水稲冷害研究チーム
2000年編集長日誌
この日誌は早期警戒システムの舞台裏を記録するものです。
11月
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○11月1日(水) 秋田県農業試験場依頼研究員佐藤さん着任
【天気概況】
・台風と太平洋高気圧から吹き込む暖かい空気の影響で前線が刺激され、南部から徐々に雨となる。
【モニターネットワーク】
・節水栽培に関する問い合わせについて、調査した結果を次のようにご返事津する。
「メールありがとうございます。次のご質問を調査してみました。
「私は山形県在住のものです。先の冷害時のことについて教えていただきたく、メールを送らせていただきます。1993年(平成5年)の大冷害の時、多くの農家の方々が冷害で悲惨な状況にある中で、ある農家の方が元気に稲を育てているのが当時のTVニュースで盛んに流されました。その方は「水を入れるように」という農協の指示とは反対に田んぼに水を入れず、“水が無ければ根を下に下に伸ばして水を探そう”という稲が本来持っている本能、生命力を引き出そうとした。・・・私の記憶では確かそのようなニュース内容だったと思います。このことに就いての新聞記事を図書館で探しているのですが、未だ見つけられません。貴研究チームにてその農家のことに就いて何かお分かりでしたらお教え下さい。私は農家ではなく英語教員ですが、教育にも通じる興味深いお話と思い、以前から興味を持っていたことなので是非、お力添えをお願いします。」
この件ですが、現在山形県と宮城県のモニターの方々に心当たりを探してもらっています。私も1993年当時の日本農業新聞東北版を調べてみましたが、該当する記事を見つけることはできませんでした。ただ、農文協出版(1994)『冷害に勝つイネつくり』の中に、「節水栽培でつくる根群で冷害に打ち勝つ」という紹介があり、宮城県小牛田町で取り組んでいる農家がいます。それによると、節水栽培とは、6月下旬の出穂前45日から田を干し、強靱な畑根をつくり、それを収穫まで維持して秋まさり(収穫まで稲体の活力を維持するような生育)の登熟歩合(充実した籾の割合)重視のイネ作りと言われています。その考え方は、“深水にして低温から幼穂を守るというのは、寒いときにオーバーを着るのと同じで、寒さに強い体質をつけるわけではない。そのオーバーとなる水だって、冷害の年は日照がないから冷たくて必ずしも防寒着にならない。6月下旬からはいっさい田に水をためない。平成5年は、雨が多かったから、7月から刈り取りまで1回も水を張っていません。それでもこの地域の平均収量の3倍くらいとった。それは節水栽培でできる畑根の根の量、活力が深水でできる水根とでは格段に違うからである。出穂前45日頃からイネは穂作りの態勢に入る。根も地上部も急成長し始める。その根、葉が出穂後活躍して登熟を高めてくれる。だから、その根、葉を節水栽培で活力あり、持続力のあるものにしたい。寒いからといってオーバーを着せるのではなく、その前に根を深く張らせて寒さにも耐える体質をつくれば、オーバーなんかなくたって風を引くことはない。”
このようにご質問に合致するものと思います。興味深いことは、ここで取り組んでおられる農家の方々はこの栽培方法を山形県南陽市の農家(鈴木恒雄さん)から教わったことです。この鈴木さんは節水栽培で毎年800キロの収量を上げており、農文協から『ここが肝心、イナ作診断』(1994)を出版されています。鈴木さんが山形県南陽市在住であること、節水栽培を実践されている篤農家として広く知られていること、などを考慮すると、この方が当時テレビで放映されたのではないかと推察しています。
以上、取り急ぎ報告しますが、モニターから何か手がかりを頂いたときは、「編集長日誌」のコーナーでご紹介したいと思います。
・山形県最上町のモニターから節水管理に関する返事が届く。やはり、同じような推察をされている。
「テレビのニュースの件は存じませんが、著書でみた”鈴木恒雄”氏の考えに似ている気がします。著書名は、農文協の「イナ作診断(出穂40日前からの施肥と水管理)」です。冷害時の教訓として、「単一技術だけでは防げない!」という事でした。深水管理にしろ、節水管理にせよ、最後は根の活力維持だと思っています。むろん、それに持っていく為のプロセスが大事で、今もって勉強中です。今年は終了しましたが、私の理想の”ハイ・レスポンスの稲姿(全天候型)”は、まだまだです。」
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(31日):オホーツク海とカムチャッカ半島周辺の海面水温が平年よりかなり低くなる。また熱帯赤道海域の海面水温は平年より高くなる傾向が続く。
・仙台管区気象台から10月の天気のまとめが届く。キーワードは「天気は周期変化」「高温傾向の持続」とある。
【研究活動】
・秋田県農業試験場稲作部の佐藤さんが依頼研究員として3か月の研修に着任する。挨拶回り、研究態勢の準備を行う。
【その他】
○11月2日(木) 内輪の収穫感謝祭
【天気概況】
・台風から変化した低気圧の影響で、各地で雨となる。
【モニターネットワーク】
・宮城県松山町のモニターから節水管理に関するコメントが届く。
「昨日からキウイの収穫が始まりました。今年は粒ぞろいで収穫も期待できそうです。さて質問の件ですが、はっきりとした記憶はありませんが、そういう人がいたような気がします。農業新聞か他の新聞で見た記事なのかはっきりとは覚えていませんが、もしかしたら本だったような気もします。そんなところしか分からなく申し訳ありません。
ところで、我が家では平成5年は、ササニシキの稚苗移植で3〜4俵、ひとめぼれの稚苗移植で6俵半、乳苗移植では8〜8俵半という成績でした。別に深水管理したわけでもなく、他との違いにびっくりしたものでした。特に乳苗の田は水持ちが悪く、これで本当に大丈夫なのだろうかと思うぐらい水が張れませんでした。深水の徹底を呼びかける指導機関の広報にもどうにも対処できない状態でした。ところが、ふたを開けてみると結果的に例年と変わらない約8俵半の反収があり世間でも評判になりました。当時は乳苗の技術のおかげということで指導機関や周囲から脚光を浴びましたが、そんな田圃の条件も良い方に働いたのかなと思っています。たしかに根っ子の張り方が慣行のものとは違って倍近い根量でした。根を下に伸ばすということは、現在行っている直播栽培の最も重要な技術でもありますので、もっと詳しい情報がありましたら是非ご教授いただきたいと思います。よろしくお願いします。」
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・皆瀬頭首工流域の水田水温と気温・日照時間の関係をまとめる。
・新鶴子ダム流域の水田水温と気温・日照時間の関係を検討する。
・盛岡市近郊の生産組織が5日、転作に関する研修に来られるので、その資料等準備する。
・石巻市のモニターの稲作への情熱が掲載されている農業共済新聞(11月1日)が同社から郵送で届く。第1面トップにカラー写真付きで掲載され、私のコメントも入る。
・佐藤さんの歓迎会も兼ねて、4チームなど関係者で内輪の収穫感謝祭・家畜慰霊祭を行う。
【その他】
○11月3日(金)
【天気概況】
・低気圧と前線が通過し、天気は回復に向かう。
【モニターネットワーク】
・宮城県河南町のモニターから品種選択に関するメールが届く。
「私は地域気候風土にあった品種を選ぶのがよいと思いますが、やはり値段の高いものなってしまいます。刈り取りの作業幅、加工米用の多収穫品種、食味のよく人気のある品種になります。今年は、5種類の米を作付けました。収穫はライスセンターによる共同作業で1ヵ月位かかるので、早生〜晩生の品種を作付けし、作業期間の幅をとらなければなりません。日本人の胃袋は日本でまかなうよう国民の農産物に対する意識改革が必要では?豊かな楽しい農業を目指し米作りに頑張ります。」
・節水管理に関してご質問いただいた方からお礼のメールが届く。
「お返事ありがとうございました。私のような全くの素人の質問に真摯に、熱心に御調査、御回答いただきました鳥越様、また最上町のモニターの方に厚く感謝申し上げます。ぜひとも、機会を見つけて、鈴木恒雄氏の著書を読んで見たいと思います。」
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・四国高松市の先生からメールが届く。
「鳥越さん,先日の回答ありがとうございます。四国高松の社会科教師です。先日,耐冷性に関する質問をしました「耐冷性を重要視するのか,価格を重要視するのか」モニターの回答を見ると他品種を作付けするということですが,経営規模とのかかわりでは,どうでしょうか。初歩的な質問で恐縮しますがよろしくお願いいたします。」
回答:メールありがとうございます。モニターの方々の考え方はご理解いただけるものと思います。経営規模との関係ですが、モニターの方々の経営規模は10ヘクタール前後の規模で、東北でも大規模な経営といえます。耐冷性が強くて良食味の「ひとめぼれ」は多くの方々の基幹的な品種となっていますが、規模が大きいために早く収穫できるものから遅く収穫できる複数の品種で、危険分散や労力配分を考えています。平成5年の大冷害は、過去の統計から100年に一度の確率といってもいいほどの異常な夏となりました。一般的に、異常気象とは30年に一度の確率で生じるような現象を言います。モニターの方々の意見をみると、耐冷性品種より良食味で高く売れる品種を作付けすることを優先するように思われるかもしれません。しかし、平成5年のような冷夏が頻発するとは考えられません。多少の冷夏が来ても、モニターの方々はそれに打ち勝つような総合的な技術力を独自に持っておられます。冷害を克服する技術は、耐冷性品種が一番重要ですが、土づくり、苗の作り方、肥料のやり方、水管理、など総合的な努力によるものなのです。とわいえ、冷害危険度の高い地域では、耐冷性に強い品種選択(早く収穫できるものや障害型冷害に強いもの)のウエイトが大きくなります。したがって、経営規模と耐冷性品種の選択との関係は一概に論ずることができないと思います。東北の稲作生産者は、今行われている生産調整、米価の低迷などで経営の維持・発展に苦難を強いられているのが実状です。
【その他】
○11月4日(土)
【天気概況】
・移動性高気圧に覆われ、天気は概ね良好。
【モニターネットワーク】
・宮城県石巻市のモニターからメールが届く。
「農業共済新聞の一面にあまりにも大きく取り上げていただき大変ありがたく,又、驚いています。出きれば、専業で稲作りをしたいのですが、農地の集積が出来ません。何か良い方法は無いでしょうか。因みに、農業委員会、農協、土地改良区、市や県の農林関係機関には相談済みです。来年は、ブロックローテーションによる大幅減反で、耕作地の7割が休耕転作です。転作、減反に躍起になっているうちに本作の稲作りを農家が忘れてしまうのではないでしょうか。」
・宮城県松山町のモニターから品種選択についてメールが届く。
「大変遅くなりました。豆と蕎麦刈りが終わり、麦の播種をしようかとしたところで、雨
になり今年は作業が早いと思っていましたが平年通りになりました。質問ですが平成5年大冷害と経営ことがありますから耐冷性を取ります。しかし、偶然にも平成5年に「ひとめぼれ」が出来たことが質問を簡単にしています。最近は冷害から7年もなり、高温傾向、米価の下落も重なり価格の高い「コシヒカリ」、「ミルキークイーン」が幾らか作付けされ出しました。簡単ですがよろしくお願いします。」
・山形県最上町のモニターからメールが届く。
「ハッキリしない天気が続きますね。ところで、どのかに「気象ことわざ?」を集めたようなHP、書籍等を知りませんか?アメダスを見ながら考える事では無いのでしょうが、最近の天候が以前と違ってきているのでふと思うのでした。」(仙台管区気象台の関係者にお願いしてみる。)
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
【その他】
○11月5日(日) 盛岡市周辺の生産組合研修
【天気概況】
・移動性高気圧に覆われ、概ね晴れるが、寒冷前線が通過するため、北部や日本海側では雨となる。
【モニターネットワーク】
・宮城県石巻市のモニターから気象諺に関する情報が届く。
「おはようございます。鳥越日誌を見ていましたら気象ことわざの件が出ていました。以前探したことがあります。紹介します。http://com.ibcweb.co.jp/agri/index.html、ホームページはIBCWEBです。」
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(4日):日本列島周辺の海面水温は依然として平年より高い状態が続く。太平洋中緯度海域の海面水温は平年より低くなり始める。熱帯赤道海域の海面水温は大きな変化がみられない。
【研究活動】
・盛岡市近郊の生産組合28名が転作に関する研修に来られる。東北農試が開発した技術や小麦品種東北206号、また早期警戒モニターの方々の活動などを紹介し、意見交換を行う。
【その他】
○11月6日(月)
【天気概況】
・移動性高気圧に広く覆われ、ほぼ快晴の良い天気となる。
【モニターネットワーク】
・山形県最上町のモニターからメールが届く。
「IBCWEB諺コーナーを拝見しました。有り難うございます。地域性があり、面白いものですね。また、内容が似ていても、言い回しが全く違う物が多々ありました。共感するものもあり、へんに納得したりしています。また、月ごとを整理して、ミニカレンダーを作りました。」
・公開シンポにも参加いただいた仙台管区気象台天気相談所長さんから諺に関する文献などについてメールで返事が届く。
「天気ことわざに関する文献などについて、1.もっともポピュラーなものとしては、大後美保偏「天気予知ことわざ辞典」東京堂出版があります。2.地方版としては、工藤敏雄著「岩手のお天気」熊谷印刷出版部、二部浜男著「あおもりの天気」北方新社、藤原 仁偏著「福島の天気」−暮らしとことわざ−歴史春秋社。3.ホームページでは、「Lets.観天望気」( http:// freedom.mitene.or.jp/~tsune/)」
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・公開シンポ:早期警戒モニター・仙台管区気象台との対談を編集する。
・新鶴子ダム水系の水田水温と気温・日照時間との関係を整理する。
・水稲冷害早期警戒システムにおける“モニター農家情報ネットワーク”の位置づけや効果を経済的なネットワークの考え方を参考にして整理を始める。立場の違い方々の意見を聞いてみたい。今井賢一著『情報ネットワーク社会』(岩波新書285)に次のような記述がある。「経済社会のネットワークを次の2つに分類する。@ネットワークA:強い連結で中央集権型のネットワークであり、仕事を無理に標準化すれば生産や流通においてもそのタイプのネットワークが成り立ちうる。AネットワークB:Aとは対照的に、弱い連結の創発型のものであり、ここではそれぞれが独自性(対等性)を持つ小規模システムが連結されるという分権型となる。このようなゆるやかな連結のネットワークにおいては、人と人、組織と組織を連結する仕事が重要になり、そこには人がいるのである。それらの連結を作るには、依然顔と顔をつき合わせたフェイス・ツウ・フェイスの接触が重要であり、かつそこで情報・通信技術は有力な補助手段の役割を果たす。」
・四国高松市中学校の先生から電話が入る。農家と直に電話で話をして勉強したいので、今までに意見を寄せていただいた中から2人のモニターを紹介して欲しいとのこと。メールで了解を頂くことにする。
【その他】
○11月7日(火) 立冬
【天気概況】
・移動性高気圧に覆われて、概ね晴れるが、夜には寒冷前線が通過し寒気が入ってくる見込み。
【モニターネットワーク】
・宮城県松山町のモニターから四国高松市中学校社会科の先生からの電話問い合わせの了解を得る。
「参考になるかわかりませんがよろしいです。でも、いまの社会科でこのような勉強するとは時代が違いますね。逆にこちらも勉強になるかもしれませんね。」
・山形県最上町のモニターからメールが届く。
「いろいろ有り難うございます。「天気予知ことわざ辞典」は、今度探してみます。11月の諺の中に、「10月20日(旧暦)に南風だと小雪、北風だと中雪、西風だと大雪」と言うのがありました。今年は11/25(旧10/20)がその時です。はたしてどうなるのか?興味が有るところです。」
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・公開シンポ:モニター、仙台管区気象台との対談を編集する。モニター一方の次の意見がある。
「インターネットを初めて5年になります。その当時、早期警戒システムのページを一番最初ぐらいに見たんです。その当時は大したことなかったんです。今はものすごく役に立つページになったんです。早期警戒システムに私たちのようなモニターがいて、その中で情報交換をしていくことによって、天候の予測とか生育予測とかが、かなり確率的に上がってくると思うんです。インターネットというのは、ただ見ているだけでは全然役に立たないもので、双方向に会話をしていかなければ役に立たないものと思っています。ただ電子メールだけでは本意が伝わらないところがありまして、鳥越さんたちのように通ってきて頂ける方だと、とても嬉しいという事実があります。」
・新鶴子ダム水系の水田水温と気温・日照時間の関係の情報を作成する。
・富山県農業技術センター農業試験場で10日に開催される講演会の準備に取りかかる。
【その他】
○11月8日(水)
【天気概況】
・寒冷前線が通過し、冬型の気圧配置となる。気温は徐々に下がり、日本海側を中心に天気がぐずつく。
【モニターネットワーク】
・宮城県岩出山町のモニターから四国高松の先生からの問い合わせに関する了解を得る。
「毎日、おだやかな天候で推移しています。山形県最上町のモニターの言われるとおり、気候が変わりつつあるのでしょうか?やっぱり温暖化が進むのでしょうか?新聞によるとかなり急激な変化になるようなことが言われています。このままでいけば海岸線の後退により、耕地面積が減り、食糧危機の時代が予想より早くくるのでしょうか?ところで、電話の件ですが、時間を指定いただけばお答えできます。なぜ、四国高松で冷害なのでしょうか?たいへん不思議です。」
・山形県鶴岡市のモニターから節水管理に関してメールが届く。友人・知人に問い合わせて頂いたが、該当するものは見あたらないとのこと。平成5年からすでに7年が経過し、人々の冷害に対する意識の風化も現れるのが当然のようにも思う。
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(7日):オホーツク海から太平洋中緯度の海面水温は平年よりかなり低くなる。熱帯赤道域の海面水温は大きな変化がみられない。
【研究活動】
・公開シンポの総合討論の編集にかかる。さすが、発言者の一言一言の意味は深く手を入れるのが難しい。
・桝沢ダム水系の水田水温と気温・日照時間の関係を検討する。
・富山県農業技術センターの講演準備を終える。明日から3日間の出張となる。
・水稲冷害早期警戒システムにおけるモニター農家情報ネットワークの意味を考える。そのため、「連結(ネットワーク)の経済性」のアウトプット−「外部効果の内部化」(宮沢健一(1989)『業際化と情報化』、有斐閣。)を読む。われわれのネットワークは経済的なシステムとは異なるものの、次の指摘がまことに興味深く、かつ投影されるように感じる。
「1)情報の発生・利用における「シナジー効果(相乗効果)」
・情報は過去から蓄積された情報に加えられ、いっそうの効力が高まる。
・各種情報を体系的に組み合わせることによって、効果が高まる。
・情報のもつ体系性、蓄積性が基礎となって、連結情報(ネットワーク)によって新しい情報の効果がさらに発揮される。
・参加主体の資源の間の補完性や依存性を連結して効果をあげるという活動のウエイトが増える。
2)主体の行動様式における「ラーニング効果(学習効果)」
・従来はそれぞれの主体が予測して対応した予測システムが、経営活動の中核であった。
・予測システムとは、”事前の”情報に基づいて予測し行動するのが従来までの経済主体の行動の中核であった。
・これからは、主体の連結(ネットワーク)によって、次々に生まれる新情報、新知識の”現実の”情報をいち早くつかみ、フィードバックし、これを蓄積し体系化していく。
・そこから経験を積んで得られるラーニング効果(経験効果、学習効果、習熟効果)が、これからの主体の行動様式にきわめて大きな役割を果たすことになる。
・予測システムから学習システムへの移行が今後の行動様式の一つの型になっている。
3)いわゆる(K.J.アロー)「信頼」という財の創出効果
・ネットワーク参加者の相互接触によって、信頼が生まれる。
・ノーベル経済学賞を受けた数理経済学者アローが”信頼”という財を社会システムの重要な潤滑剤として強調。
・彼は「信頼というのは、たやすく購入できる財ではないが重要な値打ちを持ち、それが存在するとシステムの効率を高める上で大変な役割を果たす。」といっている。
・ネットワークの形が弾力的な形をとっていて、加盟や脱退の自由がある場合には、それはかなりフレキシブルである。そういう中からどういうように信頼を生んでいくかは、重要な問題になろう。」
・岩手県石鳥谷町賢治の会会長の板垣 寛さんから電話があり、12月2日(土)に石鳥谷町中央公民館で同会5周年記念を開催する。そこで、私に次の演題『宮沢賢治が陸羽132号を薦めた時代背景と気象学的にみた今日的意義』で講演して欲しいとの依頼がある。60名程度の人たちが集まり、陸羽132号の試食会もあるという。荷の重い演題であるが、春からの約束でもあり、また公開シンポなど今までの経緯から断ることができない。またまた勉強しなければならない。
・四国高松市の中学校の先生から電話が入る。宮城県岩出山町のモニターの電話番号をお知らせする。先の宮城県松山町のモニターとは電話で1時間も話をし、勉強になったとのこと。私もいろいろと聞かれる。熱心な先生であり、東北の稲作と農家の心を生徒に伝えてくれるだろう。
【その他】
○11月9日(木) 富山市へ
【天気概況】
・冬型の気圧配置が続き、日本海側北部を中心に天気がぐずつく。
【モニターネットワーク】
・宮城県松山町のモニターからメールが届く。
「天気が良くなり今日から例年通りの麦の播種を始めました。四国高松の先生から、昨日事前にファクッスでテーマを送っていただき電話で話をしました。勉強になったのと、感心しました。今の情報社会のなか、中学教育でここまで農業について行っているとは思いませんでした。」
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・公開シンポの総合討論の編集を行う。
・1か月予報の更新を神田君にお願いする。
・富山県農業技術センターの依頼仕事のため富山市へ。越後湯沢では紅葉に迎えられ、日本海に沈む夕日を追って富山に入る。
【その他】
○11月10日(金) 富山県農業技術センター
【天気概況】
【モニターネットワーク】
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・富山県農業技術センターにおいて、客員研究員招聘制度で「水稲冷害早期警戒システムについて」の講演と営農情報発信に関する議論を午前と午後にわり行う。
【その他】
−−−−−−−−− 中旬 −−−−−−−−−
○11月11日(土) 盛岡へ戻る
【天気概況】
【モニターネットワーク】
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・時雨れる日本海側から快晴の関東に入り、盛岡へ帰る。今朝は積雪があったとのこと。
【その他】
・総アクセスが65,000件を超す。
○11月12日(日)
【天気概況】
・日本海に低気圧が発生し、天気は下り坂となる。
【モニターネットワーク】
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(11日):太平洋中緯度の海面水温は平年よりかなり低くなる。ペルー沖の赤道海域の海面水温は平年よりやや高くなる。全体的には大きな変化はみられない。
【研究活動】
・一般の農業関係企業からリンクの依頼がある。
【その他】
○11月13日(月)
【天気概況】
・寒冷前線が通過し、天気は回復に向かう。
【モニターネットワーク】
・本プロジェクト研究も最終年となり、水稲冷害早期警戒システムの評価をモニターの方々にお願いするメールを出す。
「 私たちのプロジェクト研究も最終年を迎え、とりまとめの準備に入りつつあります。
水稲冷害早期警戒システムは、モニター各位の助言もあり、徐々にですが改良されてきています。私自身、まだまだ改良しなければと思っていますが、現時点での反省をしてみたいと思います。伺ってゆっくりと話をすれば良いのですが、諸般の事情がありメールでお願いせざる得ません。この点を了解頂きたくお願いいたします。
さて、本システムでは、モニター農家情報ネットワークが生育予測などの開発技術の実証、冷害にも高温障害にも強い稲作りの実証、篤農技術の科学的分析、一般からの問い合わせなどで、私自身重要な機能が発揮されていると思っています。これらを通して、一般の閲覧者の方々から大きな信頼が得られているものと確信しています。
漠然とした、また大変難しい質問ですが、次の2点についてご意見をお聞かせいただけましたら幸いです。それをヒントにして、私自身ゆっくりと考えてみたいと思っています。
1)早期警戒システムのなかで、モニター情報ネットワークは「発育予測」「編集長日誌」「意見交換の広場」のコーナーにしか、表向き現れません。ご自身では、このネットワークをどのように感じ、またどのように利用されているのか。さらには、一般の閲覧者へどのような効果を及ぼしていると思われますか。
2)早期警戒システムは皆さんの経営にどのような良い効果を及ぼしているのか。数量的に評価できれば、問題ないのですが、それが困難であるように思っています。変な言い方になりますが、冷害が来たときに真に本システムの効果が実証されるのかもしれません。
以上、大変お聞きしにくい問題ですが、何でも結構です。私にヒントを与えて頂ければ幸いです。宜しくお願いいたします。」
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・公開シンポの総合討論の編集を行う。
・小林さんを筆頭著者でまとめた「穂いもちのリモートセンシング」に関する論文が国際的に評価の高い植物病害の専門雑誌“Phytopathology”に11月10日付けで受理される。印刷されるのが待ち遠しいが、大変な成果である。
・水稲冷害研究チームを創設した前場長(現在は大学教授)から小林福蔵さんに関する問い合わせがある。土壌関連学会の支部会シンポジウムで土づくりの経済学という話題提供を依頼され、小林さんの経営と土づくりを勉強したいとのこと。参考資料と水稲冷害早期警戒システム、公開シンポのパンフレットもお送りする。
・職員組合から15日午後の交流会に早期警戒システムの研究成果発表を依頼される。
【その他】
○11月14日(火)
【天気概況】
・移動性高気圧に覆われ、概ね晴れの良い天気となる。朝は放射冷却のために冷える。
【モニターネットワーク】
・宮城県岩出山町モニターから早々に難しい質問に返事が届く。
「ご質問の件について、1: 早期警戒システムのなかで、モニター情報ネットワークは「発育予測」「編集長日誌」「意見交換の広場」のコーナーにしか、表向き現れません。ご自身では、このネットワークをどのように感じ、またどのように利用されているのか。さらには、 一般の閲覧者へどのような効果を及ぼしていると思われますか。:(回答)情報ネットワークはモニターと一般閲覧者と早期警戒システムのそれぞれ接点における情報の交換が基幹になっていると思います。HPは常に更新がなければ読者がいなくなります。私もHPを作成していて(個人SITE小松屋、NPO法人”感覚ミュージアム”)をつとめておりますが、読者との情報交換を常に意識していて、情報発信を高い位置から流すのではなく、対等の立場でお互いに批判、批評をし合いながら、より高い目標に向かうという意識創りが大切と考えます。実際に農業に取り組んでいるモニター、試験研究をなさっている早期警戒システムの方と一般の閲覧者の情報収集にも役立っています。波及効果として、地域の農業、季候の差異、農家の意識の違い、研究結果と実際の現場(試験と営利目的の農業)との意識の温度差などが際立ち、そこから新しい農業を通じての情報交換のシステムができあがると思います。2: 早期警戒システムは皆さんの経営にどのような良い効果を及ぼしているのか。回答:早期警戒システムの数量的な評価は天気予報の評価と同じ位むずかしいと思いますが、私個人の意見としては、昨年や今年のような生育がかなり早いと稲の生育段階が、急速に進展する場合は”生育予測”がかなり役にたちました。特に収穫量を特に左右する追肥の時期やいもち病の発生予測、今年の注目でカメムシの発生状況のモニター間の情報交換などを見ると、今現在、作業の進度の予定の組み方などに特に便利でした。本来の目的である冷害観測と予防については、各モニターの意見が交差して知識としておもしろかったです。私のような情報好きな農家で、利用の仕方が理解できればかなり有用と思います。またプロの稲作農家が少ない昨今は篤農情報が見聞きできることはこの上ない宝と思います。もし、私が今年の生育予測を見ずに追肥を行ったり、時期はずれなイモチ防除をすれば、稲は全面倒伏、米はすべて等外品だったりしたかもしれません。利用できる最高のシステム、情報を生かさないことはもったいないと思います。それで私の地域では時期はずれの追肥を行った方や、農協の薦めでササニシキを作付けした方、カメムシの情報を鵜呑みにして、むだなくアゼカリや防除をおこなって、経済的な損失は大きくなったと思います。等外品は一等米の半額以下です。気持ちの上では、手探りであった米作りが、千里眼を持ったような便利さ、百科事典をもったような確かさを私の米作りに加えていただいたようなものです。これからもこの研究チームが続くことが米農家のみならず、園芸関連の予測栽培などにもつながればと思います。お天道様は一つですが、自分に日が当るようなするのは人間自身だと思いますので?答えになっているかわかりませんが、本当に勉強になった2年間でした。輸入攻勢や風評にまけずに米作りに専念できる農政にしていただきたいこの頃です。」
・山形県鶴岡市のモニターからメールが届く。
「早期警戒システムについての宿題ですが、少々時間をください。この研究も最終年と言うことですが、過ぎ去った時間は本当に短く感じるものです。このシステムに出会って私もいろいろ勉強になりました。その辺のところをまとめてみたいと思います。このシステムがより良い形で次の組織に引き継がれて行くことを望んでいます。そして農家の人がもっと身近に利用できるようになれば幸いです。」
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・農水省の先輩から依頼されていた中国砂漠地帯における水稲の生育・収量特性を分析して、お返事する。
・桝沢ダム水系の水田水温と気温・日照時間の関係をまとめる。
・東北の冷害を克服してきたエッポック的な時代を考察する。宮沢賢治が象徴として引用される理由がよく分かる。大正10年に陸羽132号が育成され、昭和5年に「亀の尾」から「陸羽132号」に品種転換が急速に始まる。賢治は昭和8年に没し、その翌年の9年と10年に冷害が続く。特に昭和9年の冷害は被害が大きかった。それを契機に、農事試験場に冷害研究施設が作られ、生理的な研究が寺尾 博や近藤頼巳などによって精力的に進められた。その当時の反収は300kg程度、戦後長野県農事試験場の岡村勝政を中心に保温折衷苗代による育苗技術が開発され、昭和25年には農林省が保温折衷苗代普及協議会を開催(国庫補助金交付)により急激に普及する。その後、藤坂5号などの耐冷性・多収・良食味品種が育成され、反収500kgに向けて急上昇し始める。これと時期を同じくして、気象庁は東北・北海道の冷害の原因を精力的に調査研究し、季節予報の研究が進められる。東北地方長期予報研究会が昭和16年の大凶作を契機として発足し、研究会誌「東北地方長期予報研究会報」をもって、ときの仙台地方気象台(後に管区気象台)長の森田稔を中心として、東北地方気象官署があげて凶冷予報の研究・発表に精力を集中したことである。その結果、季節予報の研究は東北地方を中心として独自の発展を示すにいたった。
・場の広報担当者から東北農政局のメールマガジン「東北農政の動き」の案内が届く。
「東北農政局では農政の動向や関連した情報を広報するために、企画調整室においてメールマガジン「東北農政の動き」を発行しています。購読希望者には配信してくれるそうですので、以下に申し込んでください。(tnkikaku@sh.comminet.or.jp)なお、メールマガジンで配信している情報は以下のHPでもご覧になれます。ただ、若干タイムラグがあるようなので、リアルタイムで入手したい場合は上記へ申し込んでください。(http://www1.sphere.ne.jp/traao/kikaku/info/mgoshirase.htm)」
【その他】
○11月15日(水)
【天気概況】
・寒冷前線が通過し、天気は下り坂に向かう。
【モニターネットワーク】
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(15日):オホーツク海と北部太平洋の海面水温は平年よりかなり低くなる。北海道・東北東海上では海面水温が依然として平年より高い。熱帯赤道域の海面水温には大きな変化はみられない。
【研究活動】
・公開シンポの総合討論と閉会の挨拶の編集を終える。 “自然に対する畏敬の念”が全体を通して表現されているように思える。今になって思うが、当日は全体の進行などに集中していたためか、登壇者の感銘する言葉の多くを記憶していない。是非とも本にまとめてみたい。また次のシンポも計画したくなる。
・労働組合の交流会で早期警戒システムの研究紹介を行う。
・東北農試の研究内容を海外に紹介するJチャンネルの放映ビデオが場長室で紹介される。やませと水稲冷害に関する研究内容が中心となる。
【その他】
○11月16日(木)
【天気概況】
・冬型の気圧配置となり、また寒気が入るために、日本海側を中心に天気がぐずつく。
【モニターネットワーク】
・モニター農家情報ネットワークについて、チームの仕事とやや離れて仕事をしているアイコン作成担当者に意見を伺う。
「モニター農家情報ネットワークと本システムは比較的当初より不可分だったと思いますので、もし無かったらという仮定の話を想定するのは容易ではありません。しかし、現在のシステムの構築結果から見ると、無かったら今以上にいい形になっていたかどうか怪しいような気はします。というのは、鳥越さんのデータ処理・提示能力が優秀であるのは皆が認めるところだと思いますが、もしネットワークがなければ、整合性のとれたデータを適宜提示できたかどうか大変失礼ながら疑問に思えます。モニター農家にデータを提示しつつも、鳥越さんも勉強するという真摯な態度があったからこそ、今のシステムはあるのだろうと思います。モニター農家情報ネットワークによる価値・効果等は、目に見える形では意見交換の広場・編集長日誌以外には具体的には現れていませんが、私はシステムに
強く反映されているような気がします。たとえば、早期警戒情報を出すときでも、鳥越さんの頭の中にモニター農家の顔が浮かぶことで、赤色を付けたいが黄色にとどめるなど、ある程度客観的な評価ができるようになります。また、他の面においても“モニター農家の顔が浮かぶ”というだけで、このシステムの客観性が高まっていると思われます。WWWによるシステムは、基本的に受け側が匿名性の高い情報媒体ですので、時には主観が非常に入りやすく表現にも偏りが生じやすい傾向があります。その中に受け側にモニター農家という顔の判明する人たちが入ることによって、客観性が著しく高まり普遍化される。これだけでも、十分な効果・価値だと思います。上記の様にあえて評価すれば、効果はあるとしかいいようがありません。しかし、鳥越さんと“友人”と呼ぶ人たちとの友情関係を数量化できない限り、その友情によって成立しているものを本システムから取り除いて評価はできないと思います。」
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・公開シンポ「場長挨拶」の第2回目の編集を行う。いよいよ第2回目の編集に取りかかる。これが終わると、関係者に配布して最終的なチェックをお願いした。
・情報技術に関するプロジェクトの予算化作業に追われる。
【その他】
○11月17日(金) 積雪2センチ
【天気概況】
・低気圧が発達しながら通過するため、南部を中心に雨となる。盛岡では早朝積雪が2センチ程度ある。今年初めての雪の感触。
【モニターネットワーク】
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
・仙台管区気象台から1か月予報の解説がメールで届く。気温は1,2週やや低め目を予想するが、平年並みとみる。
【研究活動】
・東北農政局から平成12年度東北地域水稲安定生産推進連絡協議会の開催案内が届く。12月7,8日に仙台で開かれる。
・水稲冷害早期警戒システムの開発過程と現在の到達点、今後の展開についてとりまとめを始める。
【その他】
○11月18日(土)
【天気概況】
・低気圧が発達しながら東北地方を通過し、冬型の気圧配置となる。寒気が入る。
【モニターネットワーク】
・宮城県石巻市のモニターからお願いしていた質問に対するメールが届く。
「さて,ご質問の件についてご返事差し上げます。質問 1−1」早期警戒システムのなかで、ネットワークをどのように感じ、またどのように利用されているのか。 回答 1−1」ネットワークを通じてそれまで入手できなかった各地域の稲の生育状況の様子や、他のネットを通じて専門的な技術情報を入手することにより、自分の稲と比較してその後の予測が出来、適切な管理によって品質・規格・収量共に優良な結果を得ることが出来た。質問 1−2)一般の閲覧者へどのような効果を及ぼしていると思われますか。回答 1−2)一般の農家は、稲の生育進度予測とモニター情報としての生育観測記録から時間的なズレを省いた鮮度の高い情報を入手し、自身の稲の生育状況と比較対比して、適切な対策が立てられる。農家以外の一般の閲覧者は、順調な生育を同時に観測することにより、食糧の安定と食品としての米の安全について多くの情報を入手できる。質問 2)早期警戒システムは皆さんの経営にどのような良い効果を及ぼしているのか。回答 2)特に稲作りは気候に大きく左右され、その収量の大小は日本経済に大変大きな影響をもたらします。天候に左右されない稲作りを進める為には、長期の天候を予測しあわせて、的確な技術も入手し栽培計画に反映させ良好な稲作りを進める必要があります。今までは、多くの情報があっても我々農家はすぐ忘れてしまったり、またその利用する方法を知りませんでした。今回水稲冷害早期監視システムにめぐり合えた事は稲作りの為に第三の農具を入手できた様な思いです。今までの農業技術は経験を基にした感覚的な栽培技術だった様に思います。今は、インターネットなどを通して多くの情報を入手し、それらを基に的確な分析と判断によって、農業経営に利用できる様になりました。このことは、これからの農業の方向性を示している様に思います。さらに、ネットワークを通じて、各地域で農業に活躍している皆さんの姿を想像し、自分の経営の参考にさせて頂けることは、本を読んだり、講演会、各種活動などでは経験できない大変貴重なことだと思います。これからも大いに利用させていただきたいと思います。その他、技術的な改善の提案をさせてください。冷害警戒システム上で検索機能を設けてほしいと思います。新聞記事のページには、キーワードで検索できるようになっていたと思いますが、そのシステムをホームページのトップで検索できるようになれば使い勝手が良くなると思います。現在、なかば一方的な運用になって居りますが、モニター閲覧者同志が意見交換できるようなスタイルはどうでしょうか。」
・宮城県松山町のモニターからメールが届く。農業委員会でタイに研修に行くので、宿題を少し待って欲しいとのこと。ニンニクの植え付けが終わり、外での作業はほぼ終わったとのこと。
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・水稲冷害早期警戒システムの開発過程をまとめる。
【その他】
○11月19日(日)
【天気概況】
・冬型の気圧配置が続き、日本海側を中心に天気がぐずつく。
【モニターネットワーク】
・山形県最上町のモニターから本システム評価に関するメールが届く。
「遅くなりましたが、以下に今現在の考えをまとめました。2000年3〜4月、畜産農家にとって最大のショッキングな出来事がおこりました。宮崎県や北海道での、口蹄疫感染の国内発生です。 感染力の強靱さは、概に発生している台湾全土の畜産(偶蹄類)崩壊でも明らかであり、国内では1908(明治41)年以来でした。ただ、前回の事例を教訓にした適切で早急な処置により二次感染が防げ、結果的に最小の被害で終焉出来ました。
水稲冷害も同じと考えます。平成5年の、記録的な冷害はまだ記憶に新しいですが、近年の高温傾向でどうしても意識が薄れている気がします。何時来るか判らない”冷害”ですが、危機意識の風化と壊滅的な被害を未然に防ぐために、また正しく適切な情報を瞬時に得るために、そして今年の高温化異常気象での応用実証を踏まえ、どうしても「水稲冷害早期警戒システム」の早期警戒情報を始めとするリアルタイム情報の必要性を、作物全般の広範囲活用の意味からも維持・存続を強く希望すると共に、さらなる発展(進化)を期待しています。モニター情報ネットワークの(各自)生育データは、主に「発育予測」での現場との精度誤差に利用されていますが、それだけでもその年の水稲の管理補正にかなりの
効果が出ています。これは、自分の稲のステージをしっかり知る事により、気象予測と平年値から適正で最良と思える管理が出来るためです。また、図表等を見やすいように修正していただいたり、疑問点を素早く解決していただいたりで、「編集長日記」からも判るように、鳥越さんの熱意に動かされる形の自然派ネットワークになっています。ここが、モニターだけでなく一般の閲覧者の方々からも大きな信頼が得られているのだと思います。 「圃場から情報が見れたらいいなぁ」と言う私の1ユーザとしての希望も、iモード対応にいち早く対応していただきましたし、アメダスの表示改良により、自分の圃場の刈り取り適期が明確になりました。また、BLASTAMの利用でイモチ病被害が最小限に抑えられ、減農薬栽培に効果が有ったと思っております。確かに、効果のハッキリとした数量化は難しいですが、結果的に”高品質米生産”へつながったことは揺るぎない事実であり、冷害時の対応の自信にもつながると思います。今後は、爆発的にユーザーが増えているiモード版の機能UP(アメダス表示、BLASTAM、発育予測/iモード版・地区選択フォーム採用)が、より早い情報獲得の手段になりそうです。wwwでは、生育予測に近年値(最近2〜3年の平均値)を加えてもらえれば、「最近の異常気象時の予測に効果有るのでは?」と考えています。インターネットの平準化が更に進む中、パソコンも手放せない農機具に定着化してきています。それに合わせて、マニュアルからオートマに車がなった様に、wwwも更に
進化してくれば誰でも活用できる便利帳に成り得ると思っています。今後も、鳥越さんのシステム構築の熱意と関係スタッフのチームワークに、幾らかでも微力になれればと考えています。モニターの1人として、またユーザーの1人として・・・今後もエールを送ります。頑張ってください!!」
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(18日):太平洋中緯度地域の海面水温は平年よりかなり低くなる傾向がある。日本列島沿岸海域の海面水温は依然として平年より高い状態が続く。熱帯赤道域の海面水温は大きな変化がみられない。
【研究活動】
【その他】
○11月20日(月)
【天気概況】
・低気圧が発達しながら日本海を進むため、天気はぐずれる。
【モニターネットワーク】
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
・仙台管区気象台予報官から3か月予報の解説などの資料がメールで届く。1月と2月の気温は高いとの予測。また暖冬になるのか。
「なお、季節予報に関連する報道発表資料「2001年1月から平年値を更新し、階級区分を変更します。」も併せて送付します。この詳細は報道発表資料を見ていただくとして、2001年1月から平年値は1971〜2000年の30年間の平均値を使うようになり、1990年代の高温傾向が平年値に反映されるようになります。このため、気温に関しては今まで用いてきた平年値より新平年値は夏場を除いて高くなります。(つまり、平均的な気候が変わってしまった?)また、季節予報などで用いていた階級区分も33%の等確率に変更になります。
今回の予報までは30%:40%:30%の階級区分(低い:平年並:高い)ですが、来月発表の予報では等確率になります。」
【研究活動】
・公開シンポ:“寒だめし”の白鳥さんと徳永さんの対談について第2回目の編集を行う。白鳥さんの菊づくりも小林さんの稲作りの考え方と同じことのようだ。白鳥さんの言葉によると、“植え付けの段階では、水も肥料も最低限、特に肥料はほとんどやらないで、のどが渇いた状態で、おなかがすいた状態でスタートさせる。そういった状態を1週間から10日ほど経験させます。それが収穫まですごい力を持った根を維持してくれるような気がしている。”
・水稲冷害早期警戒システムの到達段階を整理し、さらにどのような展開が可能かを考える。モニターの方々からも様々な意見を頂き、とても参考になる。
・島根県中学校の先生から先日の社会科研究授業で生徒と電話交信したお礼の手紙が次のように届く。
「紅葉が鮮やかな頃となりました。そちらは如何でしょうか。先日の授業へのご協力本当にありがとうございました。「冷害」担当の生徒はとても意欲的に取り組みました。当日の4つの質問は期せずして生徒たちの中からでてきたもので、私自身感心しました。これも現地の人に直接聞けるということで、頭がさえたのかもしれません。研究授業もおかげさまで、リアルタイムに当事者の方と話をすることで好評でした。「冷害で稲作をやめた農家はありませんか」の質問に、「一軒もありません」というお答えが印象的でした。農家の想いも語っていただき、とても有り難く思いました。今後も、農業・食料のこと、横田のことを自分のこととして考えていくことができればと願っています。ありがとうございました。私も1950年生まれです。お互い身体に気をつけていきましょう。」
【その他】
−−−−−−−−− 下旬 −−−−−−−−−
○11月21日(火)
【天気概況】
・寒冷前線が通過し、強い冬型となり風も強く、天気は荒れ模様となる。
【モニターネットワーク】
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・公開シンポ:“寒だめし”の白鳥さんと徳永さんの対談について第2回目の編集を行う。徳永さんによると、江戸時代の津軽の農書『耕作囃』(1776年)に次のように書かれている。「寒三十日の刻積を三百六十日に配当して、翌年の風雨・晴雲・温涼・暖冷を考えれば、違うことなし。・・右古往の伝えを以て気候を考へ・・・」
・水稲冷害早期警戒システムの発展方向を、@被害診断技術、A情報提供内容の拡充、B知識ベース利用システム、Cモニター情報ネットワークの面から検討する。
・仙台管区気象台からお知らせ頂いた、平年値の更新と階級区分の変更に関する案内を図説に掲載するための原稿を作成する。
・岩手県石鳥谷賢治の会の会長板垣寛さんから、12月2日(土)に石鳥谷町立中央公民館で開かれる会結成5周年記念“宮沢賢治の米を試食する会”の実施要領と講師依頼が届く。講演テーマは「賢治が陸羽132号を奨めた時代背景−その今日的意味−」。荷は重いが、お断りできないのがつらい。ゆっくりと勉強してみたい。
【その他】
○11月22日(水)
【天気概況】
・冬型の気圧配置となり、日本海側を中心に天気がぐずつく。
【モニターネットワーク】
・岩手県種市町のモニターからモニター農家情報ネットワークについてメールが届く。
「里にも初雪が降り本格的な冬の到来となりました。(質問1):早期警戒システムのなかで、モニター情報ネットワークは「発育予測」「編集> 長日誌」「意見交換の広場」のコーナーにしか、表向き現れません。ご自身では、このネットワークをどのように感じ、またどのように利用されているのか。さらには、一般の閲覧者へどのような効果を及ぼしていると思われますか。(回答):ご質問のモニター情報ネットワークは早期警戒システムの中でも一番の根幹をなすものであるといえます。一番の特徴として各モニターと管理者との一対一の関係(対話)を機軸として、公開された事柄に対し意見又は質問等と話題を広げていける。ただ、このシステムだと管理者に多大な負担をかけてしまうが。掲示板形式にすれば管理者の負担は軽減できるが、収拾の効かなくなる事態も考えられるし、利用度が向上するとはあまり思われない。農家の方でもサーフィン中の人が『編集長日誌』を見つけて読むともなかなか思えない節も在るので、『モニターの技術的情報』とか『カリスマ農家の一言』でも新コーナーを設けて紹介するのも一つの手段かと思います。今年は家の中の都合も有りましてモニターどころかパソコンの立つ上げすら出来なかったのですが、ヤマセの最前線に住まいするものとして稲作農家に対しての、技術情報の提供、本H.Pの紹介に力点をおいてきました。また私を除き各モニターの皆さんは大規模稲作地帯に居られ、その発言等には強いエネルギーが感じられ、羨望と共に触発を受けています。(質問2)早期警戒システムは皆さんの経営にどのような良い効果を及ぼしているのか。 数量的に評価できれば、問題ないのですが、それが困難であるように思っています。 変な言い方になりますが、冷害が来たときに真に本システムの効果が実証されるのかもしれません。(回答)一言でいって『安心感を貰っている』に尽きますけれど。もう少し言い足りないところがあるような気がしますので、また考えてから続きを書きます。」
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(21日):太平洋中緯度地域の海面水温は平年よりかなり低い状態が続く。ペルー沖の赤道付近の海面水温には大きな変化はみられない。日本列島近海の海面水温は平年より高い状態が続く。
【研究活動】
・公開シンポ:“寒だめし”の白鳥さんと徳永さんの対談の第2回目編集を終える。
・早期警戒システムのモニターネットワークの意義を考える。モニターからのご意見がとても参考になる。研究当初考えた“モニター農家情報ネットワーク”は双方向性と対等性をベースに早期警戒システムの有効性を検証するために運営されてきた。しかし、今振り返ってみると、両者に広範な一般ユーザーが加わり、それぞれが対等の立場で、早期警戒システムを共同で運営してきている。いわば、“水稲冷害早期警戒システムネットワーク(あるモニターは”自然派ネットワーク“という)”となり、三者の情報収集に役立っているように思う。そして、その波及効果は、@情報の発生・利用における相乗効果、A行動様式における学習効果、B「信頼」という財の創出効果にみられるのではと考えるようになってきた。さて、今後の発展方向はというと、神田・小林両君と話し合ったが、なかなかイメージが浮かばない。今後、同ネットワークの拡張あるいは充実は可能だが、次の発展とは・・・・。ゆっくりと考えよう。とわいえ、目から鱗が落ちるような気持ちを味わうことができた。
・四国高松市の中学校社会科の先生からお礼のはがきが届く。
「四国・高松は肌寒く、雨が降り続きジメジメしています。でも体育の授業はまだ半袖体操服でしています。研究授業の『東北の農業(稲作について)』でモニターをご紹介頂きありがとうございます。また、授業の資料として水稲冷害研究チームの情報を活用させて頂きました。モニターの一方から、無農薬・無化学肥料の「ひとめぼれ」を送ってもらい恐縮しています。授業の終わりに、送って頂いた「ひとめぼれ」をおにぎりにして食べさせたところ、女子が“今までで、一番おいしいおにぎりや!”と発言し、アッという間になくなってしまいました。給食で食べているにもかかわらずですよ。モニターの方々は実直でまじめな人で、農業に疎い私の無知な質問に、実に丁寧に教えて下さいました。感謝の言葉もありません。生徒は、「稲作農業の厳しさ」はある程度理解したようですが、「稲作農業のたのしさ」までは到達できなかったようです。寒さが厳しくなります、お体に気をつけて頑張って下さい。」
【その他】
○11月23日(木)
【天気概況】
・移動性高気圧に覆われ、概ね良好な天気となる。
【モニターネットワーク】
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・ある出版社の農業高校教科書編集員会のため、東京に行き夜遅く帰る。検定制度のある教科書の作成の難しさ、農業高校の現状などがよく分かり勉強になった。
【その他】
○11月24日(金)
【天気概況】
・移動性高気圧に覆われ、天気は回復するが、寒気の影響で日本海側では天気がぐずつく。
【モニターネットワーク】
・宮城県石巻市のモニターから石鳥谷賢治の会の開催要領を教えて欲しいとのメールが届く。陸羽132号には興味があるので、できたら参加したいとのこと。
「水稲冷害対策監視システム紹介パンフレットが届きました。今夜、石巻・桃生・牡鹿管内の中堅農業者に参加いただき、”石巻オリザ倶楽部”の名称で石巻地域農業者情報交換会を設立します。今までの活動を通しての経験などを併せて、水稲冷害監視システムをご紹介します。詳しくは後日詳細を報告します。」
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・公開シンポ:“たろし滝”の板垣さんと古澤さんの対談の第2回目編集を行う。
・冷害気象監視技術(手法)の高度化について検討する。様々な気象現象のうち、時間的スケールで1週間以上、空間的なスケールで100km以上のもの、台風を除き低気圧とブロッキング高気圧の動きをどのような情報に基づいて監視するかがポイントと思う。
・昼休みの一時、恩師がよく引用する新渡戸稲造の『農業本論』(明治大正農政経済名著集7、農文協)を蔵書の中から引き出す。彼の略歴は次の通り。1862年(文久二年)9月1日、岩手県盛岡市鷹匠小路二六番戸にて出生。1872年(明治6年)東京外国語学校(大学予備門の全身)入学。1876年(明治9年、14歳)、6月12日、明治天皇東北巡幸の折り、青森県三本木の新渡戸家に立ち寄り、同開拓に献身した祖父、父を賞し、子孫を激励する。稲造はこれをきき、農学を志すようになった。1877年(明治10年、15歳)10月、札幌農学校入学、クラーク前校長の遺した「イエスを信ずる者の誓約」に署名。1878年(明治11年、16歳)6月、内村鑑三らとともにM.C.ハリス牧師により洗礼を受ける。1882年農商務省、1883年東京大学、1884年ジョンズ・ホプキンス大学、1889年ハレ大学で、統計、農政、農業経済学などを研究する。1891年(明治24年)札幌農学校教授。1898年(明治31年)『農業本論』『日本農業発達史』出版。1904年京都帝国大学教授。1909年(明治42年、47歳)東京帝国大学法科大学教授。1918年(大正7年)東京女子大学長。1920年(大正9年、58歳)国際連盟事務局次長。1926年(大正15年、64歳)貴族院議員。1933年(昭和8年)ビクトリア市の病院で10月16日逝去。
(驚くことに、宮沢賢治と同じ年に亡くなっている。両氏の略歴を比較すると、明治時代のエリートコースを歩んだもの、貧しい農村の生活を改善するため農民の指導に奔走して若くしてなくなったもの。非常に対照的であるように思う。両者にどのような交流があったのか、なかったのか・・・。これから熟読したいが、私の素養では読めないのではと心配しながら最後の頁を開くと、“これを要するに、農は万年を寿く亀の如く、商工は千歳を祝う鶴に類する。即ち一は一定地にありて、堅く且つ永く守り、一は広く且つ高く翔って、其の勢力を示すものなり。故に此両者は相俟って、始めて完全なる経済の発達を見るべく、しこうして後、理想的国家の降盛を来すべきなり。「春田うつ夏の苗とる朝より秋の夕をまもる田の神 神舞歌」”とある。)
・「田の神」の解釈に関して友人たちと議論を交わす。
【その他】
○11月25日(土)
【天気概況】
・高気圧に覆われ、概ね良好な天気となる。
【モニターネットワーク】
・宮城県亘理町の友人からメールが届く。
「Q1:早期警戒システムのなかで、モニター情報ネットワークは「発育予測」「編集長日誌」「意見交換の広場」のコーナーにしか、表向き現れません。ご自身では、このネットワークをどのように感じ、またどのように利用されているのか。さらには、一般の閲覧者へどのような効果を及ぼしていると思われますか。A1:モニターからの情報が反映される「発育予測」「編集長日誌」「意見交換の広場」の内容はいずれも興味を感じるものですが、自分の稲作に直接に関わるものに限定すれば「発育予測」の情報になります。特に、「発育予測」の情報の中でも自分と同じ地域にある標準田のデータと自分のデータを比較することは重要と感じております。すなわち、気温、日照、降雨に関しては同じ条件での比較になりますので、標準田と自分の田んぼの肥培管理の違いが読み取れるからです(土壌の違いはありますが)。「編集長日誌」および「意見交換の広場」については、この中でのやり取りは自分の稲作に関する知識の幅を広げてくれると同時に自分の考え方に客観性を与えてくれると感じています。「編集長日誌」および「意見交換の広場」は稲作に興味を持つ一般の閲覧者の方々に対して稲作全般にわたる啓蒙に大きく貢献しているのではないでしょうか。稲作に全く関わっていない方は主に「編集長日誌」および「意見交換の広場」を閲覧しているのではないかと想像します。
Q2:早期警戒システムは皆さんの経営にどのような良い効果を及ぼしているのか。数量的に評価できれば、問題ないのですが、それが困難であるように思っています。変な言い方になりますが、冷害が来たときに真に本システムの効果が実証されるのかもしれません。
A2:現時点では稲作全期間の天候を高精度で予測することは不可能ですので、水稲栽培者は冷害の来襲を考慮して下記の何れかのスタイルで稲作を行っているものと想像します。すなわち、種々の栽培管理技術を駆使して稲体を頑健に育てる「全天候型稲作」、稲作期間の天候を予め、良いあるいは悪いと決めつけて栽培する「バクチ型稲作」、および天候にはあまり関心を払わないで毎年決まりきった栽培をする「紋切り型稲作」です。現時点では、冷害に対処するために理想的なのは「全天候型稲作」ですが、栽培管理に要するコストを考えると問題があると考えます。以前にご紹介頂いたコスト/ロスモデルをその精度を高めて適用すればペイするか否かをある程度は定量的に判断できると思いますが、コスト低減が叫ばれている現状を考えますと、今後このようなきめの細かい稲作管理は困難になってくるのではないでしょうか。このようなことから、冷害に対処するには高精度の長期天候予測の確率が最も必要であると感じます。高精度の長期予測に基づいて必要最小限の栽培管理を行えば稲作コストの低減にもかなり寄与するものと確信します。何故ならば、冷害が起こる確率が高い年のみ対策を行えばよい訳ですから。さて、ご質問の趣旨からはかなり脱線してしまいましたが、本題に戻ります。早期警戒システムで閲覧できる短期予報(一ヶ月予報であてに出来るのは最初の一週間程度でしょうか)は発令後、数日から一週間程度の栽培管理には結構役に立ちます。但し、この場合の栽培管理を医療に例えれば、対症療法みたいなものに終始してしまう嫌いはありますが。また、早期警戒システムで公開されている諸々の情報には、栽培者の知識の裾野を豊かにしてくれる情報がたくさんあると感じています。これらの多彩な情報は栽培者が稲作上何らかの意思決定を行う際には有機的に結びついて非常に有益なものになるであろうと考えます。このように、本システムから得られる情報は主として稲作技術的なものが多いと考えますが、稲作技術と農家経営が不可分なものとすれば、本システムは農家の経営にもかなり貢献していることになるのではないでしょうか。」
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・盛岡高等農林学校(昭和11年)『東北地方古今凶饉誌』を読む。宮城県石巻市のモニターから以前に質問があった「有芒品種が冷害に強いのですか?」について、明治38年の冷害の実態をまとめた『宮城県凶荒誌』に次のような記載がある。“稲の種類と成熟期で区分すれば、概して早生・中生および有芒種において比較的良好な成熟であったが、晩生種および無芒種において不良の結果であった。すなわち、雷電、豊後などの無芒種および晩生種の愛国はほとんど結実しなかった。したがって、愛国などの晩生種を多く栽培することは凶作を一層激化するようである。”(一般論として言えるかどうかは疑問である。)
【その他】
○11月26日(日)
【天気概況】
・前線の影響で北部を中心に天気がぐずつく。
【モニターネットワーク】
・早期警戒の最初にお世話になった仙台管区気象台予報官が退職され、岩手県久慈市気象サービスをホームページで開設する。
「ご無沙汰しています。ご活躍のほどHPやTVなどで拝見しています。当方、10月からやっとHPを開設しました。(ワード98とocnのソフト使用)まだまだ恥ずかしくて人様にお見せするようなものではありません。これから充実していきますので、乞うご期待。今はフリーで地域の講演や農家に聞かれたら手元の資料で(JMHや自分の家の庭で観測した雨量や気温・それにインターネット等)個人的に気温予想等を提供したりしています。前置きが長くなりましたが、ホームページへのリンクをさせていただきたいと思いまして、お便りいたしました。希望は 「水稲冷害研究チーム」またはその中の「仙台管区気象台発表予報のページ」ですが可能でしょうか?ホームページアドレス: http://www4.ocn.ne.jp/~yk0830/」
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(25日):太平洋中緯度海域とオホーツク海の海面水温は平年よりかなり低く、その海域も広がる傾向がみられる。日本近海の海面水温は平年より高い状態が続く。ペルー沖の熱帯赤道付近の海面水温には大きな変化はみられない。
【研究活動】
・北海道大学の崎浦誠治教授の新渡戸稲造『農業本論』の解題を読む。構成は次のようになっている。@新渡戸稲造の生涯と『農業本論』、A農民の全人格的把握と貴農説、B現代への問いかけ−農業の位置づけ、密居制、婦人問題、過疎対策−。『農業本論』は明治31年(1898)新渡戸稲造が37歳の著作である。翌明治32年には療養先のアメリカ西海岸で“Bushido: the soul of Japan”(1900)を書いた。英文『武士道』は日本に対する世界の認識がまだ幼稚であった時代に、日本人の精神的な力がどこに由来するのか、何が日本人の道徳を支配してきたかを明らかにして、一躍著者の名とともに、国際的名声を博することになった。この英文『武士道』はイギリス、アメリカ両国民に広く愛読されたばかりでなく、ドイツ、ポーランド、ノルウエー、スペイン版が刊行されたほか、ロシア、イタリア、ボヘミアの各国語、さらにインドのマラティ語にも翻訳されている。
【その他】
○11月27日(月)
【天気概況】
・寒冷前線が通過し、天気がぐずつく。
【モニターネットワーク】
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・公開シンポ:“たろし滝”の板垣さんと古澤さんの対談の第2回目の編集を行う。
・福島県大柿ダム水系の水田水温と気温・日照時間との関係を整理する。
・岩手県石鳥谷町賢治の会会長板垣寛さんから電話があり、土曜日の講演会の件で打ち合わせを行う。陸羽132号の試食会なので反響が大きく、70名程度集まるとのこと。講演時間も1時間に延長するとのこと。
・冷害気象監視技術を高度化するために、現行の監視態勢を整理し、さらに可能な情報収集を検討する。
・新渡戸稲造『農業本論』の解題を再読する。解題者は新渡戸を次のように解釈している。“クラーク博士が残した感化のもとに、早くより洗礼を受け、生涯キリストに対する信仰を貫いた新渡戸博士の著作という観点からすれば、『農業本論』は宗教と農業との関係について、「宗教は農を重んず」の項を除いて、ほとんど論究していないことに奇異の感を抱いたとしても不思議ではない。しかし中心となっている第五章以降において、農民の品性を語り、農村の風俗人情を論じ、農業の貴重なるゆえんを説くとき、必ず著者の心の奥にあるものは、ほかならぬキリスト教的理想主義と愛と人格主義と倫理観とであった。農学の修得から出発して『農業本論』を書いた新渡戸博士が、後年あまりにも多彩な活動に終始し、一筋の道を歩まなかったことに対して、もし批判があったとすれば、博士はそれに対して、みずから愛唱したドイツのリュッケルトの言葉をもって次のように答えたことであろう。「人類活動の最終の目的は世界の開拓にあり、よしその開拓が心の開発であれ、また田畑を切り開くことであれ」・・すべては心の、社会の、そして世界の開拓であったのである。これをもっとも広い意味で教育とよぶならば、博士の生涯は教育で貫かれていたといえる。”
・秋田県大曲周辺でこの夏収集した航空機MSSデータの解析準備に入る。
【その他】
○11月28日(火)
【天気概況】
・冬型の気圧配置が強まり、日本海側を中心に雪や雨となる。
【モニターネットワーク】
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・大柿ダム水系の水田水温と気温・日照時間との関係をまとめる。
・秋田県大曲周辺でこの夏収集した航空機MSSデータの画像データを作成する。
・新渡戸稲造と宮澤賢治の足跡を整理する。
【その他】
・総アクセスが66,000件を超す。
○11月29日(水)
【天気概況】
・冬型の気圧配置はややゆるむ。
【モニターネットワーク】
・宮城県松山町のモニターからメールが届く。
「先日の質問にお答えいたします。水稲冷害警戒システムはその名の示す通り米所東北の地にあってこれまで幾度となく冷害に苛まされ、更に平成5年には未曾有の被害を被りました。こうした教訓を基に冷害に対する警報を始めその対策等の情報をいつでも引き出せ冷害に対し備え回避に役立てることにより農家の経営の安定ひいては国内の消費者への食糧としての米の安定供給に寄与するためのものと感じています。平成5年の大冷害以来温暖化とも相まってか、その後冷害らしきものはなく、むしろこの所猛暑が続き高温対策が叫ばれています。そして農家の意識も次第に冷害を当時ほどあまり想定しない取り組みがなされる様な傾向にあるように思われます。それは最近の作付品種構成にも反映されているようです。しかしこのシステムは冷害に対する警報はもとよりその対策方法、高温、病害虫等に加え、決まったメニュー以外の新たな問題にも誠意を持って対応してくれます。また各地モニターを始め、篤農家の実践事例を掲載しそれを拝見することであらうる方面で大変参考になります。従って、−冷害が来たときに真に本システムの効果が実証される−と言うこともありますが、むしろこのシステムを活用し冷害がいつ来ても対応できるようにいておくことによる存在意義は大きいと見るべきではないかと思います。私の利用の仕方ですが時間の制約もあって気象と編集長日誌が中心です。気象についてはこれまでテレビやラジオ見聞きしていましたが、今ではいつでも見られホームページの予報を見ています。特に日々刻々と変わる台風情報はビニールハウスの補強等災害の備えにおいて大変役立っています。また編集長日誌の中での各地のモニターの問いかけについては、地域の違いはあっても基本的な部分では共通しているので大いに参考になります。更に確率予報でのコストロスモデルは各地域ごとのデータを基に生み出され効率よい作業計画をたてるのにも参考になります。確率統計数字が極めて精度が高いのには驚かされます。一般の農家の閲覧者は我々モニターと同様毎日ホットな情報を見ることができますので、自分の経営の参考にまた実践的に取り入れたりしているものと拝察しますが、反応がないのが残念です。一般の消費者の閲覧者はこのホームページを見ることにより農業の実態をいくらかでも知ることが出来、四国高松の中学校の先生の様に多くの生徒達に授業と言うかたちで教え広まっていき、多くの方々が農業と食糧に対する知識と理解を深めることが出来れば幸いだと思います。−早期警戒システムはみなさんの経営にどのような良い効果をおとぼしているのか−、ですがこのシステムはもちろんですがこれを機会にパソコンでの事務処理、インターネット上での各種調査で仕事がより早くなり素早い対応が出来るようになりました。−数量的な評価−ですが、確たるものはまだ先になると思いますし、ましてや今現在のことを数量化するのはたいへんですが、こと経営である以上は全て数値に置き換えるようにしなければならないと思っています。」
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(28日):太平洋中緯度海域の海面水温は平年よりかなり低き状態が続く。日本近海の海面水温は平年より高い状態が続く。熱帯赤道海域の海面水温には大きな変化はみられない。
【研究活動】
・奥田 穣(1957)『日本の冷害−凶冷の実態と対策−』東洋経済新報社を読む。読みやすくて、明治・大正時代の気象学、農学の研究成果などの動きがよく分かる。
・宮澤賢治の『グスコンブドリの伝記』を読む。冷害を予知し、回避するための賢治の夢が描かれている。
・明治・大正・昭和初期の気象事業を整理する。冷害の成因であるオホーツク海高気圧が注目されるに至ったのは次の2人の研究者による。
「○明治38年:前田直吉『本年の気候と東北地方の凶作』。同年の大冷害の経過を低気圧経路から解析、千島方面に居座る高気圧による北東風の影響を説いた。この高気圧凶冷説は岩手県農事試験場明治38年凶冷に関する調査報査(39年)に独立的に主張。○明治43年:岡田武松『On the Baiu or Rainy Season in Japan』。梅雨期北日本に見られる低温は北海道から三陸東方に張り出すオホーツク海高気圧の影響とする説を発表。」
【その他】
○11月30日(木) 積雪3センチ
【天気概況】
・低気圧の影響で天気はぐずつく。盛岡は積雪3センチ。
【モニターネットワーク】
【早期警戒活動】
・NOAA海面水温平年偏差図(日):
【研究活動】
・宮澤賢治の『グスコンブドリの伝記』を読む。各章に描かれている主人公ブドリの物語を賢治の心像に映し替える。賢治の農学徒としての足跡と賢治の冷害・干ばつを克服したいという夢が如実に描かれていると思う。
・夜は本年最後の収穫感謝祭。新そばを味わう。
【その他】
torigoe@tnaes.affrc.go.jp