水稲冷害研究チーム
1999年 早期警戒の活動を振り返る
1999年 早期警戒の活動を振り返る
1.2月18日(木) 地域総合研究評価推進会議の開催
総合研究第4チームが中心となって進めているプロジェクト研究「早期警戒システムを基幹とする冷害克服型営農技術の確立(平成8〜12年度)」の外部委員による評価会議が開催された。研究期間の中間年を終えたため、個別課題の研究推進を中心とした進捗状況について厳しく評価される。
評価委員からの指摘事項は次の2点であった。
1)冷害を克服する営農技術の確立をめざし、支援態勢も極めて良好で一層の研究の推進が期待される。
2)今後は得られた営農技術の普及にも視点をおいて研究の推進を図ること。
東北農試の対処方針はこれに対して次の通り。
1)開発した早期警戒システムの充実を目指して、モニターを増やしてその実用性の向上を図る。
2)対応技術の充実は現場条件を踏まえた研究の成果を待たなければならないため、早急にはいかないが、東北農政局、各県等との連携を一層密にして可能な限り努力する。
2.4月5日(月) 韓国の研究者李さん来室
以前から早期警戒システムのホームページをみて興味をもっていた韓国の農業気象分野の研究者"李さん"が来室する。1週間滞在し、早期警戒システムの概念、情報提供内容、ならびに今後の開発方向について情報を交換する。韓国にも冷害被害があるため、同様なシステムを将来開発してみたいとのこと。早期警戒システムも国際的になり始める。
3.5月9日(日)松山町モニター圃場に試験区設置
開発した発育予測モデルを総合的に検証するため、松山町のモニター圃場に試験区を設定する。モニターは丁度田植えの真っ直中で、圃場脇で挨拶をする。盛岡に帰ると亘理町の友人からメールが届いていた。「久方ぶりのメールありがとうございました。返事が遅れて申し訳ありません。この大型連休中はほとんど田んぼ通いに明け暮れました。田植え作業はすでに一段落しました。作業は、4/28に畦草刈り、4/29〜4/30に代かき、5/1〜5/3に田植え、5/4〜5/5に補植および畦波板設置のような日程で行いました。今年は苗もそこそこの出来で、本田移植後も好天続きで活着も良好でした。私の集落の田植えピークは5/2〜5/3にかけてで、5/8頃にはすべて終了したようです。盛岡周辺よりも二週間くらい早いようですね。今年もホームページに掲載されている種々な情報を利用させていただきたいと思いますのでよろしくお願いします。」
4.5月19日(水)生育・作柄診断試験区の手植え
生育・作柄診断圃場の手植えを行う。32名が風雨の中集まり、12品種(40a)を手植えする。昨年に引き続き雨の中の田植えとなる。私のおこないが悪いのか。夏の天候の平安を祈る。いよいよシーズンインとなり、身が引き締まる思いがする。 夜は早乙女とともに、『早苗ぶり』で祝杯を上げる。石巻市のモニターから次のようなメールが届く。「先日はお忙しいところをお立ち寄りくださいましてありがとうございます.お借りしました、<庄内稲作農業の発展の歴史と展望>及び<イネを創った人々>一気に読ませていただきました.亀の尾に関すること、それから、明治時代からの稲作の歴史が詳しく書いてあり過去の農業人の健闘ぶりがしのばれました.さて、我が家のインターネット環境ですが、あれから改善したように思えたのですが、このごろ又、文字化けが生じてきました.システムの競合が原因と思われますので余りひどくならないうちにシステムの再インストールをします。今後とも宜しくお願いします.」
5.5月26、27日(水、木)鶴岡市・最上町のモニター訪問
山形県鶴岡市のモニターK氏を神田・小林両君と一緒に訪ね、経営の概況、気象予報に対する感想、冷害対策技術組み立て、パソコン・インターネット・メイル、早期警戒システムへの意見・要望等について聞き取り調査を行う。電子メールでのやりとりを通して、お互いの考え方・人物像はある程度把握できていたが、初めて直にお会いすることができ感激した。奥様も聞き取り調査に同席され、夫婦協力して経営している印象を受ける。数時間程度の話ではとてもお互い満足できず、また来ることを約束して別れる。
山形県最上町のモニターY氏を訪ねる。昨年秋から訪問することが話題となっていたが、それが実現でき感激である。やはり、ご本人の印象は私がイメージした人物と一致した。町の営農対策室では、関係者と生産者の営農指導にはリアルタイムの情報の必要性が一致する意見となり、その一例として『早期警戒システム』を携帯電話とノートパソコンを利用して紹介した。昨日から、車で盛岡−沢内−横手−新庄−鶴岡−尾花沢−最上−古川−盛岡と約600kmの旅をし、われわれ3人にとっては、新しい出会いと感動の調査旅行となった。26日にお会いした山形県鶴岡のモニターK氏からメールが届く。「昨日は遠路お出で頂きありがとうございました。鳥越さんはじめチームの皆様にお会いでき本当に楽しい時間を過ごす事が出来ました。毎日の作業に追われて忘れがちになってしまいますが、人との出会いの有り難さに感謝です。」
6.6月2日(水)「早期警戒システム」報道関係への発表会
早期警戒システムを広く知っていただくために、報道機関にお集まりいただきシステムの情報提供内容等について紹介する。この後、アクセス件数は急増する。岩手県種市のモニターから、やませ情報とテレビ放映の知らせが届く。「鳥越さん今日は。隣村の侍浜で,少しヤマセが来たとの事IBCラジオで話していました。昼のNHKを見ていたら,鳥越さんが出ていてチ−ムの活動内容の説明をしており,懐かしさを覚えました。」
7.6月8日(火)松山町モニターのパソコン設置
松山町で新しくモニターになっていただける2方に、ISDN、パソコン、インターネット環境を整備する。一方は10ヘクタール以上の水稲作を主に経営、またもう一方はイチゴと水稲の複合的経営を実践している専業農家である。早期警戒システムが生産者の方々に利用できるように、種々ご指摘を頂く予定。
8.7月13日(火)岩出山モニター訪問
宮城県岩出山町のモニターを訪問する。冷害回避のための技術対策についてお父さんを交えて議論する。特徴的な技術は珪酸カリと過燐酸石灰の施用である。6月20日頃に10a当たり60kg-100kg施用すると、稲の姿は慣行のものとは見違えるように株張りがよくなるという。また平成5年の冷害時にも町の平均が1,2俵であったが、平均305kgの収量を得たという。圃場を見せていただき、確かに稲の草姿は今までみたことのないような、株張りを示す。今回も出会いのすばらしさを痛感した。
9.8月1日(日)葉いもち分光計測
快晴が期待できるため、岩手県湯田町の葉いもち発生圃場に分光計測に行く。事前に現場を下見した小林さんが現場について唖然とする。刈り取った方が良いと思っていた発生圃場は見事によみがえり、穂ばらみ期に達していた。この好天と防除の徹底で研究材料は消え失せ、農家の笑顔が撲滅への執念を物語る。防除作業を邪魔しないように早々に退散する。
10.8月8日(日)モニター交流会
松山町・石巻市のモニター交流会が松山町で行われた。松山町のモニター4人と石巻の3人、本プロジェクトの推進リーダーの地域基盤研究部長、神田君と3人で参加する。モニターの自慢の水稲を観察しながら、栽培技術や経営などに関する意見交換を行う。 最上町のモニターから近況のメールが届く。「あきたこまちの出穂期は、8月2日でした。はえぬきは、8月6日に走り穂していました。出穂期は、8月9〜10日頃でしょうか? 葉いもち病は発病圃場が少ないですが、葉色が濃いところでは出ているようです。イネカラバエの被害が、例年より全体的に多いようです。畦畔近くがもっとも多いですが、全面の圃場も一部見られます。イナゴは、異常発生しています。好天で、成育がこれほど早いと・・・カメムシの発生も心配です。はえぬき等の、これから出穂する稲ですが・・・水不足になってきており潅漑水確保が問題になってきています。」
11.9月29日(水)早期警戒態勢の解除
早期警戒情報の第25号(早期警戒態勢の解除)を発信し、3日まで学会出張のため夏休みとさせていただく。日誌もこの間は休み、早期警戒システムのことを一時忘れることにしたい。亘理町の友人からお礼のメールが届く。「早速「まなむすめ」の栽培法に関する文献を送って頂けるとのことありがとうございます。来年の稲作の参考にさせていただきます。昨日で私の「ひとめぼれ」の出荷はすべて終わりました。早期警戒の監視を今週末で終了するとのことですが、今年も長期間ご苦労様でした。公開された有用な情報をたくさん活用させて頂きました。また、今回の私のお願いのような鳥越さんの本来の業務とは直接関係の無いような事柄にまできめ細かく対応して頂いたことに対して大変感謝しております。取り急ぎ、御礼まで。」
12.10月27日(水)収穫感謝祭・家畜慰霊祭
収穫感謝祭・家畜慰霊祭が行われる。開場記念日に次ぐ一大行事である。各部署において今シーズンの農作業活動に対する慰労会が開かれる。本年は豊作とはなったものの、高温障害、カメムシ、刈り遅れなどにより一等米比率が著しく低下した。高温障害は平成6年の経験から予測されたが、それに対する警戒を強く呼び掛けるには、説得力のある技術情報の充実が必要だ。監視を初めて6年を経過し、そのうちの2年高温障害を経験したことになり、かなりの頻度であったといえる。夜は関係者と慰労の酒を酌み交わす。
山口県の生産者から自己紹介のメールが届く。「自己紹介しておきます。間もなく定年を迎えようとしております。定年後は、自然と共にゆっくり、生きて行きたいと願っております。今までのサラリーマン生活があまりにも、流れが速かったもので、逆の生き方がしたくなりました。田圃は1ha、山林10ha、これらをうまい具合に管理、いえ付き合って行きたいと考えています。家族は長年連れ添った家内1人と、柴犬3匹です。今後とも、よろしくお付き合いのほどお願いいたします。」
13.11月28、29日(日、月)モニター意見交換会
早期警戒システムモニター意見交換会を午後から開く。心配された雪もなく、モニター11名は無事到着する。農試関係者10名を加え、モニターの農業経営の特徴、冷害回避技術も含めた稲作技術の特徴、本年度稲作の反省点などについて集中的に討議する。地域をリードするモニターだけあって、とても興味深い話を伺うことができた。場内の研究者にとっても色々な面で研究の刺激となった。夜は入手困難な各地の地酒がそろい、話の輪が広がる。
2000年の早期警戒の活動は、日誌にどのように記録されるのか?!
reigai@tnaes.affrc.go.jp