水稲冷害研究チーム
1998年度 早期警戒活動を振り返る
1998年度 早期警戒活動を振り返る
1.豊凶を占う“たろし滝”(1998年2月14日)
岩手県石鳥谷町の「たろし滝」の豊凶占いに参列する。早朝から雪が降り、神事に情緒を添えるものとなった。たろし滝の氷柱は近年になく太り、計測の結果は6m30cmであった。保存会の会長は「たろし」が豊作を予言するとし、恒例の川柳で「さあ大変 減反増える この太さ」と農家の心情を表現した。
2.代かき始まる(1998年5月8日)
寒冷前線の通過で、ほぼ全域で雨となる。北部は気温が下がり、日本海側と南部は暖かい空気が入り気温が上がる。週間予報支援図によると、今後北日本上空に弱い寒気が流れ込む予想となっている。 試験区代かき始まる。苗の生育状況を調べる。全品種本葉3葉期に達している。一部品種は徒長する。
3. 試験区の機械植え(1998年5月11日)
移動性高気圧の覆われ、朝方冷え込み。ほとんどのアメダス監視地点で5度以下となり、晩霜がある。農作物への被害が心配される。施肥法、水管理、いもち発生予察試験圃場の機械移植を行う。好天に恵まれ順調に作業は終わる。
4.生育・作柄診断試験区の手植え(1998年5月12日)
低気圧が接近して、雨となる。生育・作柄診断試験区の手植えが小雨の中無事終わる。夜はさなぶり。冷え切った身体に酒がしみわたる。
5.第1回生育調査(1998年6月10日)
梅雨前線が北上し、天気は南からぐずつく。気温はやや高くなる。オホーツク海高気圧は中心を東海上に移したが、依然として張り出す。中国大陸にある低気圧はほとんど動かない。生育・作柄診断試験区の第1回目生育調査を行う。葉齢は予想以上に進んでおり、分げつも多数形成され始めている。しかし、分げつはか細く、稲の草姿が正常には見えない。 葉齢を数えるのが困難な個体に時々出会う。よく観察すると、本葉第5葉葉鞘が第4葉葉鞘より短く、また第6葉の葉身長が第5葉の葉身長より短く、さらには第7葉がさらに小さくなる現象が認められる。この現象が品種には関係なく観察される。育苗期間の苗の生長に起因するのか、除草剤の薬害、軟弱徒長苗が低温に遭遇したためか。原因を考える必要がある。 金曜日に低温の続く地帯を実態調査することに決める。
6. 実態調査(1998年6月12日)
オホーツク海高気圧が広く日本列島を覆う。太平洋側は「やませ」。週間予報支援図によると、気温の低い状態はこの先数日のようだ。冷温障害が心配される地域を見て回る。コースは、青森県三沢市・六ヶ所村・東北町・天間林村、十和田市、八戸市、岩手県軽米町など。一部地域では、葉先枯れや活動中心葉や新葉の退色などの障害が現れ始めている。ほとんどの水田は深水で管理されている。今後もやませが続くようでは冷温障害と生育遅延が心配される。
7. 松山町モニター農家にパソコン設置(1998年6月17日)
移動性高気圧に覆われて、全般に晴れる。気温も上がり、生育の回復が期待できる。宮城県松山町のモニター2名のお宅を訪ね、ISDNとパソコンを設置する。インターネット接続を行い、この後ホームページの情報提供内容について、生産者の立場からの助言を頂く。
松山町の稲は、驚くほど旺盛な分げつで葉色も濃い。葉いもちの発生について取り置き苗や本田を観察するが、病斑はみられても、ほとんど止まり病斑で進展性の病斑は観察されなかった。ラジコンヘリによる予防粒剤の散布が盛んに行われている。
8.実態調査(1998年9月3日)
大陸からの移動性高気圧が北に偏って張り出し、太平洋側は気温も低く天気はぐずつく。 青森県太平洋側と岩手県沿岸部、宮城県全域に低温注意報が継続発令。紀伊半島の南海上にある熱帯性低気圧は台風4号に匹敵するような大きな雨雲を形成。今のところ東に進んでいるようだが、今後の動きが注目される。午前5時現在、山形県肘折では気温が15度を下回る。北海道では10度を割るアメダス地点がある。岩手県北・沿岸部と青森県太平洋側の水稲生育状況を調査する。冷温障害のひどい圃場では、“白ふ”(穂先の穎果の生育阻害により、先端部が白くみえる)がみられた。
9.航空機実験(1998年9月9日)
移動性高気圧に広く覆われ、全般に晴れて気温は高い。好天が続き、登熟の進展が期待される。福島県で穂いもち発生状態を計測するための航空機実験を福島県農業試験場と共同で実施する。午前、10時から航空機による多波長域走査センサによる計測を行い、同時に地上での分光計測を実施する。天候は実験地周辺では良好であり、実験は成功する。待機態勢に入って、このような短期間でデータが取得できたのは稀なことである。
10.福島県南部水害の調査(1998年9月10日)
移動性高気圧に広く覆われ、全般に晴れて気温は高い。登熟の進展が期待される。航空機実験現場で、昨日に続いて分光計測を行う。本日も素晴らしい快晴で、実験は順調に進み、終了する。帰路、白河周辺の水害被害水田を見て回る。悲惨な水田の状況に一同息をのむ。自然の力の凄さを見せつけられる思いだ。
(写真手前:水稲は土砂で埋もれる)
11.モニター相互の交換会(1998年9月19日)
秋雨前線が東北北部に停滞し、南部は太平洋高気圧の影響で晴れる。宮城県仙台・古川周辺の「ササニシキ」「ひとめぼれ」が成熟期に達したものとみられる。松山町のモニターとともに、石巻のモニターを訪問し、酒米を中心に圃場を見学しながら情報交換を行う。われわれを含め9名の関係者が集まり、稲を見ながら楽しい休日の一時を過ごす。松山町の水稲作柄についても調査対象圃場を中心に観察した。早い水稲は成熟期に達しており、来週から刈り取りが始まるものと思われる。台風5号の強風と強雨により、松山町から石巻市にかけて一部で倒伏が見られる。宮城県北部では自然乾燥用の棒が畦畔に設置され始めた。
1999年の早期警戒の活動は、日誌にどのように記録されるのか?!
reigai@tnaes.affrc.go.jp