東北農業試験場

水稲冷害研究チーム通信

No.14

1996年5月13日


目次

  1. 早期警戒情報
  2. 1ヶ月予報(5月10日発表)
  3. 図説東北の冷害(冷温障害)
  4. ホームページ案内
  5. こぶしの花が咲かない
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1.早期警戒情報(5月7日,第2号)
 チームのホームページ(http://ss.tnaes.affrc.go.jp)のなかに「早期警戒情報」の項目を新たに設けました。
 ここでは警戒担当者が水稲の安定生産の視点から,現在心配している事項を掲示しています。
 皆様も体感されるように,5月3日頃から気温が急激に低下し,13日現在平均気温で3〜5度,最高気温で4〜7度,最低気温で1〜3度程度低く,さらに日照時間は2〜5時間程度少ない傾向が続いています。
 仙台管区気象台が5月10日発表に発表した1ヶ月予報によると,まだ数日は寒気の影響で気温の低い状態が続くと予想されています。連休以降,各地で田植えが始まり,苗の活着不良等が心配されています。
 このような状態ですので,5月7日付けで次のような警戒情報を出しましたので紹介します。
 
早期警戒情報(1996年5月7日)
 

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2.1ヶ月予報
 仙台管区気象台は5月18日に5月11日〜6月10日までの1ヶ月の予報を発表しました.予報の内容をまとめて解説すると次のようになります.

 向こう1ヶ月の平均気温,降水量及び日照時間の各階級の予想される確率は次の通りです。

[確率]
--------------------------------------------------------------------------------
 要 素   予報対象地域    低い(少ない) 平年並み  高い(多い)
--------------------------------------------------------------------------------
 気 温    東北全域       40     30     30
--------------------------------------------------------------------------------
 降水量    東北全域       40     30     30
--------------------------------------------------------------------------------
 日照時間   東北日本海側     30     30     40
        東北大平洋側     30     40     30
--------------------------------------------------------------------------------

[概況]
 向こう1ヶ月の平均気温は低い可能性が大きい見込みです。
 降水量は少ない可能性が大きい見込みです。
 日照時間は日本海側では多く,大平洋側では平年並みの可能性が大きい見込みです。

[解説]
 向こう1ヶ月の平均500hPa予想天気図によると,日本付近は大陸で正偏差,日本の東海上で負偏差で弱いながら東谷傾向。このような循環場のときは,ときどき寒気が南下するものの天気は周期変化することが多い。期間の初めは日本海側では晴れの日が多く,大平洋側では曇りの日が多い。その後は低気圧と高気圧が交互に通り,天気は周期的に変わる見込み。
 また,期間の前半を中心に遅霜の恐れがあるので注意が必要である。

<5月11日〜5月17日>:
 日本海側は晴れの日が多く,大平洋側は曇りの日が多い。気温の低い日が多い見込み。(詳細は週間天気予報を参照)

<5月18日〜5月24日>:
 予報の信頼度は小さい。高気圧に覆われて晴れの日が多い。
 平均気温は平年並みの見込み。

<5月24日〜6月7日>:
 予報の信頼度は小さい。低気圧と高気圧が交互に通り,天気は周期的に変わる。
 平均気温は平年並みの見込み。

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3.図説東北の冷害:イネの冷温障害の種類
要約:冷温障害は生育各時期で様々であり,それを理解することが対策技術を考える上で重要である.

 イネの冷害は通常,障害型と遅延型の2つに大別されているが,この分類法は多くの人々によって多少ニュアンスの異にして利用されている.冷害の被害を大まかに分類する方法としては有効であるが,発生した冷害を解析し,対策を考える上ではやや不十分である.
 冷温障害は生育の各時期にいろいろな形で現れる.その障害のメカニズムもそれぞれ異なる.したがって,冷温に遭遇した生育時期とその症状を記録することが,冷温障害ないし冷害の原因を的確に把握する上で有効である.たとえば,穂ばらみ期の冷温による不受精とか,登熟期の冷温による登熟不良のように表現するのが適切である.
 普通,障害型の冷害と呼ばれているものの原因は,穂ばらみ期の冷温による不受精と開花期の冷温による不受精とであると考えてよい.しかし,この2つの時期の冷温は,同じ不受精とはいえ,そこにいたる生理学的なメカニズムは全く異なる.
 また,遅延型冷害は,結局のところ登熟不良となるので登熟不良型冷害といえるが,その原因はほとんどあらゆる生育時期に考えられる.融雪遅延による苗代の遅れが原因となることもあれば,穂ばらみ期の冷温による出穂遅延,さらに出穂期,開花期まで順調でも秋冷が早く訪れて登熟が悪くなることもある.これらの3つの例によってもわかるように,3者は対策を考える上で顕著に異なる.
 以上の観点から,西山(1985)は冷害の原因になる冷温障害およびその他の要因を表1のようにまとめている.
 (西山岩男著「イネの冷害生理学」(1985)頁8〜10より引用)

参照:冷害の型
 
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4.ホームページ案内
 田植えもいよいよ各地で始まり,本年の稲作もいよいよ始動です。ページの項目も少しずつ増えてきました。新しい項目についてご案内します。
1)早期警戒情報(前出)
2)水稲冷害研究チーム通信
 この通信が掲載されています。図表はカラーですので,見やすくなっています。
3)早期警戒地点の気象経過
 1996年(平成8年度)の項目に,61アメダス地点の気象経過が掲載されました。現在5月11日までの情報です。今後,10日毎に更新します。各地の気象経過等をみたい方は利用下さい。
4)早期経過地点の水温経過
 水温測定は現在15地点で実施されています。本年度は5月10日から始まる予定です。
 現在,1994年(平成6年度)の情報が掲載されています。
5)意見交換の広場
 ホームページ愛読者の方々から意見をいただく項目です。要望等がありましたら,遠慮なく送信して下さい。

 なお,ホームページの構築と管理は研究技術情報科の神田さんが担当しています。記事が多くて困ると嘆いていますが,土日を返上して頑張ってくれています。
 また,ページの随所にきれいなアイコンがありますが,これは牧草育種研究室の米丸さんが作成しています。
 両名のボランティア精神に感謝しています。

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5.こぶしの花が咲かない
 こぶしの花が咲かないという記事が目についた.内容はホームページの稲作動向にあるが,再掲示すると次の通りです.

○4月30日:コブシの花が咲かない!?
 北国の春に異変が起こっている.岩手県胆沢では,コブシが咲く気配がない.低温による開花の遅ればかりではなく,花芽が着いていない木もあり,早春の風物詩から”コブシ咲くあの丘”が消えそうだ.コブシは胆沢地方では「種まき桜」ともいわれて農作業の目安とされ,農家に親しまれている高木で,例年なら桜の開花より早く4月20頃には純白の花を着ける.ところが,今年は開花はまだだ.岩手県緑化センターの調査では,同センター内の開花は例年なら4月中旬から下旬で,昨年は4月24日が満開だった.今年は拳の形に似ているともいわれるつぼみも見えない状態だ.宮城県林業試験場(大衡村)内のコブシも,花は咲いていない.(日本農業新聞より)

 私は信州で学生時代を過ごしたころから,こぶしの花が好きになり,例年その開花を注意してみるのが習慣となっている.しかし,今年はこぶしの花が目に付かないことに疑問をもっていた.事実,私の住む官舎周辺にあるこぶしの木は例年沢山の花を咲かせていたが,本年は数えられるくらいしか花を咲かせていない.このこぶしの花が咲かない現象と冷害との関係はあるのかと,古い文献を調べてみた.奥田穣著「日本の冷害」を何気なくめくっていたら,第1章冷害の実相で,宮沢賢治の「グスコーブドリの伝記」の数節が引用され,冷害の悲惨さを訴える文章が飛び込んできた.折から,岩手県では宮沢賢治生誕百年を迎えて,生地花巻市を中心に記念の行事が盛り沢山組まれている.
 その一節は次の通り.
 「グスコーブドリはイーハトーウ”の大きな森に生まれ,妹のネリと楽しく暮らしていた.そして,ブドリが十歳になり,ネリが七つになったとき凶冷がやってきた.その年は,お日さまが春から変に白くて,いつもなら雪がとけると間もなく,まっしろな花をつけるこぶしの木もまるで咲かず,五月になってもたびたび霙がぐしゃぐしゃ降り,七月の末になっても一向に暑さが来ないために,去年播いた麦も粒の入らない白い穂しかできず,大抵の果実も,花が咲いただけで落ちてしまったのでした.その秋と冬はどうやら過ぎたが,翌年も全く同じことであったから,秋には本当の飢饉になってしまった.」

 意外なところで,こぶしの花が咲かなかった時に,冷害が来たという記述を見出した.
 私は,今冷害が来るか来ないかを心配するのが一つの仕事であるが,この賢治の記述は私の不安を募らせるものとなった.
 
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