目次へ 最後へ
2.本年度の気象・作柄監視態勢
水稲冷害の早期警戒がいよいよ,5月1日から始まります.本年で3年目になります.今までの気象経過は予報によると1980年(大平洋側で著しい不作)に類似するようであり,気の抜けない監視態勢が求められる.本年の監視態勢は次の通りです.
1)気象監視
気象監視業務は4月が異常低温のため既に監視態勢に入っているが,5月1日から日別監視体制を昨年同様に進める.また,61アメダス地点の日別概況と気象経過図はホームページに公開する.更新は週単位.
2)生育・作柄予測
本年度から,アメダス旬別データを用いた61地点の作柄診断業務を新たに開始する.使用する収量予測モデルの概要は次の通り.
基礎とする冷害危険度地帯区分は市町村別収量(399市町村,東北6県作物統計),1972年〜1994年(生産調整後の23年間)のデータを用いて,クラスター分析(Ward法)による8分類(図1).
冷害危険度地帯別収量推定モデルは日照時間の測器が切り替わった1986年〜1994年間のアメダスの5月〜9月の旬別最高気温,最低気温および日照時間を使用する.なお,日照時間は回転式日照計の値に変換.本モデルは,アメダス地点の水稲収量を推定するための比較的精度の高い重回帰モデルである.(表1)
このモデルを用いると,昨年度の作柄における気象3要素が収量の増減に及ぼす影響を数量的に評価できる(図2).また,平均的気象データをデフォルトとして,1995年と1993年における旬経過に伴う収量の概況を把握でき,また平均的収量(対象期間の最低・最高収量を除いた平均値)に対する作柄指数で動向を追跡できる(図3).
留意点は過去のデータに基づく統計モデルであるため,現行の生育調査と照合して利用するのが基本.この情報は早期警戒システムWGの1つの参考情報として位置づけ,他の情報とも照らして作柄を診断する予定です.
目次へ 最後へ
3.3ヶ月予報(5月〜7月)
仙台管区気象台は4月18日に5月〜7月までの3ヶ月の予報を発表しました.予報の内容をまとめて解説すると次のようになります.
1)予想される天候
5月は,高気圧や低気圧が交互に通り,天気は周期的に変わるでしょう.6月から7月は前線や低気圧の影響を受けやすく,曇りや雨の日が多い見込みです.この期間の平均気温は平年並みでしょう.降水量は平年並みの見込みです.
5月:天気は周期的に変わりますが,高気圧に覆われて晴れに日が多いでしょう
気温・降水量共に平年並みの見込みです.
6月:梅雨前線や低気圧の影響で,曇りや雨の日が多いでしょう.
気温・降水量は共に平年並みの見込みです.
7月:梅雨前線や低気圧の影響で,曇りや雨の日が多いでしょう.
気温・降水量は共に平年並みの見込みです.
2)予想される大気の流れ
・極東東西指数:極東域における偏西風蛇行の指標は4〜5ヶ月周期で低指数が現れていることから,7〜8月が次の低極とみる.すなわち,南北流型となり,熱の南北交換(南から北に暖気が運ばれ,北から南に寒気が運ばれる)が大きく,低気圧や高気圧の動きは遅くなります.低気圧が発達し,荒れた天気が生じやすくなります.
・東方海上高度指数:日本の東海上の高度の指標は5,7月が負偏差,6月が正偏差と予想されています.負偏差は東海上に寒気が南下しやすいことを意味します.この指標は北日本の気温との対応がよいといわれます.
・北緯30度西谷指数:日本付近30度の気圧の谷の指標は3ヶ月周期から西谷は3月〜4月,次は6〜7月と予想されています.
3)予報期間内の類似年と参考年
類似年:1980年と1965年.
参考年:5月は1988年,6月は1972年,7月は1957,1980年.
4)前回3ヶ月予報からの変更点
なし.
この予報の内容で気になるのは,類似年に1980年と1965年が挙げられている点です.1980年は東北の作況指数が78の平成5年に次ぐ大冷害であった年です.また,1965年は盛夏が短く冷夏であった年です.
また,大気の流れの予想では,偏西風は南北流型で,西谷となり北から寒気が流入する可能性もあることを指摘しています.
もし,6月に大平洋高気圧が張り出し暑くなりようですと,7月の天候に十分注意する必要があるようです.
目次へ 最後へ
4.エルニーニョ現象と東北の夏(図説 東北の冷害)
エルニーニョ現象は長期予報で注目される大気と海洋の運動の一つのものです.
ペルー沖合(図4のNINO.1+2)の海面水温は9月に最も低く,クリスマスの頃から急上昇し,3月に最も高くなります.この海面水温が上昇する現象を現地の人はエル・ニーニョと呼んでいます.この言葉はスペイン語で'El Nino'と書き,神の子イエス・キリストを意味します.この名前の由来は,海面水温上昇がちょうどクリスマス前後に発生することの他,おりからの降水によりバナナやココナッツが収穫期を迎えるなどの天の恵みに対して感謝の意味を込めたものといわれています.しかし時としてこの高温状態が3月以上も続き,かたくちいわし漁が不漁となり,地元の漁民の間では一種の天災と恐れられています.
気象庁では図4のNINO.3(北緯4度〜南緯4度,西経150度〜90度)を監視海域とし,「この海域の月平均海面温度の5ヶ月移動平均が摂氏+0.5度以上の月が,6ヶ月程度継続した場合」をエルニーニョ現象と定義しています.(以上仙台管区気象台技術部予報課調査係「長期予報の解説資料 第2版−長期予報で使用する用語の解説−,1995年6月による)
このエルニーニョが発生中の東北地方の夏期の平均気温の平年偏差は図5に示す通りです.
1951年から夏期に同現象が発生した年は通算14年です.
6月では,14年のうち,平年より低いのが6年,並みが5年,高いが3年です.
7月では,同様に,平年より低いが5年,並みが7年,高いが2年です.
8月では,同様に,平年より低いが8年,並みが5年,高いが1年です.
このように,エルニーニョ発生中における東北地方の夏期平均気温は並みから低いの傾向が読みとれます.
なお,1996年4月末現在エルニーニョは発生していません.
目次へ
ホームへ
前号
次号
戻る
ご意見どうぞ