水稲冷害研究チーム

1996年宮城県技術情報

 なお,詳しい内容に関する問い合わせは宮城県にお願いいたします.

 稲作情報第4号(7月11日):

1.生育経過:平坦部では有効茎確保、幼穂形成期は2〜3日遅れの見込み
 農業センターと古川農試の圃場の生育は6月下旬の気温が平年並みに経過したことから、前回調査よりやや回復している。しかし、依然として生育の遅れが見られる。
 農業センターでは草丈は稚苗及び中苗とも前年並みからやや上回り、平年の90〜95%と回復した。茎数は、植え傷みのあった稚苗で、平年の70%とかなり下回っているが、中苗では平年の約85%と回復し、有効茎数は十分確保された。葉数は前年を上回っているものの、平年より0.3〜0.6枚少なく推移している。古川農試では、草丈は稚苗及び中苗とも前年を上回っており、中苗では平年をも上回るようになった。茎数は、全体では平年より少ないが、中苗のササニシキでは平年を上回る茎数を確保している。葉数は平年より0.6枚少ない稚苗のチヨホナミを除いて、平年並みからやや多めに推移している。
 生育調査圃における7月1日現在の生育は、各地帯ともに前回調査より生育の回復がみられる。草丈は、三陸沿岸地帯を除いて前年より長めとなったが、平年よりは各地帯とも短く、県平均では92%となっている。茎数は、平坦部、仙台湾沿岸でおおむね有効茎数を確保したものの、県平均では平年より約20%少ない。葉数は、県平均で前年並みとなったが平年より0.4枚少なく推移している。なお、移植時の葉数が少なかったこともあり、最終葉数(止葉)は平年より少なくなるものと予想される。
 農業センターの稚苗・中苗ササニシキの幼穂形成期は、水稲生育診断予測システムを利用した予測結果等によると、今後平年並みの気温で経過すると想定した場合、稚苗・中苗とも7月14日頃と予想され、平年より2〜3日程度遅れる見込みである。

2.窒素栄養
 農業センター・古川農試の田植後40日までのアンモニア態窒素の推移をみる。
 古川農試の残存窒素量は前・平年より多く、田植え後40日の平年差は拡大傾向となった。土壌窒素の残存量は稲の吸収や溶脱量と地力窒素発現量の差で決まることから、平年比の拡大は吸収停滞が主な要因と見られる。農業センターは前・平年の半分程度で横這い傾向であるが、平均差はやや縮小している。
 田植え後30〜40日頃の地点別土壌アンモニア態窒素の推移をみると、6月20日(田植後40日頃)における土壌中窒素残量の全平均は約3.9mg/100gであり、6月10日から約0.5mg低下しているが、平年の約5割り増しとなった。
 6月10日から20日にかけての低下量が大きい地点は小野田、築館の側条施肥と角田(全層)であり、その他の地点は低下量が著しく小さく、全層施肥の場合は多くの地点で横這い傾向と見られる。この期間の気象要素は依然として前5ヶ年を下回る経過であり、稲の乾物重増加も停滞傾向であることから、土壌窒素の平年比拡大は吸収抑制が主な原因と考えられる。
 農業センター・古川農試の田植後40日までの稲体窒素栄養の推移をみる。
 田植後40日の稲体窒素栄養状態は両地点の乾物重が依然として停滞傾向にあり、平年比率はさらに低下し、抑制が強まる傾向にある。このため、稲体窒素濃度の平年比は両地点とも前回調査より約20ポイント高まり、窒素吸収量の平年比は農業センター44%、古川農試67%となっている。
 6月10日時点で乾物重が大幅に低かった本吉、河北、亘理の3地点は依然として停滞傾向にあり、特に河北は腐敗臭が強いことから還元障害も相乗していると見られる。
 低温では水管理や稲わら鋤込み等の栽培管理が生育に大きく影響するため、前回調査より地点間の差が大きくなっている。全体としての平年比は乾物重で約50%、稲体窒素濃度で115%、窒素吸収量で約60%程度である。
 しかし、田植後40日での乾物重の期待値(60g/u・指導指針)と比較すると、角田、南方、柴田など6地点ではほぼ期待値を確保していると見られる。

3.病害虫
 葉いもちの本田初発は6月12日に志波姫町で確認され、平年(6月9日)よりやや遅かった。その後6月17日から26日の巡回調査の結果、三陸沿岸と北部平坦地域の5地点でも発生が確認された。一方、アメダス資料による感染好適条件の推定では、6月15日から19日と21日から24日にかけて、いずれも広域的に準感染好適条件や感染可能条件が出現している。

4.これからの栽培管理の要点
−中干し後の水管理−
 〇 中干し後、急に湛水状態にすると根を傷めることがあるので、1〜3日間走り水とする。その後は間断かんがいを励行し、根の健康管理に努める。

−低温時の水管理−
 〇 7月の気温は平年並みと予想されている。平年でも幼穂形成期から減数分裂期にかけては、オホーツク海高気圧が強まり低温となることがあるので、幼穂形成期以降は、気象予報に留意し、低温時には必ず深水管理を励行すること。
 〇 幼穂形成期(幼穂長約1mm)前後の低温時には、幼穂の伸長にあわせ段階的に水深を5〜10cm程度確保する。
 〇 減数分裂期(幼穂長3〜12cm)の低温時には、穎花の50〜80%以上を保護できる17〜20cmの水深が必要である。この水深が確保できない場合でも水面上の気温は1〜2℃高まるので、可能な限り深水とする。

表 地帯別幼穂形成期、減数分裂期、出穂期の予想

山間高冷ヤマウタ幼穂形成期:7/16〜19
  減数分裂期:7/28〜31
  出穂期  :8/10〜13
 こころまち幼穂形成期:7/16〜19
  減数分裂期:7/28〜31
  出穂期  :8/10〜13
西部丘陵こころまち幼穂形成期:7/12〜17
  減数分裂期:7/26〜28
  出穂期  :8/ 6〜 9
 チヨホナミ幼穂形成期:7/13〜18
  減数分裂期:7/27〜29
  出穂期  :8/ 7〜10
 ササニシキ幼穂形成期:7/14〜17
 ひとめぼれ減数分裂期:7/26〜29
 サトホナミ出穂期  :8/ 8〜11
北部平坦ササニシキ幼穂形成期:7/13〜16
 ひとめぼれ減数分裂期:7/25〜28
 サトホナミ出穂期  :8/ 7〜10
南部平坦チヨホナミ幼穂形成期:7/11〜12
  減数分裂期:7/23〜26
  出穂期  :8/ 5〜 8
 ササニシキ幼穂形成期:7/12〜15
 ひとめぼれ減数分裂期:7/24〜27
 サトホナミ出穂期  :8/ 6〜 9
三陸沿岸こころまち幼穂形成期:7/14〜17
  減数分裂期:7/26〜29
  出穂期  :8/ 8〜11
 チヨホナミ幼穂形成期:7/15〜18
  減数分裂期:7/27〜30
  出穂期  :8/ 9〜12
 ササニシキ幼穂形成期:7/16〜19
 ひとめぼれ減数分裂期:7/28〜31
 サトホナミ出穂期  :8/10〜13
仙台湾沿岸チヨホナミ幼穂形成期:7/13〜15
  減数分裂期:7/25〜27
  出穂期  :8/ 7〜 9
 ササニシキ幼穂形成期:7/14〜16
 ひとめぼれ減数分裂期:7/26〜28
 サトホナミ出穂期  :8/ 8〜10
注)天候が7月上旬以降平年並みとして予測(予測時期:7月1日現在)

−穂肥は総合的な判断で−
 〇 稲わら施用田等は水管理を徹底し、根の健康保持に努め、穂肥は慎重に対応する。気象経過によっては穂肥の中止を考慮する。
 〇 穂肥等の追肥は、品種、土壌、施用量、生育量や葉色及び天候等を総合的に慎重に検討して上の表の生育予想、葉色指標値及び施用時期・量を参考にしながら時期や量を決める。
 本年の特徴としては乾物重が少なく、作土中のアンモニア態窒素の残量が多く、施肥窒素の消失時期は平年よりやや遅いと予想されること、葉色については低下傾向を示しているが、やや濃いめに経過している。
 〇 窒素以外の追肥は根の健全化にも役立つので基肥施用量や土壌条件等を考慮しながら施用する。
 〇 穂肥は一時的に稲体窒素濃度を高め、いもち病抵抗力を弱めるので防除を組み合わせる。

−葉いもち防除の徹底−
 〇 稲体窒素濃度が高く、いもち病に感染しやすくなっているので、防除は次の点に留意して行う。
 @ 本田で発生を確認したところでは、直ちに茎葉散布剤による防除を行う。
 A 復元田や地力の高い水田では、初発後急激に蔓延しやすいので注意する。

 
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