水稲冷害研究チーム

1999年編集長日誌


この日誌は早期警戒システムの舞台裏を記録するものです。


12月

上旬へ 中旬へ 下旬へ
 
−−−−−−−−−   上旬   −−−−−−−−−


○12月1日(水) 
・NOAAの海面水温平年偏差図(11月30日)によると、日本列島東海上と日本海の海面水温が平年より著しく高い領域には変化が認められない。一方、エルニーニョ監視海域は平年より海面水温が低い状態が続く。
・仙台管区気象台から11月の東北地方の天候(速報)がメールで届く。
・松山町モニターからお礼のメールが届く。
「おはようございます。交流会では大変世話になり有り難うございました。家に帰っても交流会の余韻が未だに残っていて妻に得意になって話をきかせております。今後これを出発点として互いの信頼と情報の輪が広がっていくことを願っています。我が家もこれから待望の苺の出荷が始まり活気がでてきます。また冬場は忙しいながらも落ち着ける時間がとれますので、パソコン操作や簿記等これまで先送りしてきたものを片付けていきたいと思っています。今後ともご指導を宜しくお願いいたします。また健康にご留意ください。」


○12月2日(木) 
・来週東北農政局で開催される東北地域水稲安定生産推進連絡協議会の資料を作成する。
・平成11年度農学情報機能部門研修講義のためつくば市へ移動。
・関東地域では麦の緑が鮮やかであり、刈り取り後の“ひこばえ”が大きく育ち枯れている。


○12月3日(金) 
・国立研究機関の研究者を対象とした平成11年度農業情報機能部門研修で「水稲冷害早期警戒システムの開発と展開」について講義する。家畜や林業関係者も参加。研修生からもプロジェクト終了後のシステムをどのように運営するのか、心配する声が数多くある。また、FAOがアフリカ地域を対象として干ばつの早期警戒システムを構築しようとしているという興味深い情報を教えていただけた。
・筑波は冬の青空が広がり、帰りの新幹線からは富士山のシルエットが見える。


○12月4日(土) 
・仙台管区気象台から秋の天候のまとめがメールで届く。
・アクセス件数が3,9000件を超す。


○12月5日(日) 
・NOAAの海面水温平年偏差図(4日)によると、日本列島東海上と日本海の海面水温が平年より著しく高い領域には変化が認められない。依然として著しく高い状態が夏から続く。


○12月6日(月) 
・仙台管区気象台から1か月予報の解説がメールで届く。
・仙台管区気象台から、長期予報の利活用をテーマにした世界気象機関の国際会議が来年1月にエジプトのカイロで開催されるので、その際「日本(気象庁)からの報告として、1か月予報の利用実態の例として『水稲冷害早期警戒システム』を紹介したい」との依頼があり、資料等の提供が依頼される。JICAや農業情報機能部門研修のテキストを参考までにお送りする。
・気象庁の国際会議で発表を予定されている方からメールが届く。
「世界気象機関の国際会議で「気象庁1月・季節予報とその応用」といった内容で報告をすることになっています。この中では、気象庁の1月予報等の予測手法や情報提供についてだけでなく、利用者の活用例を是非紹介したいと考えています。 東北における冷害の対策は日本の長期予報の原点とも言うべきもので、鳥越さんらの研究はそれに正面から取り組んだものとして注目しています。農業分野はあまり知識が無く、資料の協力をお願いした次第です。どうかご協力をお願いします。」
・農林水産技術情報協会から公開シンポ「新バイオマスエネルギーの生産と利用」の講演依頼が来る。内容は「利用可能なバイオマス資源の評価と環境保全」、昔の仕事に関係するものだ。


○12月7日(火) 生研機構「技術研究会」
・生物系特定産業技術研究推進機構(大宮市)の技術研究会(精密農業関連)に出席する。精密農業を支援する基盤的技術の開発が進められ、成果が期待される。これからはそれら技術をどのように現場で活かすかという問題に展開することになろう。
・石巻のモニターから図書購入の依頼が届く。
「河北新報12月5日付け読書,文化欄に「やませ気候に生きるー東北農業と生活の知恵」と題する東北農業試験場50周年記念事業刊行物の案内が掲載されていました。ぜひ読みたいので、購入したくお願いいたします。東北地方の冷害の記録とこれからの東北地方の発展に期待します。」
・最上町のモニターからメールが届く。
「おはようございます。ホームページのアクテブ度の向上と、閲覧者のコミュニケーションをはかるのに使えそうなFSWがでました。ご検討ください。一番良いのは、テレビ会議なのでしょうが・・・閲覧者のハード的な面ですぐとはいかないので、これなら手軽に使えそうな感じがします。これなら、警戒システムの変更なしで使えるのでは?
 12/3の編集長日記に、”研修生からもプロジェクト終了後のシステムをどのように運営するのか、心配する声が数多くある。”とありましたが確かに思います。一番の問題は、トラブル時の対応でしょうね!気象関係の受信にしてもしかり、アクセスが増えればなおさらでしょうか?ホームページの舞台裏を、先日かいま見て・・・大変だと再認識してきました。PC所有の農家も増え、毎日閲覧するユーザーも多く出てくると思います。プロジェクトだけで終わってほしくないと思っているのは、私だけでしょうか?」


○12月8日(水) 稲作検討会
・東北農政局で平成11年度の稲作の総括を行う「稲作検討会」が関係機関で行われる。本年度は高温障害、カメムシ被害の対策技術を中心に討議する。
・一般の方から、質問がメールで届く。高校生の方か?
「今、僕は学校で東北の稲作の課題というのを調べているのですが、資料を見てもあまり書いてありません。稲作をするうえで、なってはいけないものは何ですか?また、その対策方法を細かく教えてください。」
(出張先であるため、とりあえず次のように回答する)
 メールありがとうございます。ご質問の件ですが、「なってはいけないもの」の意味が把握しにくいのですが、私に対して質問されていることから、「水稲の冷害」についてお答えするのが適当かと思われます。
 稲作が南から北進し、東北地方においても稲が作れるようになったのも、昔の人たちの工夫と努力の結果です。しかし、東北地方は天候(特に気温)の季節的変化の特徴から、稲を作ることのできる日数が南の地方より少ないのです。それゆえ、田植えをしてから収穫するまでの間に気温の低い状態が続くと、生育が遅れ秋になっても収穫できないこともしばしばありました。また、稲の花粉が作られる時期に極端な低温が来ると、花粉の稔性(花粉の能力が失われること)がなくなり、稔らない現象が起きます。このような被害を「冷害」といいます。秋になっても収穫できないものを「遅延型冷害」、また花粉の能力が失われて稔らないものを「障害型冷害」とそれぞれいっています。東北地方の稲作は最近でも3,4年に一度の頻度で冷害の危険にさらされています。最近では平成5年(1993年)に百年に一度発生するかどうかの低温が水稲の冷害に最も危険な時期に襲ってきました。東北地方の米生産量がほぼ半分となり、被害総額は5,000億円に近いものとなりました。ご承知かもしれませんが、この冷害は社会的また経済的に大きな問題となり、海外から数百万トンの米を輸入しました。私も平成5年の秋には、日本の米が買えなく、外国産の米を長いこと食べました。
 この冷害を契機に、冷害になりそうな気象条件を監視し、冷害が予測されるときに迅速な対応をとるために、仙台管区気象台、東北農政局、東北6県と東北農業試験場は「水稲冷害早期警戒システム」を作る仕事を平成6年から始めました。このホームページは平成8年から運営しています。その目的は、冷害になりそうな気象と水稲の生育を常時監視し、(1)早期警戒関係者や農家の方々にそれらの情報を日々提供すること、また(2)一般の方々にも東北の稲作の現状を知っていただき、冷害時の混乱を最小限にとどめたい、という2つにあります。このようなことも、冷害を回避するためには大きな役割をもつものと思っています。
 対策方法は稲の作り方に関するものがいくつかあります。台風や水害など一般にいう気象災害の中でも冷害は基本にのっとった稲の作り方を行えば、被害をかなり防ぐことができます。東北地方といっても、冷害の出方に地域的な違いがあります。冷害の危険度の高いのは太平洋側の青森・岩手・宮城・福島の4県です。これは冷害の原因となる“やませ”の吹き方に起因します。(ホームページの「東北の稲作」(図説を参考にして下さい)
さて、代表的な対策方法は次の通りです。
1)低温に強い品種を植えること:特に障害型冷害に強い品種が育種によって作られています。それらを植えることで障害型冷害はかなり回避できます。皆さんがよく知っているものでは、「コシヒカリ」「ひとめぼれ」「はえぬき」などが強い品種です。
2)穂が発育する時期に田んぼの水を深くすること(深さ20cm程度):水の保温能力を活かして、稲の若い穂(花粉が作られる時期)を守ることで被害をかなり回避できます。気温と水温は数度違い、水温の方がふつう高くなります。1度の違いでも被害が大きく異なることを私たちは経験しています。
3)早くに成熟する品種を植えること:稲を作る期間(日数)が短いところでは、早く熟する稲を植えることが「遅延型冷害」を回避する上で重要です。
 以上が冷害を直接的に軽減する技術です(詳しくは。ホームページの「東北の稲作」(図説を参考にして下さい))。これら以外に、一つ一つの回避効果が数字で明解に示せないものがたくさんあります。たとえば、次のようなものがあります。
・田んぼの土を稲の生育に適するように改良する技術
・強い苗を作る技術
・稲を冷害に強くする肥料・水のやり方
・冷害時に多発生するいもち病の防除
 まだたくさんありますが、冷害を回避するのが上手な農家は、毎日毎日田んぼの稲の姿、田んぼの水温、天候の推移、お日様のでかたなどを肌身で感じつつ、上の技術対策をどうのように行うか、これら情報を基に慎重にまた総合的に判断しているのです。その判断の仕方や使う情報の種類を特定し、その科学的根拠を明らかにすることはなかなか難しいと私は日々感じています。
 以上長くなりましたが、ご質問に対する回答となるかやや心配ですが、ご返事いたします。
 なお、分からないことやさらにご質問があれば、遠慮なくメールを下さい。



○12月9日(木) 東北地域水稲安定生産推進連絡協議会
・東北農政局で東北地域水稲安定生産推進連絡協議会が開かれる。早期警戒システムのプロジェクト研究が来年度で終了するため、13年度からの早期警戒システムの運営に関する協議を行う。運営を継続することを前提に本年度中に一定の方向を出すため、運営方法や予算について自由に討論を行う。
・NOAAの海面水温平年偏差図(7日)によると、日本列島東海上にある水温が平年より著しく高い領域の面積にやや変化が現れる。今後の動きを注視する必要がある。


○12月10日(金) 
・宮城県農業センターの早期警戒関係者から、昨日報告した高温障害解析メッシュ図の提供依頼がある。利用して頂けるなら喜んでご提供する。
・仙台管区気象台から1か月予報の解説がメールで届く。昨日の会議で、来年夏の天候の予想を質問され、大変驚かれたものと拝察する。


 
−−−−−−−−−   中旬   −−−−−−−−−


○12月11日(土) 
・50周年記念出版物「やませ気候に生きる」をモニターの方々に発送する。

○12月12日(日) 
・NOAAの海面水温平年偏差図(11日)によると、日本列島東海上の海面水温が平年より著しく高い領域の面積と温度偏差は少しずつ小さくなり始める。


○12月13日(月) 
・アメダス監視システムにトラブル発生。配信先に復旧を依頼する。
・水管理試験区の穂相調査を行う。


○12月14日(火) 
・アメダス監視システムが復旧する。
・水管理試験区の穂相調査を行う。
・17日開催される『平成11年度東北地域試験研究機関農業情報担当者会議』のための「水稲冷害早期警戒システムの開発と今後の課題」に関する資料を作成する。


○12月15日(水) 
・NOAAの海面水温平年偏差図(14日)によると、日本列島東海上の海面水温が平年より高い領域には11日のものに比較して変化は認められない。しかし、日本列島南海上の海面水温は平年より低くなる傾向が顕著となる。一方、太平洋赤道付近ではラ・ニーニャ的な傾向が依然と続いている。
・流通関係の新聞社から早期警戒システムの取材の依頼(20日)が来る。新年特集号で扱いたいとのことだ。


○12月16日(木) 岩手県農業気象協議会
・岩手県農業気象協議会が盛岡地方気象台で開かれる。本年度最後の締めくくりの総括会議である。やはり高温障害とカメムシ被害が話題の中心となる。会議終了後は新しくなった気象台の業務室を見学する。広い部屋の中央に岩手山の監視カメラの映像がいくつものディスプレーに表示されていた。
・最上町のモニターからメールが届く。
「「やませ気候に生きる」届きました。じっくりかみしめて、読ませていただきます。ありがとうございました。」
・鶴岡市のモニターからメールが届く。
「「ヤマセ天候に生きる」も本日届き、早速興味深く読ませて頂きました。ヤマセという言葉自体を知らない人でも理解できる程分かり易く解説されていて農業に関係ない人でも興味を持ちそうな本だと思いました。内容も悪いイメージの先行しがちなヤマセですが、別な面から見れば人々の役に立っている事も分かりました。またヤマセが東北の農業や生活に密接に関係し、そこにある東北農試の研究課題も地域の特徴を良く捕らえておられ、研究成果を地域に還元された冬季間のハウスでの播種法や寒ざらし野菜等は特に興味深く読みました。真に東北農試ホームページのダイジェスト版のようです。友達にも紹介しようと思います。
早いもので12月も半分過ぎてしまい、何とか年内に片付けておきたい仕事などはまだ沢山残っていていよいよ気忙しくなってきました。しかし、今年を反省し来年に向けた目標や計画をたてるこの時期は私にとって夢の膨らむ楽しい時期でもあります。夏の間は作物の管理や草刈に追われ自由になる時間もなかなか取れませんが、今は逆です。農業関係の資料を集めたり、ゆっくり資料を読み返し使えそうな物はパソコンに入れておきます。今は内容を要約しいちいち手で入力していますが、将来はスキャナーを入れて必要な部分をそっくり取っておける様にしようと思っています。技術情報などは時期ごとに毎年同じような内容が着ますので数年分を比較しながら見ると何か新しい発見がありそうな気がします。鳥越さんがはじめて家にこられた時に「パソコンは農具になっているか」と言う趣旨の質問をされたと思うのですが、私にとっては十分農具になっていると思います。使い始めると更に用途が広がってきます。ペンやノート、電卓の様に業種に関係なく必要な事務用品の感覚です。この様に鳥越さん始め東北農試の皆様やモニターの皆様にお会いできた事もパソコンがなかったら私には来ることのなった機会と思い、とても感謝しております。またこれからも宜しくお願い致します。寒い日が続きますが、風邪など引かないよう健康に気を付けて頑張ってください。」


○12月17日(金) 東北地域試験研究機関農業情報担当者会議
・東北地域試験研究機関農業情報担当者会議と東北情報化対策担当者会議に出席する。
・仙台管区気象台から1か月予報の解説がメールで届く。
・先日行った農水省研究機関研究者を対象とした「農学情報機能部門研修」講義の受講生からの所感が事務局から届く。「水稲冷害早期警戒システムの開発と発展」の苦労話を中心に2時間講義した受講生のコメントは次の通り。
○情報研究の一つの方向を見せてもらい勉強になった。モニターとのメールのやりとりから人とのつながりができていくところなど、インターネットのよいところをうまく活用していると思う。今後、北海道の直播支援システムに応用できたらと思う。
○行政、普及と一体となった事例を知ることができました。
○大変興味深く話を聞かせていただきました。特に関心をもったのは、システム自体よりはモニターの方々とインターネットを通じて様々な情報交換を行っているいう話であった。今後の農村、農家と試験研究機関を含めた行政との関わりについて考える上で大変興味深い話だと思えた。
○このようなシステムがWWW上で動いている事実に驚きを禁じ得ない。チーム長のご努力に敬服します。
○使ってもらえるシステムを開発し、かつ維持し続けていることに感心しました。それだけにこのシステムの存続が問題となっているのが残念です。研究の出口のありようの難しさを感じました。情報提供の方法や現地のつながり方として参考になりました。
○システムの実際をインターネット上で見せていただき、その詳細さ便利性の良さに驚いた。せっかくここまで築き上げ、磨き上げたシステムであるが、今後どのように運営していくのかが問題ということで、何とか残していただきたいと思った。また研究者がどこまで関わっていくかを考えさせられた。
○得られた様々な情報をもとに警戒の予報業務を行うということであったが、業務を誰が行うのか難しいと思った。責任が伴う以上民間の機関に期待できないとすれば今後行政機関に必要な専門知識をもつスタッフを増やしていく必要があると思った。
○様々な情報から東北農業において重要な「冷害」「暑夏」に対し、早期に警戒するシステムについて学びました。研究と運用の両立、今後の農業試験研究機関について考えさせられる面もありました。
○具体的な素晴らしい成果を示していただき、われわれが目指すべき一つの方向をいう気がした。また、それに伴う現行の制約や苦労もよくわかり非常に参考になった。
○冷害についてリアルタイムの情報発信システムとして非常に充実しており、今後の発展が期待されるとともに、当方の業務にも参考にしてゆきたい。なお、類似のシステムで、FAOのGlobal Information and Early Warning System(GIEWS)というものがあります。ここでは地図をインデックスにデータを統合仕様として開発中と聞いています。(http://www.fao.or/GIEWS/)
○社会的な要求が大きくかつ影響を与えうる情報の発信の一方法として大変興味深い。研究と普及という観点からもおもしろい。
○農家・行政と研究が大変うまくかみ合っている例と思った。講師・研究者の努力に感心した。
・亘理町の友人からメールが届く。
「栽植密度に関する資料、他をお送り頂けるとのこと、ありがとうございます。目を通すのを楽しみにしております。モニター交流会は盛会だったようでなによりでした。現場の生の声に接することで得るものが多々あったのではないかと想像しています。さて、編集長日誌の中でも触れてありましたが、早期警戒システムに関するプロジェクト研究が終了するのに伴い、本ホームページも終了となるのでしょうか。本システムのように、生産者側と双方向での情報のやりとりをしているのは、知る限りでは極めて稀であり、出来れば存続させて欲しいものです。ただ、この場合には単に情報発信のためのハードウエアがあれば良いと言うのではなく、システムを運用する担当者に鳥越さんのような熱意があることが必須条件となります(本システムは鳥越さんの確固たる信念と熱意とによって支えられて来たと感じております)。盛岡はこれから寒さがいちだんと厳しくなるかと思いますが、どうぞご自愛ください。」



○12月18日(土) 
・水管理試験区の穂相調査のデータをまとめる。
・石巻市のモニターからメールが届く。
「本届きました。ありがとうございます。これからの寒い夜に、コタツに入りながら読みます。」


○12月19日(日) 
・意見交換の広場に次のような質問が届く。
「ある本に、障害型冷害の対策としては、水深を20cm前後に深くして、保温することだそうですが、遅延型冷害の対策としては、冷水のかかる時間と量を出来るだけ少なくすると書いてありました。なんだか、矛盾しているような気がするのですが、どういうことか教えてください。」
・<回答>
 メールありがとうございます。
 ご承知かも知れませんが、「障害型冷害」は稲の花粉が形成される時期(特に減数分裂期)に平均気温が20度以下の強い低温が来ると花粉が不稔となって起こるものです。遅延型冷害は稲の生育期間に低温が続き、秋になっても玄米が完全に実らなくて減収するものをいいます。障害型冷害を回避するのに最も効果があるのが深水管理です。適切な水管理をすると、水温は気温より数度高く推移します。したがって、茎の中で花粉が形成されつつある幼穂を水で保温するためには約20cm程度の水深が必要となります。この深水管理は花粉の形成される時期に限られた技術です。一方、遅延型冷害の対策で冷水のかかる時間と量をできるだけ少なくするのは、冷害の危険度が高く、灌漑水の水温が低い地域で特に重要です。穂のでる時期を遅らせないために、生育を促進する必要があります。田んぼの水温は日射エネルギーによって決まりますので、昼間に水温を高めるように早朝あるいは夕方に水を入れ、昼間は水を入れないようにします。そのような水管理をすると、生育の遅れが少なくてすみます。詳しくはホームページの「東北の稲作」−「図説:東北の稲作と冷害」−「水管理」を参考にして下さい。
・NOAAの海面水温平年偏差図(18日)によると、日本列島東海上の海面水温が平年より高い海域には大きな変化は認められない。


○12月20日(月) 
・米の流通関係の新聞社による「水稲冷害早期警戒システム」の取材がある。新春特集号で紹介して頂けるとのことだ。
・仙台管区気象台から3か月予報の解説がメールで届く。気温は平年並みから高い確率が合わせて80%を占める。ラニーニャ現象はこの冬いっぱい続く予想となっている。
・アメダス監視システムの問題点を精査する。次年度に向けてシステムの改良を行うことにする。


 
−−−−−−−−−   下旬   −−−−−−−−−


○12月21日(火) 
・アメダス監視システムの改良に向けて、データ配信先と打ち合わせを行う。
・季節予報に基づく冷害回避技術の選択とその経営的効果について検討を始める。この問題は仙台管区気象台の予報官からの宿題でもある。


○12月22日(水) 
・NOAAの海面水温平年偏差図(21日)によると、日本列島東海上の海面水温が平年より高い海域には大きな変化は認められない。
・仙台管区気象台の予報官から、冷害危険度を考慮した季節予報の利用法に関するモデル案が届く。興味深いものなので、協力して妥当で適正な利用法が提案できるように考えたい。
・水管理試験区の穂相調査を実施する。


○12月23日(木) 
・季節予報の利用法に関するモデルの検討を行う。深水管理の対策を行うかどうかの意思決定に1か月予報がどのように利用できるかを例にする。深水管理を実施することによる余分な経費がどの程度かかるかが一つのポイントとなるため、モニターの方々に生産現場の意見を伺うことにする。

○12月24日(金) 
・岩出山町と鶴岡のモニターから深水管理に要する経費の試算が届く。畦畔の補修、畦畔の維持管理のための草刈りなど、水管理に要する労力、深水するための利用者間の調整などが余分に係る経費と指摘する。これらに要する経費を積算するとかなりの額になるとも推定される。
・西暦2000年問題に係わる連絡体制と対応措置について場から文書が届く。大晦日〜正月にかけて研究室で待機することにする。
・仙台管区気象台から1か月予報の解説がメールで届く。


○12月25日(土) 
・日本海にある低気圧が急激に発達し、盛岡では午前中雪となりホワイトクリスマスを迎える。雪は午後からみぞれと変わり、雪は融け始める。
・季節予報の利用法を検討するにあたり、冷害危険度地帯別被害量の推定手法を検討する。
・暖候期予報と3か月予報の確率予報に基づく警戒手順のモデルを作成する。
・松山町のモニターから深水管理に要する経費と労力について回答が届く。水管理と連動して追肥時期と施用量の判定が管理上重要なポイントとなることが指摘されている。


○12月26日(日) 
・「冷害危険度を考慮した季節予報の利用」と「耐冷性の弱い品種を冷害対策のとりやすい圃場に作付ける場合に季節予報の利用」に関するコスト/ロスモデル(案)を作成する。これらを仙台管区気象台の予報官にメールで送り、検討を依頼する。
・総アクセス数が待望の40,000件に近づきつつある。


○12月27日(月) 総アクセス40,000件を超す
・NOAAの海面水温平年偏差図(25日)によると、日本列島東海上の海面水温が平年より著しく高い領域には大きな変化は認められない。一方、四国の南海域の海面水温は平年より低くなる傾向が顕著となる。また、北米北部の沿岸海域は今までは平年よりかなり低い状態が続いていたが、ここにきて平年より高くなり始める。
・松山町のモニターから深水管理に要する経費がメールで届く。農業委員会が定めている農作業標準料金を参考に委託された場合を想定して検討して頂いている。


○12月28日(火) 仕事納め
・昨日総アクセスが40,000件を超す。99年のアクセス総数は97,98両年の合計アクセス数にほぼ匹敵するものである。早期警戒システムがこの一年間運営できたのも、モニターの方々や一般の閲覧者のご支援によるところが大きい。私にとってご用納めあたり最高のプレゼントである。皆さんに感謝したい。
・松山町のモニターから深水管理に要する経費に関してメールが届く。灌漑・排水施設の整備状況の違いで経費は異なるとのこと。水利費は固定なので、深水でも浅水でも変わらないとのことだ。


○12月29日(水) 
・NOAAの海面水温平年偏差図(28日)によると、日本列島東海上の海面水温が平年より高い領域は少しずつ変化する兆しである。
・最上町のモニターから深水管理に要する経費の見積もりが届く。畦塗り、畦シート、水管理経費などで積算されている。これらは圃場の整備状況でかなり変わることが指摘されている。
・意見交換の広場に品種選定に関する問い合わせがある。むつかしい問題である。少し時間を頂くことにする。
「温暖化の進む中での、品種選定をどうすべきか、教えて頂きたいのです。数年前まで、適品種だと思っていたものが違ってきた様におもわれます。 稲の品種だけに限らず、昆虫しかり、温暖化が生態系全てにストレスと変化を促しているように感じます。」


○12月30日(木) 
・昨日の一般からのご質問に次のように回答する。
「 メールありがとうございます。ただ、大変難しいご質問に戸惑っています。
 地球温暖化の問題は、確かにわれわれにとって大きな社会的問題であるとともに、生産する立場からも無視できる問題ではありません。今までの気温の観測から、地球の温暖化は着実に進んでいるようにもみえます。本ホームページの「早期警戒関連情報」「仙台管区気象台発表予報」「東北地方の天候」の『1999年の東北地方の天候(12月16日発表)をご覧下さい。(これはPDF版しか利用できませんが、)この4頁の「図4 東北地方の年平均気温偏差時系列(1946年〜1999年)」を見て下さい。この図は東北地方の年平均気温が長期的に昇温傾向にあること、また気温の低い時期と高い時期が数十年の周期で繰り返されていることを如実に示しています。資料にも明記されていますが、この気温変動の原因は人間活動によるものと大気や海洋のもつ性質によるものと考えられますが、変動の機構はまだ十分に明らかにされていません。したがって、東北地方において昇温傾向が今後とも続くのかどうかは判然としません。
 さて、品種選択の件ですが、品種と作期は地域の気象災害、病害虫の被害などを最小限にとどめ、安定した収量と品質を確保するために、長年(5年〜10年)の試験研究の結果から決定されています。この過程で各品種の目標とする生育指標や収量が設定され、生産者の方々の技術指導情報が作成されます。先の図にもありように、気温変動の大きな周期と奨励品種選定時期との時間のズレなどが影響して、品種選定に疑問をもたれることは十分あると思われます。東北地方では今まで冷害のことばかり考えていました。しかし、平成6年、11年の高温障害の経験は、気象変動が近年になり著しく大きくなっていることを私たちに教えてくれます。生産現場においては、収量性、良食味、耐冷性、耐病害虫、耐倒伏性などの技術的な要因と消費者のニーズに関するさまざまな要因などが総合的に考慮されて作付品種が決定されているものと思います。最終的には、生産者の方が自信を持って作れ、消費者によろこんでもらえる品種が選定されているものと思います。ただ、もう一つ重要なことは稲作の基本技術を励行することだと考えます。土づくり、苗づくり、そして生育中・期に凋落しないような生育を水管理と施肥管理で実現すれば、冷害や高温障害はかなりの部分回避できるものと、生産者の方々とお付き合いして感じています。
 以上、とりあえずご回答いたします。さらにご質問があれば、遠慮なくメールを下さい。」


○12月31日(金) 
・日別気温の区分値を変更する。
・コンピュータ2000年問題で待機する。2000年を迎えても特に異常は認められなかった。
・アメダス監視システムも異常は認められないが、一部データの作成ができなかった。よくあるトラブルの一つであろう。
・無事新年を迎えることができた。



 
GotoHome Prev Next Return Opinion
 

torigoe@tnaes.affrc.go.jp