東北農業試験場
水稲冷害研究チーム通信
No.20
1997年3月5日
平成8年度作柄の特徴
目次
- はじめに
- 冷害危険度地帯区分別にみた作柄の推移
- 平成8年産水稲作柄の分析
- おわりに
3.平成8年産水稲作柄の分析
1) 気象経過の特徴

本年度の気象の特徴をみるために、太平洋側と日本海側の代表的な地点の気象経過図を図5に示す。これは気温と日照時間の平年値と本年の値を前7日間の移動平均で図示したものである。
監視していて注目されたのは次の4点である。
・4月に入って寒気が南下し、4月中旬初めには日本海側で積雪を記録。また記録的な低温で雪解けが遅れた。5月上中旬に寒気が再度南下し、異常な低温となり、田植えの早い地帯では植え傷みが発生した。
・梅雨前線は前半中心に活発で、日照時間は少なく、北部で多雨となった。東北北部の梅雨明けは遅れ、8月上旬後半となった。6月中旬から7月上旬に低温・日照不足となり、穂数確保が心配された。
・盛夏期(8月)は低温傾向で、記録的な少雨となった。夏(6〜8月)の気温は平年差-0.3度で平年並みであった(-0.4度以上ならば冷夏に分類される。)。8月上旬に一時的な低温となり、冷害危険度の高い地帯では危険期に相当するため障害不稔の発生が心配された。
・8月下旬から9月中旬に低温・日照不足となり、登熟不良が心配された。9月中旬に台風17号の影響で、福島県浜通りを中心に大雨となった。10月は太平洋側を中心に記録的な少雨となった。
2) 市町村別ならびに冷害危険度地帯別収量

平成8年度収量分布を図6、また冷害危険度地帯別平均収量を表4に示す。
収量が600kgを超えたところは青森県津軽地域と日本海側安定多収地帯、550〜600kgのところは日本海側と太平洋側では盛岡市周辺に分布した。一方450kg以下のところは青森県・岩手県・宮城県の沿岸部を中心に広がる。太平洋側と日本海側中山間地帯は450〜550kgであった。危険度地帯別平均収量をみると、地帯2と5は600kgを超え、ついで地帯3は571kg、太平洋側の地帯1、4、7が500kg台、地帯6と8が400kg台となった。
このように、本年度の作柄は冷害危険度地帯の特徴を反映する結果となった。
表4 冷害危険度地帯別収量
| 危険度地帯区分 | 収量(kg/10a) |
| 1 | 501 |
| 2 | 623 |
| 3 | 571 |
| 4 | 545 |
| 5 | 614 |
| 6 | 433 |
| 7 | 546 |
| 8 | 446 |
3)東北農政局統計情報部(12月20日発表)による作柄分析
同資料から冷害危険度地帯別に作柄の特徴を抜粋すると次の通りである。
地帯1:
・田植期に低温・寡照に経過したことから活着がやや悪く、初期生育が遅れた。7月中・下旬は気温が高めで、草丈の伸長と節間伸長は促進された。粒の肥大・充実は8月下旬から9月中旬前半まで低温で経過したが、9月中旬後半から一転して良好な天候が続き、粒重の増加が促進された。(岩手県北上川下流)
・田植期の5月上中旬が低温と重なり、活着はやや不良であった。6月中旬から7月上旬前半まで気温は平年並みに経過したが、日照時間と気温日格差がともに平年より少なく、分げつの発生は抑制された。8月上旬の低温の影響による不稔障害の発生等により稔実は平年を下回った。8月下旬から9月中旬までは気温の低い日が続き、登熟不良が懸念されたが、9月下旬以降は気温も回復し、気温日格差もありまたいもち病の発生も少なく、登熟はやや良かった。(福島県浜通り)
地帯2:
・活着は、低温時に田植えした圃場で一部代枯れが発生したものの、平年並みであった。6月が低温・日照不足の傾向で、生育は停滞した。7月中旬以降気温は高めであったが、草丈はやや短く、茎数はやや少なかった。稔実はやや良かった。粒の肥大は、8月下旬から9月中旬前半までの低温傾向による影響で緩慢となったが、その後気温はやや高め、日照時間と気温日格差は平年を上回ったため、徐々に進みやや良であった。(青森県津軽)
地帯3:
・田植期の早いところでは、低温・日照不足により活着が遅れ、一部では代枯れ等の障害も発生した。6月中旬の梅雨入り後は低温・日照不足に加えて気温日格差が小さかったことから分げつの発生が抑制された。有効穂数は平年より少なく、1穂籾数は平年並みであった。出穂後は日照と気温日較差があり、茎葉の枯れ上がりが遅く稲体の活力が維持されたことから、後期登熟が良好となった。粒の肥大は平年並み、粒の充実はやや良となった。(秋田県)
地帯4:
・活着は平年並み。6月が低温・日照不足の傾向で、生育は停滞した。7月中旬以降気温は高めであったが、草丈はやや短く、茎数はやや少なかった。稔実はやや良かった。粒の肥大は、8月下旬から9月中旬前半までの低温傾向による影響で緩慢となったが、その後気温はやや高め、日照時間と気温日格差は平年を上回ったため、徐々に進みやや良であった。(青森県南部)
地帯5:
・活着・初期生育は平年並みないしやや良。6月中旬の梅雨入り後7月中旬まで日照時間が少なく、分げつが抑制された。有効穂数と籾数は平年に比べやや少なかった。刈り取りまでの気温は平年並みないしやや低かったが気温日較差が大きく、日照時間が総じてやや多く、稲体は健全で活力が維持され稔実が良好となった。(山形県村山・置賜)
・活着はやや良。6月中旬から7月上旬前半までは日照時間と気温日較差が少なく、分げつの発生は抑制された。7月中下旬は高温・多照で生育はかなり進んだ。有効穂数はやや少なく、1穂籾数はやや下回り、全籾数はかなり少なくなった。粒重は平年をかなり上回り、登熟は良好であった。(福島県会津)
地帯6:
・岩手県下閉伊において8月上旬の低温の影響で不稔籾の発生が多かった。6月が低温・日照不足の傾向で、生育は停滞した。7月中旬以降気温は高めであったが、草丈はやや短く、茎数はやや少なかった。有効穂数は平年並み、1穂籾数はやや少なく、全籾数はやや少なかった。稔実はやや良かった。(岩手県下閉伊)
地帯7:
・田植期に低温・寡照に経過したことから活着がやや悪く、初期生育が遅れた。7月中・下旬は気温が高めで、草丈の伸長と節間伸長は促進された。粒の肥大・充実は8月下旬から9月中旬前半まで低温で経過したが、9月中旬後半から一転して良好な天候が続き、粒重の増加が促進された。(岩手県北上川下流)
・田植期の5月上中旬が低温に経過したことから、活着はやや不良となった。6月中旬から7月上旬前半までは日照時間と気温日較差が少なく、分げつの発生は抑制された。有効穂数は平年並み、1穂籾数はやや下回ったことから、全籾数はやや少なくなった。粒重は平年を上回り、登熟は良好であった。
地帯8:
・8月上旬の低温の影響で不稔籾、出穂遅れに伴う登熟不良の被害が発生した。(岩手県北部)
・稔実は登熟の遅れやいもち病が発生しやや悪かった。(青森県下北)
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