水稲冷害研究チーム

1998年編集長日誌


この日誌は早期警戒システムの舞台裏を記録するものです。


10月


 
−−−−−−−−−   上旬   −−−−−−−−−


○10月1日(木) 
・ 台風9号から変化した低気圧が東北地方を通過し、全般に天気はぐずつく。各地でかなりの強雨がある。刈り取りがさらに遅れる。
・ 北海道の東海上に低気圧の大きな渦が形成され始めた。今後の大気の動きに影響を与えるか。
・ 9月下旬の気象表をまとめる。地帯別平均値でみた場合、平均気温は平年に比べて3〜4.2度高く、日照は平年比4〜6割程度しかなかった。
・ 温度勾配温室における登熟期の温度処理を終える。
・ 宮城県亘理の友人から、9月27日に無事収穫を終えたとのメールが届く。収量は昨年より少なく、粒張りが今ひとつであるが、品質は良好だとのこと。
・ 山形県鶴岡の友人から、現在収穫作業中だとのメールが届く。作況では平年作といわれているが、調整を終えてみないとどの程度の作柄か今のところ分からないとのことだ。


○10月2日(金) 
・ 低気圧が東北北部を通過し、北部はぐずつくが、南部から天気は回復する。収穫作業が土日に急速に進むものと期待される。
・ 青森県十和田周辺の「むつほまれ」が成熟期に達したとみられる。
・ 場3役による研究ヒアリングが行われる。プロジェクト研究は平成12年で終了するため、将来の早期警戒システムの開発と運用について検討いただくようお願いした。
・ 生育・作柄診断試験区の成熟期調査を行う。来週からいよいよ坪刈りに入る。
・ 宮城県石巻市のモニターから、収穫を終えたとのメールが届く。収量は期待していたよりやや少ない。
・ 明日は、場内電気系統の点検のため停電となるため、ネットワークは休止する。


○10月3日(土) 早期警戒情報第24号作成
○ 3日(土)
・ 移動性高気圧に覆われて、全般に天気は回復する。久しぶりの青空で稲刈りが急ピッチで進むものと思われる。
・ 早期警戒情報第24号をまとめる。一部地域を除いて、刈り取りのできる状態となっている。
・ 週間予報や支援図によると、後半には強い寒気の南下が予想されている。
・ 本日は停電となり、ネットワークは使用できない。


○10月4日(日) 
・ 寒冷前線が東北地方を通過し、北部を中心にぐずついた天候となる。
・ 朝方は北部を中心に冷え込み、気温は10度を下回る。
・ 昨日の停電のため監視地点の気象データが欠落する。


○10月5日(月) 
・ 移動性高気圧に覆われ、放射冷却で気温が2〜5度まで下がる。北海道では氷点下のアメダス地点も現れる。
・ メッシュ気温データに異常が発生。警戒メッシュの作成ができなくなる。修復と停電時のデータ補完を依頼する。
・ 配信サーバがトラブルを起こしており、復旧に時間がかかるとのこと。
・ 東北大学大型計算センターのNOAAデータの提供が9月末から停止している。
・ 生育・作柄試験区と水管理試験区の坪刈りを行う。籾の色が急激に白くなり始める。今日朝の低温のためか?他の圃場では、種籾用品種の刈り取りが始まる。刈り取り作業は今後順次進められる。
・ 松山町の航空機写真が3日に撮影されたとの連絡が入る。
・ 松山町のモニターから収穫作業の進捗状況についてメールが届く。収穫作業が遅れているようだ。また、石巻のモニターとの間で、メールで情報交換を始めたとのこと。このようなことが、東北全域で進むことを期待したい。


○10月6日(火) 生育・作柄診断試験区の坪刈り
・ 秋雨前線が北上を始め、天気は下り坂に向かう。北部を中心に移動性高気圧に覆われ、晴天が続く。
・ 生育・作柄診断試験区の坪刈りを行う。鎌で刈り取る感触とずっしりと重い稲株に感無量である。12品種、4反復の48試験区の刈り取りを無事終了する。
・ 気温メッシュシステムの復旧は明日になる見込みだ。


○10月7日(水) 
・ 秋雨前線が北上し、南部から天気は崩れる。
・ 水管理試験区の穂相調査用試料を採種する。
・ いよいよ大規模水田圃場でコンバインが稼働を始める。水管理試験区の刈り取りが始まる。収穫直後の籾の水分含有率は19.5%で、例年より乾燥しているようだ。
・ 気温メッシュシステムが午前中に復旧する。


○10月8日(木) 
・ 低気圧が東北北部を通過し、北部を中心に強い雨がある。収穫作業はこの雨でまた遅れる。北部太平洋沿岸では100ミリ前後の降雨となる。
・ 水管理区の収穫籾重(各区約12a)は、慣行水管理区 660kg、前歴深水管理区 650kg、危険期深水管理区 700kg、前歴+危険期深水管理区 700kgとなる。水分含有率は 19.5%。追肥を行わなかったため、収量レベルは低いものと思われる。


○10月9日(金) 
・ 寒冷前線は通過し、大陸からの移動性高気圧に広く覆われ、天気は回復する。
・ 中国大陸に低気圧に伴う大きな雲の塊が形成され始める。今後の天候に影響しなければ良いが。
・ 岩手県北「たかねみのり」、青森県八戸の「むつほまれ」が成熟期に達したとみられる。成熟期に達していないのは、地帯8の太平洋側の監視地点だけとなる。
・ 生育・作柄診断試験区の「コシヒカリ」が成熟期に達した。


○10月10日(土) 早期警戒情報第25号
・ 寒気を伴った気圧の谷が北部を通過し、日本海側を中心に天気がぐずつく。
・ 早期警戒情報第25号を作成する。全般に刈り遅れが心配されるなか、好天は続かない。また、地帯8の一部は登熟が遅れているものと思われる。秋冷が本格化しないのが幸いする。
・ ネットワークが外部と接続できない。トラブルが発生したようだ。


 
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○10月11日(日) 
・ 移動性高気圧に覆われ、各地で快晴となる。
・ 台風10号が発生する。


○10月12日(月) 
・ 移動性高気圧に覆われ、好天が続く。刈り取りが進むことが期待される。
・ 水管理試験区の穂相調査を終える。
・ 水管理試験区の籾すりが始まる。予想以上に屑米が少ないようで安心した。


○10月13日(火) 
・ 移動性高気圧に覆われ、好天が続く。
・ 中国のJICA研修員が来場する。東北6県の基幹品種の実物をみていただき、今年の稲作の概況を紹介する。育種が専門とのこと。
・ 宮城県農業センターと、15,16日の研究会について打ち合わせる。


○10月14日(水) 
・ 高気圧が東に去り、低気圧が接近する。南部から雨が降り始める。また、大型の台風10号が北上しつつある。週末には影響がでる可能性もある。
・ 岩手県北・沿岸の「たかねみのり」、三沢周辺の「むつほまれ」が成熟期に達したものとみられる。
・ 福島県で実施した穂いもち発生広域評価航空機MSS実験のデータが届く。高品質のデータが計測でき、今後の解析が楽しみである。


○10月15日(木) 東北地域リモートセンシング技術研究会
・ 寒冷前線が南下し、これが台風10号に刺激されて降雨となる。所によっては強い雨が降る。
・ 地域総合と地域基幹研究プロジェクトの東北地域リモートセンシング技術研究会が山形県村山市で行われる。山形県におけるリモートセンシング技術の活用事例を勉強する。


○10月16日(金) 東北地域リモートセンシング技術研究会
・ 村山市において現地研修会が行われ、モーターパラグライダーによる空撮技術、透過センサーによる野菜・果樹の選果システム、カントリーエレベータ、大豆の集団転作などを視察する。

○10月17日(土) 
・ 台風10号が九州地方に接近する。明日以降、東北地方にも影響を及ぼす可能性が高くなった。
・ 宮城県松山町のモニターから、収穫作業は最終段階にあるとのメールが届く。


○10月18日(日) 早期警戒態勢解除
・台風10号が東北日本海沿岸を北上し、荒天となる。
・ 本日で早期警戒態勢を解除する。本年は不順な天候にもかかわらず、どうにか無事出来秋を迎えることができた。一部には不稔障害の発生、集中豪雨や台風の被害、日照不足と倒伏による品質低下などもあった。今後はこれら被害の原因解明を行い、来年に向けて準備する必要がある。とわいえ、無事に監視業務が終わり、緊張を解くことができた。


○10月19日(月) 
・ 情報提供頂いた友人・モニターに早期警戒態勢解除の報告とお礼のメールを出す。
・ 宮城県亘理町の友人から、次のようなメールの返信が届く。
「今年も長期にわたる警戒業務ご苦労様でした。今年は天候の変化が極端で、平成5年と同様、品種の違いによる稲の特性の違いを実感した年でもありました。収量の方はいま一つでしたが、来年の稲作への反省材料にしようと思っています。」
・ 宮城県の各農業改良普及センターから生育診断圃場の稲穂が届く。


○10月20日(火) 
・ 寒気が南下し、日本海側を中心にしぐれる。いよいよ冬の到来が近い。
・ 岩手山に初冠雪が観測された。平年より9日遅いという。
・ 松山町の航空機写真が品質評価の結果、良好であるとの連絡が入る。
・ 国立環境研究所で大気の移動を予測する仕事をされている研究者から、「最近のやませの吹走期間」について問い合わせのメールが届く。


 
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○10月21日(水) 
・ 国立環境研究所の研究者から、「やませ」吹走期間の情報に対する次のようなお礼のメールが届く。
「早速願いをお聞き届けいただき、誠にありがとうございました。小生の使用しているシステムはECMWFの全球気象解析データベースを用いて、任意の観測地点に到達する気塊の移動経路を任意の日時まで遡ってもとめることができます。これを用いてCO2などの観測値の異常値などの因果関係の解明にあたっております。今回、お送りいただいた山背のデータは岩手県の高校教員の環境研での教材として使わせていただきますが、山背の日時と矛盾しない結果が得られれば、本システムの検証にもなりますので楽しみにしております。まずはお礼まで!」


○10月22日(木) 
・ 生物系特定産業技術研究推進機構の21世紀型農業機械等緊急開発・実用化事業のプレシジョンファーミング技術研究会が大宮で開催され、委員を委嘱され参加する。事業計画の内容を聞くと、今でも我々の研究に利用したいような機械や装置が多くある。今後の開発の進展が楽しみである。
・ 新幹線の車窓からみると、岩手県と福島県では最後の収穫作業が進められている。宮城県はほとんど収穫を終えている。
・宮城県石巻のモニターから、次のようなメールが届く。
「早期警戒態勢の解除 ご苦労様でした。これからは、ストーブリーグへの突入となりますが、こたつに入りながら、水稲、イネ、こめ等をじっくり考えてみたいと思います。これらのテーマで検索できるシステムがあれば秋の夜長を過ごせそうです。忙しかった今年の稲作りの総決算をしていませんので、ぼちぼちと気づいたことを連絡したいと思います。
今朝は大変に冷えました。風邪には気をつけてがんばってください!!」


○10月23日(金) 
・ アメダス気象情報監視システムについて、本年度の開発計画を策定する。次年度から葉いもち感染好適条件区分を1キロメッシュ情報で作成し、ホームページで提供できる予定だ。
・ 岩手県農業研究センターから土壌計測に関する打ち合わせがある。岩手大学とも日程の調整を行う。
・ 山形県最上町の友人から、次のようなメールが届く。
「今年は、早春から異常気象の予報が出ており心配しておりましたが、不順な天候ながら何とか平年作に近い収量まで延びたのも、適切なご指導のおかげだと思い感謝しております。 刈り取り時期の悪天候で、予定よりかなり遅れてしまいました。加えて、一部計画出荷の自然乾燥米が有りそれも原因しました。大半を占める、あきたこまちの減農薬米(マイルド栽培米)の方は順調な刈り取りだったのですが・・・。
 来年は、各県発表の各種予報がアメダス並(難しいでしょうが)にリアルタイムで載せられる様に関係機関のリンクを強化してほしい。データが、クリップファイル等で届けば打ち込み無しで済みHPシスオペの負担が少なくなるのでは?といつも思っているのですが。
来年も、よろしくお願いします。」


○10月24日(土) 
・ 松山町のモニターから、収穫作業が終わったとの次のようなメールが届く。
「今日ほぼ終了しました。蔵の華を1998袋出荷するだけです。平均収量はあの蔵の華が思いもがけず取れまして約9俵は取れまして、平均8俵は超えそうです。後は、天気次第で豆の収穫、麦の播種といくらか忙しい状況です。又冷害、監視、大変ご苦労様でした来年も宜しくご指導宜しくお願いします。」


○10月26日(月) 
・ 生育・作柄試験区と水管理区の脱穀を行い、粗玄米重を測定する。水管理試験では前歴+深水管理区の粗玄米重は他の区に比較して明らかに多い。粒厚分布等を調べれば、興味深い結果が得られそうだ。

○10月27日(火) 
・ この春に開催されたシステム農学会シンポジウム「東北稲作:冷害を克服するための課題と将来展望」の内容が学会誌に発表された。モニターの方々にお送りするため、住所を問い合わせる。
・ 昨日、農水省から10月15日現在の作況指数が公表される。予想通り、青森・岩手・福島の各県のやませ地帯での不作が明らかになる。
・ 生育・作柄試験区と水管理区の粒厚分布の調査を行う。
・ 実験以外の水田圃場の収穫・調整はすべて終了。


○10月28日(水) 収穫感謝祭・家畜慰霊祭
・ 本日、収穫感謝祭が行われた。今シーズンを振り返ると、感慨無量である。どうにか収穫の喜びを迎えることができた。
・ 宮城県松山町から採集した試料の脱穀と粒厚分布調査を行う。
・ 宮城県亘理の友人から、メールが次のような届く。
「学会誌に発表された論文のコピーをお送り頂けるとのこと、お心遣いありがとうございます。拝読するのを楽しみにしております。ただ、小生のような工学系の仕事をしている者にとっては、農学とりわけ作物関係は考慮すべきパラメータが星の数ほどあってモデル化するのが至難のように思えます。理解できるといいんですが- - -。」
・ 福島県いわきの友人から、次のようなメールが届く。
「今年の米の収穫量は例年とおりでしたが、雨の影響により、刈り取り時期により、明
暗を分けたようです。(14:00過ぎの通り雨も影響したかな?)それにより、コンバインの脱穀装置が詰り気味になって、無理やりやっつけたのが、現状です。いまだに、田んぼの排水が悪くぬかるんでいるため、刈り取りできない田んぼもたくさんあるようです。我が家では、今年は乾燥機の増設を行ったため、一気にやっつけたので何とかなりました。」
・ 山形県鶴岡の友人から、次のようなメールが届く。
「籾摺り作業も今日で終わりそうです。今年は、はえぬきとひとめぼれの作付けだったのですが、はえぬきは1等、ひとめは心白、腹白粒のため2等とはっきり分かれました。収量ははえぬき10俵、ひとめ9俵と言ったところです。しかし、台風の連続上陸や異常だった今年の天気を考えれば、上出来だったのかもしれません。今年もいろいろお世話になりましたが、無事収穫が終わりほっとしている所です。春から秋までほぼ毎日鳥越さんのチームのHPにアクセスさせて頂いています。常に内容が更新されていて、毎日見るのが楽しみです。来年もまたよろしくお願い致します。」


○10月29日(木) 
・ 松山町試料の粒厚分布を調査する。
・ 農林水産長期金融協会からリンクの依頼がある。
・ 生育・作柄診断試験区の収量がまとまる。本年度の収量は昨年に比較して、「あききたこまち」「おきにいり」「コシヒカリ」では増収したが、他の品種は減収となった。「コシヒカリ」は昨年障害不稔と成熟未達のため低収であったが、本年度は成熟を完了したため大幅な増収となった。「コシヒカリ」を除く11品種の前年比率を平均すると、97%程度となる。

















生育・作柄診断試験区の収量(g/平方メートル)
品種名 1998年 1997年 前年比(%)
かけはし 481 506 95
むつほまれ 526
つがるロマン 526 569 92
あきたこまち 542 512 106
じょうでき 573
ゆめさんさ 541 573 94
どまんなか 527 566 93
おきにいり 591 579 102
ひとめぼれ 565 588 96
ササニシキ 591 618 96
はえぬき 494 514 96
コシヒカリ 507 405 125








注)刈り取り面積は各区3.3平方メートル。収量は4反復の平均値。篩い1.9mm以上、水分15%。


○10月30日(金) 東北地域総合研究推進会議
・ 東北地域総合研究推進会議は、当場の総合研究推進のために東北農政局、管内6県の行政と試験研究の代表者から意見・指導等を頂くものである。本年度は、第4チームが推進する「早期警戒システムを基幹とする冷害克服型営農技術の確立(平成8〜12年)」の推進方向に関する検討も行われた。


○10月31日(土) 
・ システム農学会との共催シンポジウム「東北稲作:冷害を克服するための課題と将来展望」の内容が学会誌に発表された。モニターの方々に発表論文のコピーをお送りする。



 

 

torigoe@tnaes.affrc.go.jp