冬 太平洋側多雨
93/940.8( +) 84( 0) 暖冬 寒暖の変動大 暴風雪
94/950.5( +)101( 0) 暖冬 前半寒暖の変動大 多照 太平洋側少雨雪
95/960.3( 0) 97( 0) 並冬(北海道暖冬) 後半寒暖の変動大 太平洋側記録的少雨雪
96/971.2( +) 71( -) 北暖西並 日本海側少雪 12月日本海側記録的多照
97/980.6( +) 84( 0) 暖冬(北海道並冬) 1月太平洋側記録的大雪
98/990.7( +) 89( 0) 暖冬(北海道並冬) 太平洋側少雨雪 日本海側寡照
99/001.0( +) 93( 0) 北暖西並(北海道並冬) 寒暖の変動大 1月記録的高温
 冬降雪量平年比は東北日本海側における値である。
 ()内は冬平均気温及び冬降雪量の階級で、かなり高い・かなり多い(++)、やや高い・やや多い( +)、平年並( 0)、やや低い・やや少ない( -)、かなり低い・かなり少ない(--)で表す。

3.太平洋赤道域の状況
エルニーニョ監視海域の月平均海面水温偏差(℃)の推移(1976年1月〜 2000年9月)
エルニーニョ監視海域の月平均海面水温偏差(℃)の推移(1976年1月〜 2000年9月)
(折線は月平均値、滑らかな太線は5か月移動平均値を示し、正の値は平年(1961〜90年の30年平均値)より高いことを示す。エルニーニョ現象の発生期間は赤で、ラニーニャ現象の発生期間は青で、それぞれ陰影を施してある。)
 1999年夏に始まったラニーニャ現象は2000年春に終息した。エルニーニョ監視海域(北緯4度〜南緯4度、西経150度〜西経90度)の9月の海面水温偏差は-0.2℃で、太平洋赤道域の海面水温は、西部で平年より高く、中・東部で平年並の状態が続いている。一方、南方振動指数が2か月連続で正となったことからわかるように、貿易風が平年よりやや強い状態が持続している。
 エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温が+1.0℃を大きく超えない範囲の正偏差で推移すると予測している。
 太平洋赤道域の西部で海面から深度260mまでの平均水温の正偏差が続いているように、西部太平洋には暖水が蓄積している。この暖水の一部が東に移動することによって、モデルによる予測のように、監視海域の海面水温が平年よりやや高くなる可能性はあるものの、過去2か月貿易風が平年よりやや強い状態が持続しているなど、今のところ太平洋赤道域の大気・海洋の状態を大きく変化させる要因はなく、監視海域の海面水温は、予測期間中はおおむね平年並で経過すると考えられる。このため、今年の冬の予報に対してエルニーニョ現象やラニーニャ現象時に現れやすい天候の特徴は参考に出来ない。
エルニーニョ予測モデルによるエルニーニョ監視海域の海面水温偏差予測
エルニーニョ予測モデルによるエルニーニョ監視海域の海面水温偏差予測
(先月までのエルニーニョ監視海域の海面水温偏差の推移(折れ線グラフ)とエルニーニョ予測モデルから得られた今後の予測(ボックス)を示す。各月のボックスは、予測される海面水温偏差が70%の確率で入る範囲を示す。)

4.北半球中緯度の高温傾向
 全球平均の850hPaと300hPaの高度差(層厚)を温度に換算した量(層厚換算温度)は、おおよそ対流圏の平均温度とみなすことが出来る。対流圏平均温度の変動はエルニーニョ南方振動(ENSO)と関係が深く、太平洋赤道域東部の海面水温変動に半年程度の遅れをもつことが知られている。
 全球平均層厚換算温度は、1997/98年のエルニーニョ現象に伴って1998年には大きな正偏差を記録した。その後のラニーニャ現象に伴ってその正偏差は小さくなり、本年初めには偏差がゼロ付近となったが、北半球中緯度(30〜50゚N)の層厚換算温度は正偏差が続いている。また、日本の長期的な気温傾向は北半球中緯度の層厚換算温度(対流圏平均温度)の傾向と連動して変化しており、東北地方の気温傾向も同様で、1998年をピークとした気温の高い状態が継続している。
 太平洋赤道域東部の海面水温(4ページのエルニーニョ監視海域の月平均海面水温偏差の推移参照)は昨年末に低極となった。これに対応して対流圏平均温度は現在が低極付近と見られ、北半球中緯度の層厚換算温度偏差の月平均値は本年7〜8月にようやくゼロ付近となった。ところが、北半球中緯度の対流圏下層では平均温度が平年より高いままで、北半球中緯度帯の地上気温も平年より高い状態が続いている。
 こうした状態は今年の冬にかけても続くと考えられ、今年の冬は寒気の南下はあっても長続きしないと見られる。
300〜850hPaの全球平均層厚換算温度偏差の時系列
300〜850hPaの全球平均層厚換算温度偏差の時系列
(細線:月平均値 太線:11か月移動平均値)

北半球中緯度層厚換算温度偏差と東北地方平均気温偏差の時系列
北半球中緯度(30-50゚N)層厚換算温度偏差(細線)と 東北地方平均気温偏差(太線)の時系列(共に11か月移動平均)


5.その他の統計資料
 重回帰式による予想や500hPa高度場の類似年などによる統計資料は、今年の冬高温傾向を示唆する資料が多い。月別でも高温を示唆する資料が多いが、重回帰式による予想や500hPa高度場の類似年などの一部には12月に平年並、2月に低温を予想する資料がある。
 循環指数の周期からは、極東中緯度高度(極東中緯度の高度の指標で、−は中緯度に寒気が南下しやすく、日本付近の気温は低い)は2月に高極が予想され、2月は寒気が南下しにくい。また、極東極渦指数(極東域における極地域の寒気の強さの指標で、−は寒気蓄積、+は寒気放出だが、必ずしも中緯度への寒気南下と結びつかないこともある)は1〜2月に寒気の蓄積を予想している。

6.まとめ
 1990年代前半のような極端な暖冬はなくなったが、近年は引き続き暖冬傾向で推移している。また、北半球中緯度の対流圏(特に下層)では平均温度の高い状態が続いており、今年の冬は寒気の南下があっても長続きしないと見られる。その他の統計資料による予測も高温傾向を示している。
 このため、今年の冬は寒冬になる可能性は小さく、暖冬の可能性が最も大きいと見られる。


 

 

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